世界を救う一筋の光
レヴィアタンとも呼ばれる海の怪物がいた。旧約聖書にも登場する原初の海の怪物にして、大海を支配する魔物。国が滅びようが陸が沈もうが関係ない。それで獲物が海に沈んでくればその分だけ腹が満たされるのだ。彼にとっては全ての海が、すべての陸が食料だった。
百年を繰り返す中で、これまでとは違う異変が生じていた。
「リヴァイアサン、お前を討伐するっ」
聖剣を携えた勇者が立ちふさがっていた。
非力な人間相手に、何ができるのかと舐めてかかったリヴァイアサン。
一刀のもと、彼は首を綺麗に切断されていた。
ベヘモトとも呼ばれる陸の怪物がいた。規格外の巨大な身体を持ち、山にも匹敵するその身体。すべての地表を踏みつぶす地均しとして、すべてを平らに成す恐ろしい怪物として恐れられていた。目を覚まし、火山口から顔を出す姿はまさに魔神だった。
緑を食いつぶしながら突き進み、世界が終わりを迎えるころ。
「ベヒモス、貴様を殺してやる」
聖槍を携えた勇者が現れたのだ。
豆粒にも等しい非力な人間を前に、彼は油断した。
振りかぶって投げられた武具が、彼の身体を大きく穿ち貫いていた。
神も恐れた凶悪で凶暴な狼がいたという。名はフェンリル。その荒々しさは破壊を極め、すべてを破壊せし化身へと変わる。世界の終りの権化とも言われた。百年に一度目を覚まし、世界を縦横無尽に破壊する姿はまさに破壊神。暴虐の限りを尽くす彼に、世界が恐れ戦いていた。
そんな彼に前に現れる一人の青年。
「フェンリル、覚悟しろ」
爪も牙もない、貧弱な身体をした人間。
彼は獲物を定め、彼よりも小さいその人間に飛び掛かる。
だがたったの一刀のもと、フェンリルは聖刀によって身体を縦に寸断されたのだった。
ヨルムンガンド。世界をその身体一つでぐるりと繋ぐ巨大な蛇。海底の底で、自身の尻尾を咥え乍ら、徐々にその身体を締め上げて、惑星そのものを締め上げている。いずれは世界そのものが、彼の力によって破壊されることだろう。
海底の奥深く。彼は身体に力を入れ、惑星を締め上げようとしていた。
そんな時、ふと感じた聖なる力。
「ヨルムンガンド、あなたを斃します」
一人の少女が三叉槍をもって現れた。
そのあまりに美しい姿、そして聖なる力にヨルムンガンドは見惚れ、その隙を突かれて頭から尻尾まで三つに引き裂かれていった。
ジズ。
太陽を覆うほどの巨躯を持つ、世界最大の鳥の王。立ち姿はまさに頂点のあかし、翼を広げればたちまち大地を覆い隠してしまうほどだ。リヴァイアサン、ベヒモスに相する最強の一角。面白半分で翼を打ち、生み出した風によって世界が吹き飛ばされるその様を、彼は意気揚々と眺めていた。
そんな時、一人の少女が現れた。
「悪逆非道を行う鳥さん、排除しますっ」
聖弓。
太陽の如き光り輝くそれから放たれる極光の矢。防御の姿勢を取るも、その翼を容易く貫通し、その頭を軽々と吹き飛ばしていた。
ケルベロスは冥界の番犬と呼ばれていた。三つの頭を持ち、蛇の尾を持つ禍々しい存在だった。彼は冥界の番犬では飽き足らず、世界そのものを支配しようと企んだ。亡者や魔物と共に世界へと足を踏み入れて、すべてを恐怖のどん底へと叩き落した。
世界が真っ暗になっていくのを愉悦と共に眺めていたころ、彼の前に眼鏡をかけた真面目そうな青年が現れたのだ。
「さて、始めますか」
背中から引き抜いた聖鎌。
スラリと構えた彼に、ケルベロスは部下を無視して突進した。直感したのだ。すぐに殺さないと、と。
だが彼が聖鎌を振り抜いた時、その正面に居たケルベロスだけでなく、亡者も魔物も全て両断されていた。
世界最強最悪の悪魔、バアル。世界に仇為す彼の名は、その名を聞くだけで発狂に至るほどの魔力を有する。彼の生み出す配下は数知れず、冥界や天界をも超えるすさまじい力を持つ彼には、もはや挑もうとする者さえいないほどだった。
世界が闇に包まれ、光が途絶えたある日の事。
一人の勇者が現れたのだ。
「くくっ、お前が歴史に聞く勇者と言うやつか」
「そうだ」
勇者は聖剣を抜いた。神々しくも光り輝くその剣は、まさに人類の希望だった。
「お前をたおし、この世界を救う」
「くははっ、これまで世界を幾度となく救ってきた勇者、よもや我の前にも姿を現すとは何たる光栄かっ」
バアルは楽しげに笑った。
「それほどまでの脅威足るということ。これほどの悦びはないっ」
「だがお前はここで終わる。すべてを賭して、私はお前をたおす」
「面白い。来い小僧っ」
光と闇がぶつかり合う。
その戦いもまた歴史に残る。
三日三晩と続いた激しい戦い。
立っていたのは片方――勇者。
「大悪魔は今、討ち取られたッ」
世界が再び平和となった。
世界が危機に陥るとき。
必ずや光が差し込む。
勇者という救世主が必ず世界を救うのだ。
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