第10話 城崎は今


             

城崎温泉は、2020年に開湯1300年を迎えた由緒ある湯処である。1300年の謂れは、城崎を訪れた道智上人が、難病で苦しむ人々の救済のため四所明神の神託による千日間の修行の末に、720年に温泉が湧き出たことに由来している。

 

この長い歴史に加え、城崎温泉が愛され続けてきた理由は、100%正真正銘の天然温泉であることや円山川やその支流の大谿川の清流による影響も無視できないものだった。海の間近にあればこうはならなかったのかもしれないが、泉質は食塩泉の割には肌に優しく感じられ、リウマチに神経痛、高血圧や動脈硬化等、様々な病気に効能を発揮すると言われているのだ。

 

ところで城崎温泉が、一部の人に万病薬湯とも呼ばれるのは、飲泉により便秘解消に高い効能を発揮し、婦人慢性病にもよく効くからだった。

 

柴公夫が整形外科医としての専門職を生かすため、この城崎町に城崎温泉きみ待つ診療所を開いたのは、便秘や婦人病効果に特に着目したものではなく、温泉療養が運動器障害やストレス、それにうつへの効能あることに着目したからだった。


「うん。今の柴先生の説明で、城崎温泉が1300年の歴史を持つ湯処っていうのも、万病薬湯って呼ばれてるのもよう分かったわ。それにお湯の効能もきっちり頭に入ったわ。せやけど、城崎にきみ待つ診療所を開いたんは、千明さんが帰って来てくれるのを期待してなんやな。ウチでも、名前からすぐ分かってしまうもん」


食後の雑談で色んな疑問点を佐和子や柴から聞き出し、真理は納得顔でうなずいてから、いつもの様に最後は柴を皮肉る。


「あはっ! 今朝も一本取られちゃったな。でも、ホント、その通りなんだから」


千明が期待した通り、城崎で暮らすようになって、真理は傍目にも明らかな変化を遂げ出していた。さなぎから脱皮する、羽化さながらの目覚ましい変貌を遂げつつあったのだ。


どんな疑問をぶつけても、優しく受けとめてくれる同居人。貧しいが、そんなことを屁とも思わず、堂々と自分の意のままに生きる貧乏ドクター。それに、素朴な一面も持つ、味わいのある城崎の町や自然。こんな環境に包まれていると、無意識の内に、真理の心は千明の意図した方向へ向かっていくのだった。


「な、佐和子おばちゃん。ウチ、千明さんが好きで好きでたまらんかったんやけど、おばちゃんと一緒に暮らしてみて、何で好きなんか、よう分かったわ。おばちゃんも柴先生も、千明さんと同じなんや。なんか、淡々と生きてるようやけど、根っこに太い大きなもんを感じるんや。ウチなんか、おばちゃんや柴先生に較べたら、根のない浮草みたいな存在やねんな」

 

藤井家の住人になって八日目の夜、佐和子と食卓を囲みながら、真理は急に箸を置いて俯いてしまった。


「‥‥‥さあ、どうだろ。おばちゃんは千葉の木更津生まれで、六歳までそこで育ち、それから三十一まで東京の築地で暮らしていたから。でも、千明と公夫君を見ていると、真理ちゃんのいうことが分かるような気がするわ。千明は見かけは弱そうでも、結構、強いところがあるのよね。‥‥‥あの子には、おばちゃんも随分手こずってきたから。公夫君はご存じの通りの人でしょう。千明が好きで、もう、それこそ千明と心中するつもりでいるわ。見ていて悲しいくらいにね」


「そうやね。柴先生、ちょっと可哀想やわ‥‥‥」

 

柴のひたむきさを見ていると、自分の皓三に対する気持ちとダブってしまうのだ。


「‥‥‥せやけど、柴先生。千明さんが相手やから、まだましやわ」

 

本心は、千明と柴の順序を入れ替えて口に出したかった。皓三でなく、柴のような人が自分の相手だったらと思うと、真理は悲しくなってしまう。千明や佐和子、柴と接すると、皓三がいかにも安っぽく、そんな男に操を立てている自分が蓮っ葉に見えてくるのだ。


「ま、公夫君と千明のことはさておくとして、ここでしばらく暮らしてみたら、真理ちゃんの知りたいことも徐々に分かってくるんじゃないのかな。千明と公夫君の最大の共通項が、この城崎なんだから。この町で育って、二人ともこの城崎が好きで好きで堪らないということなの。いずれにしても、真理ちゃんのおかげで、千明もしげしげとおばちゃんのとこへ帰って来てくれるようになったし、公夫君も大手を振っておばちゃんのとこへ顔を出せるようになったんだから。真理ちゃん様々よ。本当にありがとう」

