第7話 帰投
「......」
「お兄ちゃん!よかった、目が覚めたんんだね!」
「あぁっ、まだ動いちゃダメ!ひどい怪我なんだから」
「ここ…?ここは先生の診療所。今先生を呼んだからおとなしくしてて」
「どうしてここにって?覚えてない?ええと…あの大型オートマトンのバッテリーユニットを引き抜いた後、あいつが急に動きだして襲いかかってきたの」
「思い出した?本当にごめんなさい!私、アイツを倒したつもりになって気が緩んでしまって」
「...うん、ありがとう。それでね、その直後に辺りが急に明るくなって、なんだろうって思ったら援護に来た討伐隊が打ち上げた閃光弾だったの。」
「討伐隊の人たちね、お兄ちゃんが基地からいなくなったって気づいてから、大慌てで私たちの後を追ってきたんだって」
「追いついたときには私たちがデコイを出して作戦行動中だったから、身を潜めて様子を探ってたみたい」
「それで一度動かなくなったアイツがまたお兄ちゃんに襲い掛かってきたのを見て、アイツを引き付けてくれたの」
「その後は討伐隊のみんなが、あの大型をやっつけてくれたの。二度と起き上がってこないくらいバラバラにね」
「そして怪我したお兄ちゃんを基地まで運んできてくれたの」
「あっ、先生が戻ってきたみたい」
ウィーン
「あぁ!よかった!気がついたんだね」
「状況は...この子から聞いているようだね。すまない。今回の計画、これは立案した私の作戦ミスだった」
「ヤツにウィルスを流しこんで機能を停止させるまでは完璧だった。しかしバッテリーユニットを抜いたとき、恐らくヤツの予備電源が作動してシステムが再起動されてしまった」
「ちょうど古いコンピュータにバグが発生したときにもう一度電源を付け直すみたいにね。こんな単純なことを予想できなかったなんて情けない」
「あぁ、バッテリーユニットは君が身を挺して守ってくれたおかげで無事だったよ」
「討伐隊が持ち帰ってきたバッテリーユニットはすぐにあの子に移植した。今は再充電のためスリープに入っているが明日には目を覚ますだろう。安心してくれ。これからも君はあの子と一緒にいられる」
「私としても君が返ってきてくれて本当に良かった。大変だったんだぞ。君がいなくなったと知ったあの子がどんなに泣き喚いていたことか。それに私の趣味が理解できる話相手がいなくなるのは困るからね」
「喜ぶのはいいが余りはしゃぎすぎないでくれよ。医者としての立場から言わせてもらうと君の怪我は大分深刻だ。しばらくは絶対安静だ」
「ああそれから今回の一件、我々の司令官様はカンカンだったよ。命令を無視した完全な軍規違反。処分は君の回復を待ってから下されるそうだが、果たして今回は半年のトイレ掃除で済むかな?」
「なあに今回は私も共犯だ。トイレ掃除だろうが何だろうが一緒にやってやるさ」
「さあ君はまだ大人しくしていたまえ。あの子が目を覚ましたらここに来させるよ。私はそろそろ仕事に戻るよ。何せ始末書を書くという大仕事があるからね」
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