第2話 オンラインゲームの醍醐味

 ただいま、ただいまっと。

 帰宅した刹那は、階段を登り部屋に入るとPCの電源を入れる。

 立ち上がると、ホームにしている検索サイトを開き、履歴から異界領域オンラインの攻略サイトをクリックした。


 異界領域オンラインに、クラスと称される、決まった職業はない。

 レベルアップ毎に得られる、3ポイントのパラメーターの振り分けにより、近接特化なのか、遠距離特化なのか、方向性が決まっていくようだ。


 パラメーターの項目を見ると、赤字で注意書きを見つけた。


 ※パラメーターの速さは、ほとんど攻撃速度に影響を与えていない。

 現在、死にパラメーターとなっている。


 どうやら過去に、チート級の攻撃速度が蔓延したため、下方修正が入ったみたいだ。

 しばらくサイトを眺めていると、友加里が帰ってきた。


「ただいまー。お兄ちゃんいるー?」

「部屋にいるよー!」

「お母さんとお父さん、遅くなるから、お弁当買ってきたよー!」

「今から降りるー!」


 リビングに降りると、友加里はニュース番組を見ていた。

 毎週、16時30分に始まる、明日の占いを確認するためだ。


「明日のラッキーアイテムは“玉子焼き”です。プリンス・シキの今日の占いでした!」


 玉子焼きはアイテムじゃないだろ。刹那は首を傾げた。


「好きだよな、占い」

「結構、当たるんだよ? この人の占い」


 プリンス・シキ。

 音声収録のため、どんな人物かは不明だ。


「飯、食べ終わったら風呂に入っていいか?」

「うん。いいけど、珍しいね」


 いつもなら、最後に入る刹那だが、なるべく異界領域オンラインを長く遊ぶためだ――



 部屋に戻ると、スマートホンの小さなランプが点滅している。

 確認すると、龍生から着信があった。履歴から龍生にかけ直す。


「もしもし?」

「あ、刹那か? もうインしてるから、始めたら教えてくれ」

「わかった。また、後でな」


 異界領域オンラインのショートカットをダブルクリックして開き、ゲームスタートを選ぶ。

 アルファサーバー、キャラ選択と続ける。

 僅かなローディングを経て、ゲームの世界が広がった。


 セツナに駆け寄るキャラがいる。

 頭上には、リュウセイと記されていた。

 さっそく、個人チャットにメッセージが入った。文字はピンク色だ。


<こんばんは。セツナ>

<こんばんは。よく見つけられたな。

<どんなパラメーターにしたんだ? 見ていいか?>

<どうぞ>


 キャラにカーソルを合わせ、右クリックすると項目が並ぶ。

 その中のキャラ情報を選択すると、ステータスやパラメーターが観覧できる。


<セツナ、逆張りしただろ?>

<バレたか>

<露骨過ぎだ>

<でも、速さに振ったのはヤバイかも。死にパラなんだろ?>

<どうだろうな? バランス調整が入れば、化ける可能性はある>

<なるほどな>

<俺のパラも、速さは多めに残してる。見ていいぜ>


 リュウセイのステータスを確認する。


 名前……<リュウセイ>

 性別……<男>

 属性……<火>

 LV……30

 HP……<174>

 MP……<80>

 体力……<22+1>

 霊力……<28+2>

 腕力……<19+1>

 知力……<33+2>

 速さ……<22+1>

 秘力……<26+1>


 基本パラメーター8ポイントに、初期ボーナス15ポイント。

 レベルアップ毎に3ポイント入るから、×30で87ポイントか。

 何に振ったか確認できると、それ以降は合計値が表示されるんだな。


<リュウセイ、合計値+1ってなんだ?>

<武具補正値と守護補正値。2ページ目に表示されてる>


 パラメーターの下の欄に、1と2の表示を見つける。

 セツナは2をクリックすると、新たな情報が現れた。


 武器……魔鋼の剣<攻撃力100・霊力・知力+1>

 防具……銀糸のローブ<防御力50>

 攻撃……120

 防御……73

 剣技……火炎剣<威力20・火属性与ダメ5%アップ>

 霊撃……棘炎<威力15>

