第5話 提案

ウィーン

「あの子は寝たか?」

「...ッ!」

「そう驚くな。私はあの子の主治医(ドクター)だよ。患者の容体を気にするのは当たり前じゃないか」

「で、君はどうするんだい?おとなしく待機命令を聞くって顔じゃないね。行くのかい?あのデカブツのところに」

「まあ君ならそうする思ったさ。攻略法は...考えて無さそうだね。安心しな。それを持ってきたんだ」


「例の大型オートマトンの位置だが、これはキミらが持って帰ってきたデータで大まかには分かっている」

「ヤツの発する熱反応と固有振動音波が最後に途絶えたのはこのポイントだ」

「地中深くに潜るのはエネルギー消費の観点から考えづらい。比較的浅いところで電源を落としておやすみしているんだろう」

「上の連中はヤツの寝床付近を広範囲に爆撃して、寝ぼけて飛び出てきたところを地上から叩くって算段だろ?」

「まあ合理的な判断だ。本来は航空機と連携した兵器だったんだろうが、スタンドアローンのアイツは破壊するだけなら比較的簡単だ」

「そう簡単なのは”破壊するなら”だ。」

「ここからが難しい話になってくる。しっかり聞いてくれ」

「まずはこのゴーグルを装着してほしい」

スチャ

「こんにちは!あなたが先生の言っていた”お兄ちゃん”ね」

「おっと!そんなに驚かなくていい。彼女はあの子の解析データをもとに私が作り出したサポートAIだ。」

「君が今つけているARゴーグルを介して、まるで実際に君の肩にこの小さい女の子が乗っているように感じられるだろう」

「さらにゴーグルに付けられた骨伝導スピーカーによってサラウンド的に彼女の声を聴くことができる!」

「全時代的な技術の組み合わせだが面白いだろう」「よろしくね。お兄ちゃん!」

「ん?このAIが可愛らしい女の子なのは何故かって?無論、趣味だ私の。あぁ、呼び方もだ。君はこういうの嫌いだったかな?」

「ふふっ、よろしい!それでこそ私の理解者だ」

「話が脱線してしまったね。それからこれはワイヤーランチャーだ。これを何とかオートマトンに当ててくれ」

「そうしたら彼女がウィルスを流し込んでヤツを停止させる」「まかせといて!」

「ん?ああウィルスだ。聞いたところ、あの子とヤツの出どころは同じらしいじゃないか。前々からあの子に何かあったときのために作っておいたんだ」

「君に黙っていたのは悪かったよ。だがあの子はあくまで外部で作られたアンドロイドだ。万が一ハッキングされて誰かを傷つけるなんてことは君も嫌だろう。

それにこのウィルスがあったからこそ、上はあの子と君が一緒にいるのを許可したんだ。」

「あぁわかってくれてありがとう」

「話を戻そう。このウィルスでヤツの動きを停めたら、君はバッテリーユニットを拝借する。そうしたら後は討伐隊の連中に煮るなり焼くなり好きにしてもらえばいいさ」

「ん?ああ肝心な話をしていなかったね。どうやって眠っているヤツを叩き起こすかだが...」

「これだ、無線誘導式四輪デコイ。これに擬似熱源とスピーカーをつけて...」

「そうだね。これはいわゆるラジコン、昔のおもちゃだね。いや言ってるだろう昔の技術でも役に立つって」


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