第18話 琴音の如く放たれた矢
誤解が解け、落ち着きを取り戻す二人。自然の景色を楽しみながら、仲良く食事を始めようとする。そんな広々とした空間は、修練には持ってこいの場所。といってもここは、戒律で訓練が認められていない神聖な領域。
ところが、禁忌とされた庭園で弓の修練をしていた聖人がいた。その者は念を込めた式符を空へ舞い上げ、顕現させた矢で狙い射る。これにより、無数の的を同時に射るため、表情は真剣そのもの。
最悪の事態も考えられるが、解き放たれた矢はどれも正確に的の中心を射ていた。よって、弓の名手とも思える腕前に、周りにいた者達も大事に至らないだろう。このように安心していたのかも知れない。
しかし、その式符の一つが風に吹かれ、食事を楽しむ二人の一直線上に並ぶ。
こうして翼を得た矢尻は、羽根を靡かせ草原を駆け抜ける。そして風を切り草をなぎ倒し、式符を捉えると真っ二つに引き裂いた。この
けれども、喜びは束の間のひと時。勢い留まらぬ鋭い矢尻は、式符を貫き尚も突き進む。これにより、安堵した表情からは血の気が引き、次第に青ざめた表情を浮かべた。何故なら、その先に見えるのは
声を上げるも時すでに遅し、矢は
そんな刻々と近づく未来の惨劇に、
しかし、
従って、規則は意味もなく作られる事は無い。不測の事態に備え、所定の場所は存在しているからだ。それを無視したということは当然の報いかも知れない。後悔先に立たず、成り行きをただ見守る事しか出来ないだろう。
このような状況の中、やがて矢は
そんな誰もが諦めかけた瞬刻の時――。音もなく顕現された矢尻を素手で掴む
「るっ、
目の前に起きた光景が、理解出来ないでいた
「――
虚ろな表情で何かの術を唱える
さすがに人間離れした状況に
驚愕した事実に変わりはないが、更に大変なことが今まさに起きようとしいた。その事態というのは…………。
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