第3話 撤退

ザッザッザッ

「あーごめんね。おぶってもらって。まさか地中から襲ってくるとは...正体不明機ならそういうことも考えとかなきゃだったね。」

「キミがとっさに視覚妨害フィールドを張ってくれなきゃ二人とも危なかったね。先に襲われたのが私で良かった」

「私?私の方は...イテテ...ちょっと...良くないかな」

「バッテリーユニットが損傷してるっぽい。今は予備バッテリーで稼働してるけど一度ドクターに診てもらわないと」

「ねぇ覚えてる?何年前だったかなぁ。キミが前に私をおぶってくれた時のこと」

「うん、キミが初めて私を見つけてくれたとき」

「ずっと一人でぼんやりと過ごしてた暗いコンテナを、キミが開いてくれたとき、私は初めてこの世界はこんなに眩しくて青くて綺麗なんだって知った」

「不思議だよね。アンドロイドに感情なんてないはずなのに」

「ねーキミはアタシを初めて見つけたとき、どう思った?やっぱりお宝発見!ラッキー!って感じだったの?」

「え...綺麗だったって...?もう!そういうこと堂々と言わないの!こっちが恥ずかしくなるから!」

「それからキミは再起動の途中で動けない私を背負って誘拐したんだっけ?」

「人聞きが悪いって...おおむね事実でしょー」

「でもすごい安心感があったなぁ。あなたの広い背中に揺られてると、トクン、トクンってキミの鼓動が聞こえてきて」

「ほら私たちアンドロイドの人工心臓って音がしないじゃない?だから人の鼓動を聞くのってすごい新鮮」

「今もキミの背中に耳をくっつけてると聞こえるよ。トクン、トクンって。でも、いつもよりもちょっと早いかな?」

「そうだよね、いろいろあったもんね。ごめんね。私がもっとしっかりしていれば」

「うん、ありがとう。キミはやっぱり優しいね」

「そういえばさ、私を見つけて連れ帰ったのはいいけど、最初は上に報告しないで隠してたよね?」

「結局そのうちバレちゃって、突如見つかった謎のアンドロイドの私を、研究施設で分解して調べるーって大騒ぎになってさ」

「あれ、どうやって解決したんだっけ?」

「うん、うん。ドクターが、この子は人間の生活補助用に造られたアンドロイドだから、人間と生活させながら情報を解析するのが最適だって言ってくれたんだ。すごいねドクターは」

「でもキミは大目玉を食らって、ただじゃ済まされたわけじゃないでしょ?」

「罰として半年の間一人で施設のトイレ掃除?あははっ!それは大変だったね!」

「でも私といられるなら安いものだったさって…?罰でトイレ掃除をしてた人がいうセリフじゃないでしょーそれ...でも嬉しい、ありがと」

「ふぁ~。ごめん、なんだか眠くなってきちゃった。損傷のせいでスリープモードに入りそう」

「基地までは連れ帰るから安心して寝てろって?ありがとう。そういうキミの優しいところ...やっぱり..すき…」

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