決戦!アダムス(後)

「ほう、ここまで来るとは中々やるな」

「あ、あれがアダムス……」

「人間ではないのか……」

 たまさんとだーいしが驚愕の表情を見せる。

 メタリックで未来的な円盤状の椅子に腰かけた小柄で顔色の悪いゴブリン、それがアダムスの姿だった。

 その人ならざる佇まいにひっち過激団は委縮しそうになるが、簡単に根負けするようなことはなかった。


「みんな見てみろ、やっぱり不細工じゃないか! おれは声を聴いた時からそんな気がしたんだよ」

「そいつは間違いないな。モンスター野郎、覚悟しやがれ!」

 ひっちとかずやんがアダムスを挑発する。

「フフフ、何とでも言え」

 対するアダムスは余裕の表情を見せている。


「もっと文句言ってやろうぜ!」

「たまさんも何か言えよ!」

「僕? わ、分かったよ」

 ひっちとかずやんに誘われて、たまさんもアダムスに文句を言うことになった。

「中間管理職みたいな顔しやがって!」

「違う! 俺は支配者だ! 中間管理職などではない!」

 たまさんの文句がアダムスの琴線に触れたのか、アダムスは怒りの表情を見せ始めた。

「やった、たまさん効いてるぞ!」

「そ、そうなんだ」

 かずやんに声をかけられるも今一つ達成感が得られないまま、たまさんは成果を上げてしまった。

 本人はあくまで適当に言ったつもりなのだろう。


「この支配者たる俺を怒らせるとはいい度胸だ。行け!」

 アダムスが突然魔方陣を展開し、スケルトンの群れを召喚し始めた。

 外見に反して召喚術を心得ているところから、簡単に倒せる相手ではないことが伺える。

「かような術を使ってくるとは……、だがやられはせん!」

「こんなんで負けるもんかよ!」

 だーいしとひっちは張り切っている。

 気合は十分のようだ。


 向かって来るスケルトンの群れに対して、ひっち過激団は迎撃態勢を取った。

「紫電一閃!」

「デス・スラッシュ!」

「スパイラルショット!」

 スケルトンの群れを各必殺攻撃でまとめて葬っていった。

 アダムスが出したスケルトンはもはや跡形もなくなっていた。


「フフフ。ならば、次はこれだ!」

 アダムスは更に魔方陣から大型のドラゴンを召喚してきた。

 凶悪そうな外見をしているのだが、緑の巨体はある種の美しさをも感じさせる。

 ここまでの戦闘でひっち過激団は中々に消耗している、連戦はキツい。

「ったく、次から次へと」

「むむむ、ほっかいどーはでっかいどー」

「言ってる場合か!」

 ひっちのおとぼけ発言に大声でかずやんがツッコミを入れる。


 ドラゴンが急に羽ばたきはじめ、ひっち過激団へ向かって滑空してきた。

「「「「うあああああっ!」」」」

 ドラゴンから発せられる風圧に耐え切れず、ひっち過激団は吹き飛ばされてしまう。

 ひっち過激団はそのまま地面に叩きつけられてしまった。

「ううっ、みんな大丈夫か?」

「ってえ、何とかな」

「……まだ戦える」

「脇腹打っちゃったけどね」

 ひっちの呼びかけにかずやん、だーいし、たまさんが応える。

 ひっち過激団はまだ戦える。


「さあ、このまま奴らを蹴散らしてしまえ!」

 アダムスがドラゴンに指令を出し、ひっち過激団に向かわせる。

 ドラゴンが口から大量の炎を吐き出し、周辺を焼き焦がす。

「ううあっちょい!」

「くそう、このままじゃ丸焼きにされちまうぜ!」

 ひっちとかずやんが炎にもだえ苦しみ、転がりながら逃げていた。

「うわあああっ」

「く、苦しい」

 たまさんとだーいしもドラゴンの炎に苦しめられていた。

「まるで効いていない……」

「何とかして反撃の機会を作らなくては」

 たまさんがセイントガンでドラゴンに応戦するも歯が立たない。

 そして隣でだーいしが反撃のスキをうかがっている。


「ひっち、ひっち砲は撃てないのか?」

「任せんしゃい!」

 かずやんの願いに反応するかのように、ひっちがセイントキャノンを構える。

「ひっち砲発射! ブキューーーーン!」

 ひっち砲が凄まじい勢いで放たれ、光芒に飲み込まれたドラゴンが消滅してしまった。

 だが、まだアダムスが無傷でひっち過激団の前に立ちはだかる。


「ほほう、想像以上だな。だが、これでどうだ!」

 アダムスが椅子からレーザーを乱射し始めた。

 細かな光の粒子が雨あられのごとくひっち過激団に襲い掛かる。

 もはやひっち過激団が着ている服は穴だらけで、穴からは傷口が見えている。

「どうしたどうした! 今度はこれでもくらえ!」

 さらにアダムスが椅子を横回転させながらひっち過激団に体当たりを仕掛けてきた。

「「「「うわあああっ!」」」」

 ひっち過激団は皆アダムスの体当たりをまともにくらってしまった。

 ボロボロの体を引きずりながら、何とかして立ち上がろうとする。


「フハハハハハ、お前たちのような底辺は這いつくばって支配者の言うことを聞いていればいいんだよ!」

 アダムスが勝ち誇った表情でボロボロのひっち過激団を煽る。

「何も誇るものがないお前たちは、俺たちにこき使われればいいのさ! さあ働け、もっと働け!」

 アダムスが椅子にふんぞり返り、更にひっち過激団をこき下ろす。

 勝利を確信しているのだろう。


「誇るものが無くたって、死にはしない! それに……」

 ひっちが歯を食いしばりながら叫ぶ。

「人はみな、誰もが心の中に秘めているものがある!」

「何だ何だ?」

 ひっちの強い気持ちがこもった言葉にかずやんが興味を示す。

「お前にだけは言われたくないよって気持ちだあああっ!」

「「「そーだそーだー!」」」

 アダムスへの怒りが頂点に達し、ひっち過激団の心が一つになる。

 そしてひっちが一瞬のスキをついてアダムスに体当たりし、肉薄する。


「ぬうううっ」

「ひっち砲発射、ドキューーーーン!」

 ひっちがセイントキャノンの銃口ををアダムスの体に向け、ひっち砲を零距離射撃する。

「ぶわああああっ!」

 すさまじい光芒に飲まれたアダムスは断末魔を上げ、跡形もなく消え去ってしまった。

「やった、のか?」

「アダムスを倒したんだ、すごいやひっち!」

 呆然と立ちつくすひっちにたまさんが大喜びで声をかける。

「やるなひっち、流石にびっくりしたぜ!」

「これは文句なしだ」

 かずやんとだーいしもひっちの活躍を称賛している。


「皆さん、アダムスを無事討伐したようですね」

「クリスたそ、おれたちやったよ!」

「ありがとうございます。すぐに転送しますね」

 ひっちがとびきり嬉しそうな声でクリスとやり取りしていた。

 クリスの転送でひっち過激団は元の世界に戻り始めた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る