第6話
啓の反応に気付けなかった松本たちは、一度たじろぐが松本の声で仲間たちは動き出す。
「相手は一人だぞ、何ビビってんだ?
一人一人がナイフを持ち、啓へ接近する。
「死ね!」
ナイフの軌道は啓の顔面へと迫る。
D級冒険者並みの実力を持つ男の攻撃をステップ一つで避け、男の首元が残酷にも斬られる。
声を出すことすらできずに、顔面へ剣を刺され絶命する。
「次」
冷徹な眼差しが男たちを捉え、男達を身震いさせる。
「お前、本当に初心者かよ...!出鱈目な動きしやがって!」
金髪の男も同じくナイフで接近し、啓の後ろを取った。
短髪の男が魔法を唱え、風の魔法が放たれる。
風の魔法は鋭く速く、攻撃性を帯びた風のナイフ。
金髪の男も後ろからナイフを振り下ろした。
「もらった!!」
振り下ろされたナイフは、腕を掴まれることによって阻止される。
だが風の魔法は避けようにもなかった。
「な、なに!?」
しかし、僅かな間に金髪の男は足を引っかけられ体勢を崩す。
その隙を狙い、
「お前よくも!!」
諸に受けた風の魔法の攻撃は剣で負ったダメージと相まって金髪の男を絶命させる。
短髪の男は魔法詠唱を続け、控えた二人の男も駆け出した。
一人は姿を消す能力を持ち、音もなく近寄る。
対してもう一人はサポーター。
仲間の能力を補助するバフを掛ける役割の冒険者で、魔法使いの次に厄介な相手。
どっちも早く倒さなければ啓の体力も持たない状況だ。
「面倒だな」
音もなく近寄る男もチマチマと針を飛ばしながら、気づけば接近しナイフで傷をつけられる。
ダメージを負い続けるのは、今の状況よりももっと悪くなる。
姿を消す男を先に殺しておきたいと考えるが、一度魔法使いをターゲットに移し、自ら近寄る。
しかし、姿を消す隠密能力持ちの男がそれを許さない。
釣れた。
そう思った啓は飛び交う攻撃を注視した。
針が鋭く飛んでくる方向に確かに目向いた時、攻撃の瞬間にだけ隠密が僅かに解ける。
そのチャンスを啓は見逃さなかった。
魔法使いの短髪の男に迫る最中、隠密男の次の攻撃の瞬間、剣を投擲し隠密の男へと突き刺す。
「な、ぜ」
心臓を射抜かれた男は、隠密が解けドサッと地面とぶつかる音を立て死体へと成り代わる。
「は、バカが!お前の武器が無くなったな!これでお前は―――」
短髪の男の言葉は最後まで続くことはなかった。
何故なら、啓の手が男の首を絞めていたからだ。
「武器がなくとも人を殺す手段なんていくらでもある、そうだろう?」
サポーターの男も感情が見えない言葉に耳を固めるしか手段がない。
力強く締められる首は声を荒らげることもできず、首を絞められ窒息で死に絶えた。
「うわぁあああ!!松本さん、何とかしてくださいよ!!!」
「あぁぁ......」
サポーターの男は理解しがたい状況に叫び、松本へ懇願した。
命綱の松本は死んでいく仲間たちを前に、放心状態にあった。
サポーターは武器を投げ捨て、逃げる。
このままでは自分も死んでしまう。
まだ死にたくない、と心で必死に祈った。
だが逃げた先はモンスターたちの巣窟。
武器を持たぬサポーターに生き残る術があるのか。
クエストの討伐カウントはやがて5/6へと切り替わる。
啓は落ちている剣を拾い上げ、松本へと近寄る。
「ま、待ってくれ...。俺はまだ死にたくねえ!」
尻を地面に着き、顔をぐちゃぐちゃにしながら必死に媚びる姿は、醜くい。
初めとは打って変わって戦意喪失した様子に別人ではないかと疑う程に。
「俺が生きてる限り、お前に何でもしてやる!金が欲しいなら金をやる!女が欲しいならくれてやる!だから俺を殺さないでくれぇ...!」
情けなく首を垂れる松本。
今まで黙って松本の言葉を聞いていた啓はやっと口を開く。
「一つ聞いても良いか?」
「ああ、なんだって聞いてくれ!何でも答える!一つじゃなくとも、何回だって答える!」
啓は姿勢を低くし、よく松本へ聞こえるように囁いた。
「お前らは一度でも今まで殺してきた人たちの願いを聞き入れたことがあるのか?」
啓の声から伝わる感情は冷徹でありながら、僅かに怒りを感じさせた。
松本は震えていた身体を落ち着かせ、その問いに応えた。
「ねぇよ!」
隠し持ったナイフを突き上げ、啓の頬を掠めた。
人を騙す演技力も備えていた。
しかし・・・
「良かったよ、お前みたいなクズが相手で」
「あ?何言って―――」
スパンッ!
それは一瞬の出来事だった。
松本の首が身体から引き離されるのは。
ボトっと首が地面に落ち、ピロン!という音と共にクエストボードが開かれる。
【悪事を止めろ!】がクリアされたことが分かり、戦いも終息を迎えたという証拠だ。
順次に三つの報酬を受け取っていき、能力の活性化の影響を受ける。
ステータスを開くと筋力と精神力、体力の能力値が上昇し、ステータススコアがFからEに変わっている。
啓は自分が順当に強くなっていってるんだと自覚する。
「他の報酬は後回しだ。ホブゴブリンの魔石回収して帰ろう」
ボス部屋から出て、来た道を引き返した。
ダンジョンに楽に一層へ移動できるテレポートなどはなく、ダンジョンは帰るまでが攻略だ。
道中、一回目のユニーククエストの報酬時に手に入れた回復ポーションを飲む。
回復ポーションはランダムアイテム品の中の一つ。
ポーションは十本が支給され、そのうちの一本だ。
中級ダンジョンでも中々支給されない代物で、その効果は回復支援を得意とするヒーラーの治癒力に匹敵する。
ポーションを飲み終え、傷が癒えた啓はモンスターをなぎ倒しながら地上へと帰還する。
強くなるにつれて何かが欠落してしまっている、そんな気がしながら。
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