第3話 ゲートの開放が迫る

 見落としていたものがないか頭を巡らす。確実にゲートは開くはずなのにそんな気配は感じられない。グラウンドに集合してから10分が経過していた。先生たちも生徒の確認ができたことを良しに学校から出るように促す。きっとこれでよかったのだろうか。


 不安が積もるばかりだった。僕が火を放った理科化学室に炎は上下に大きく燃え盛っていた。消防も到着しており炎を差し止めようと水を放つ。強い勢いで発射される水は炎を少しずつ消していた。


「…………きょ…行こうぜ。」


僕の後ろで話していたのは高崎だった。彼は、5人の仲の良い仲間と一緒にどこかに行こうとしていた。


「おい!るいもくるか??」

「どこに。?」

「決まってんだろ!?学校の中にだよ」


 高崎の思いもよらない発言に驚きを越して呆れを感じる。これほどの燃え盛った炎の中にどうして学校に戻りたいと考えるのだろうか。


「だめだ!流石に危ないだろ!」

「るいーマジそれは面白くないって!なっ、高崎!」


他の悪ノリする仲間たちは、どうも高崎の意見に賛成のようだった。僕が否定したことが面白くないのだろうか少し不機嫌になる。


「まぁー、別にるいがいきたくないなら来なくてもええよー!俺らだけでちょと教室行ってくるわ!」

「まて!どうして教室に行きたいんだよ。」


危険があるのにそんなのに近づきたくなる理由がわからなかった。理解に乏しい。そんな質問に、不服そうな表情で逆に質問を投げかける。


「そりゃ、魔物が中にいるんだろ。なんで、面白そうなのに近づかないの?」

「なんだそれ??どういうこと?」


何故それを知っているのだろうか?


「なんか、正人が誰かが電話で魔物が出たって連絡してたらしいから。」


気を付けようと思っていたが焦っていたこともあるのだろうか聞かれているとは思ってもいなかった。


「それなら、学校に戻るのはもっとダメだろ。」

「何言ってんの?るいは、感じないのこのときめきを?死を直感で着る機会なんてないんだぜ!?」


今まで、彼に対して中の良い友達で親友だと感じていた。だけど、彼の意外な一面に僕は少し危うさを感じた。たまに、感じた違和感をここで再認識した。きっと彼は僕が止めても勝手に言ってしまう。しかし、彼は僕の唯一といっていいほどの親友なのだからここで僕が逃げるわけにはいかない。


「僕もいくよ。」


その言葉で彼は嬉しそうに僕に抱き着く。


「やっぱり、瑠偉はわかってんじゃん!」


 僕の手を引き仲間と共に学校内と入ろうとする。先生はの目をどうにかしてこちらに引けないかと考えてみるが先生の意識は他の生徒に行っておりこちらに気づく様子は全くといっていいほど感じられない。


 空からヘリの音とともに黒い服に包まれた人間が空から降りていることに気づく。彼らは、「異能者」として軍に所属する人たちだ。腕にはそれを象徴するシンボルである盾と剣と銃が交差するバッチがつけられていた。すぐに、彼らは先生のところに近づき魔物がどこにいるのかを聞いていることが分かった。


そんな質問に先生は、戸惑いを隠せていない様子で話がかみ合っていない様子だった。その様子に注目を浴びている間に僕らは、学校内に入ることとなる。


煙の臭いはしているが、かまわずに僕らのクラスである3階へ向かって廊下を進んでいく。僕は、廊下の途中にあったさす股を手に取り階段を進んでいく。理科化学室は、反対の棟にあり炎からも距離はあるしかし、彼らは理科化学室に近づきたいと話を進めている。


 それはダメだと否定をしたが聞く耳を持たない。何かあったら不安のがあるからといい武器を教室から探すという話になってしまった。


「僕らのクラスは辞めておこう。」

「なんだよ。瑠偉君は怖がってるのかな?さす股なんてもってさ。」

「「はははは。」」


 周りは、僕が恐れているとをいじり笑っていた。


「教室だけはだめだ!!!」

「はいはい、行くか。」


高崎は、僕の意見なんてお構いもなく前に進んでいく。階段を一段二段前に足を出す。ついに、3の2のクラス付近まで近づいた。僕も警戒を解かない。今の様子では、ゲートは開かれていない。