 精霊……イフリート<火属性の与ダメ2%アップ>

 守護……大天使ラファエル<全パラメーター+1・火属性の与ダメ10%アップ>


<セツナはまだ、守護のところが空欄になってるだろ?>

<なってる>

<メインシナリオを進めると、守護に変わるからな>

<わかった。ちなみにラファエルって敵じゃないのか?>

<書物じゃ、人間になって旅をしたりしてるから、人類側に設定したんじゃないかな>

<そっか>

<じゃあ、フレ登録よろしく>


 電子音と共に、画面中央に小窓が開く。


<リュウセイさんから、フレンド申請が届きました。承認しますか?>


 承認するをクリックすると、チャット欄の文字が水色に変わった。


<とりあえず、メインシナリオを進めると、レベル5ぐらいまでの経験値が入るから進めてみろよ>

<わかった。その間、リュウセイはどうするんだ?>

<デイリーを消化しとく>


 手を振るロビーアクションをして、リュウセイはどこかに消えた。

 セツナはメインシナリオを示す、赤色で表示された吹き出しアイコンを目指した――



<メインシナリオを開始しますか?>


 はい。いいえ。の選択肢が出ると、迷わず『はい』をクリックする。

 すると、小窓に自室というメッセージが開き、ゲーム内の部屋に飛ばされた。

 ベッドにテレビ、机とソファーが設置されている。

 机の上にはPCが置かれてあり、本をめくるアニメーションをしたアイコンが表示されていた。


<君が選ばれた人間ですね。私は大天使ラファエル>

<人類が伝承の存在に打ち勝つためには、己を鍛え、対抗しうる力を身に付けなければなりません>

<私は試練を与えるために降り立ちました>


 時系列的には、まだ天の戦いに巻き込まれて無いんだな。


<セツナ。貴方には装備がありません。まずは、クスノキ神具店に行き、武器と防具を手に入れてください>

<貴方の額にある『羊の刻印』を見せると、力を貸してくれるでしょう>


 ラファエルからのメッセージが消えると、小窓が開きインフォメーションが表示される。


<目的地を自動表示しました。この設定はオプションにより、変更可能です>


 慣れてきたらOFFっとこう。

 セツナは神具店でのイベントを熟し、武器と防具、経験値を手に入れ、レベル5になった。


 早速、12ポイントをパラメーターに振り分け、装備も整える。


 名前……<セツナ>

 性別……<男>

 属性……<風>

 LV……5

 HP……<152>

 MP……<50>

 体力……<10+2>

 霊力……<10>

 腕力……<10+2>

 知力……<10+1>

 速さ……<14+5>

 秘力……<8+2>


 武器……清められた木刀<攻撃力8>

 防具……交通安全のお守り<防御力3>

 攻撃……20

 防御……15

 剣技……斬閃<威力10>

 霊撃……無し

 精霊……風の精霊イフリーナ<風属性の与ダメ2%アップ>

 守護……無し

 剣技に斬閃が付いてるな。

 斬閃の位置にポインターを合わせると、説明欄が表示された。


<三連撃後、溜め攻撃をすると斬撃を飛ばせる>


 多分、連撃後の溜め攻撃には隙が出来るんだろうなぁ。

 再度、ラファエルからのクエストを受けようと歩き出した時、画面上部にメッセージが流れた。


<こちらラファエル。忠誠天使襲来……大天使バラキエルが現れました>

<選ばれし者達よ、大天使バラキエルを退け、オーサカを守護してください>


 緊急クエストみたいなもんか。

 しばらくして、チャット欄にリュウセイからメッセージが来る。


<セツナ。緊急クエ、行ってくる>

<俺は参加できないよな?>

<推奨レベルに達してないと参加できないんだ>

<わかった。今日は切りの良いとこで落ちる>

<悪いな、また学校で>


 その後、セツナはメインシナリオを2つ進め、いわゆるお使いクエを済ました。

 そこで得た経験値でレベル8になり、パラメーターを振り終わると、ログアウトした。

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