「さあ~、俺は野球部のバットでももっていこうかな。」

「ああ、それ俺が持っていこうと思ってたのに。」

「いや、それどっちもお前らの物じゃないから!俺のだから!」


 楽しそうに、彼らは人のバックを物色していた。高崎はその光景をつまらなそうに眺めている。しかし、その瞬間聞きなじみのあるガラスの割れる音がした。ゲートが開いた。暗闇にの空間から現れたのは、小柄で細身の体型をした緑色の怪物だった。

 

 薄汚れた布をまとい口からは、歯がむき出しになっていた。彼らは、手に刃物を所持しておりゲートの出現とともに唸り声をあげた。間近にいた僕たちはあまりのうるささに耳をふさいだ。


「おおおおおおいいい、、ううう、そだ、、、ろ。」


 冷や汗を流す。背筋が凍る感覚を覚える。あの時感じた恐怖よりは少なく感じた。ミノタウロスの時よりも恐怖は、薄かったのだった。


しかし、教室にいた5人が固まっていた。


「皆!!!!!!逃げて!!!!」


僕の大声とともに彼らは、教室から走りだした。みんなの顔は一人を除いて強張っていた。二人は、僕らと反対の方向へ走り出す。


「どいうことだよ!!これ!!」


 ゴブリンたちは、僕達が逃げることに気づきすべてのゴブリンが僕らを追いかける。ゴブリンたちも別れた方向へ分散するように追いかける。素早い動きに追いつかれそうになる。しかし、その動きにものともせず高崎は切りかかるゴブリンに蹴りを一発お見舞いした。蹴りは、軽々とゴブリンを三階の窓へ弾き飛ばした。


「なんだこれ!!めちゃ、ドキドキだな!!るい!そう思うだろ。」

「何考えてんだよ!?お前、死にたいのか!?」


すぐさま走り出す。身体能力の化け物感を強くここでも発揮している。

 まさかゴブリンに蹴りを入れるとは思わず思いもよらないほどの大声が出てしまった。皆階段を下りていく。しかし、ゴブリンたちは階段の三階から二階にとびかかる。ゴブリンのとびかかった標的は一番後ろを走っていた正人だった。ゴブリンの刃物が正人の右手首を切り落とした。


「ああああああああ。うううああああ」


それに見向きもしないで一人は、走っていく。高崎は、正人の切られていない手首を握り走らせる。


「正人、死ぬより絶対生きた方がいいだろ!!走れ!」


6匹ほどのゴブリンが僕らを追いかけていたが正人に獲物を決めたかのように一斉に襲い始めた。この時僕は、次の未来を見た。1階に下りる階段を下れば、待ち伏せしていたかのようにこいつらとは違うゴブリンが現れるということに。


「高崎!!!一階に下りるな!!東棟に行くぞ!」

「了解!」


痛みに悶えている正人を背に抱え高崎は、二階から東棟にに向かって廊下を走り抜ける。ゴブリンもそのあとを追いかける。しかし、狭い廊下のおかげでゴブリンの動きが少し鈍くなっていることに気づく。廊下に置かれた机を見つけ走ってくるゴブリンに向けて机を倒す。


前にいたゴブリンは簡単に反応し、軽々とよけていたが後ろにいたゴブリンに関したは、思いっきりコケていた。その出来事に逆上したように大きな唸り声を全体で上げ始める。


「「「「「「ウオオオオオオオーーーーー」」」」」


「おいおい!めちゃ怒ってるじゃん。」

「やらかしたかも。。。。」


廊下を走り抜ける。その時前方には赤い帽子を付けたゴブリンがいた。あれに近づけば切り裂かれる。僕の頭の中で無数の映像が流れる。きっとこれは、高崎の未来だし瞬時に気づくことができた。


「高崎!!!!!あのゴブリンにだけは近づくな!!」

「おいおい、じゃどうすんだよ」


今まで持っていたさす股を廊下にいたゴブリンに向けて走り出す。僕も想像できない行動をとったと少し後悔をした。


「るい。まじかよ。おもしろいな!!」


僕の後ろをついてくる高崎。さす股はゴブリンの体を押しやる。押しやることのできたのは、三匹。残りの三匹は僕ら狙ってとびかかる。そんな三匹を簡単に蹴りで壁に弾き飛ばす。どっちがバケモンだか分らんな。


「高崎。僕のこと信じてくれるよな!?」

「おう!」

「ここから飛ぼう。」

「は??」


 さす股で殴りゴブリンにダメージを入れた後僕は、二階の窓から外へ飛び出した。

 

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