 

真理が来てから、柴は朝、昼、晩の三度の食事を藤井家でとるようになった。往診や急患が入るので、いつも一緒というわけには行かないが、出来るだけ食事時間を合わせているらしく、間に合わないときなどは必ず電話連絡を入れてくるのだった。


日曜日の今日も、八時前にやってきて、


「お早よー! おばちゃんに、真理ちゃん! 早く開けてよ、早く早く」

 

いつものように、インターフォンを押さずに門の外から呼びかける。


「もー! 柴先生いうたら、何でそんなにせっかちやの。ちゃんとインターフォン押して、小さな声でしゃべってくれんと、ご近所に迷惑やんか」

 

玄関を開けて真理が口を尖らせるが、穏やかな朝の日差しに包まれて目も声も笑っていた。


「ごめん、ごめん。癖になっちゃってさ。で、朝ご飯、間に合ったかな」

 

真理の肩に両手を置いて、彼女の機嫌を取る。食事の世話をしてもらうと、真理にほんわかと家族のような親しみが湧いてくるから不思議だった。


「でさ、真理ちゃん。昨日の鯛、お頭(かしら)を使って、赤ダシ作っといてくれた?」

 

昨日、駅前の鮮魚店ウオハマで柴が大きな鯛を買ってきて、近所に分けるほどの刺身に捌いたが、お頭で吸い物のダシを取ってほしいというのが朝食の要望だった。


「はい、はい。ちゃんと出来上がってますよ。せやけど柴先生。これから鯛を買ってくるときは、あらかじめ連絡しといてくれんと困るで。分かったやろ、鯛を一匹捌くのに、どれだけ手間暇かかるか」


「うん、よく分かったよ。でも真理ちゃん、料理上手だよ。ホント、驚いちゃったよ。一人暮らしで一番困るのが料理だからさ」


「なんや。料理やったら、ウチが―――」

 

してやんのに、と言いかけて、真理はエヘヘと、照れを笑いでごまかした。柴を見ていると、何かをしてやりたいという母性本能がくすぐられる思いだが、皓三への感情との違いが分からず、真理は深く考えたくなかった。


「お早よう、公夫ちゃん。昨日はご馳走様」

 

ダイニングへ入ると、佐和子が食卓を整えていて、昨夜の鯛の礼を言う。


「お早よう、おばちゃん。ご馳走になったのは俺だよ。な、真理ちゃん。」


「そうや。鯛もおいしかったけど、筍もおいしかったやろ。ワカメの味がよう染(し)ゅんでて」


「そうね、筍も美味しかったわ。真理ちゃんに来てもらって、おばちゃん、本当に助かってんのよ。さあ、戴きましょ」

 

佐和子に促され、三人そろって食卓につく。


「あー! うまい。もー、最高!」

 

椀の赤ダシを一口味わい、柴が体を震わせ感謝を表わす。


「大袈裟やな柴先生。赤ダシぐらいで」

 

真理も箸を取り上げたが、誉められてもちろん悪い気がしない。


「こんなうまい料理を毎日味わえるんだったら、俺も学生時代に戻って、藤井家に下宿したい気分だよ。学生時代の下宿の飯なんざ、ホント、食えたもんじゃなかったんだ」


「そんなこと言うて、柴先生。大方ウチとこにご飯食べに来てるやんか」


「そうだったかな。そんなにしばしば、ここで食事よばれてたっけ。だったら、食費払わなくっちゃな。でもこんなうまいもんに値段なんて付けられないしサ」

 

箸を口に運びながら、柴はとぼけ笑顔で真理の追及をはぐらかす。しばらくの間、一人暮らしの侘しさをダシにして二人を笑わせていたが、


「あ、そうだ。もう少しで忘れるとこだったよ、大事な用があったのを」

 

急に用件を思い出し、茶碗と箸をテーブルに置いた。


「何やの? 大事な用て」


「うん。今日は日曜でさ、おまけに絶好の行楽日和だろ。湯の山公園の桜も満開だしさ、花見酒としゃれこまないかって、マルニ堂のご隠居と話し合ったんだけど。ね、どうだろ?」


「でも、今日は日曜だから、湯の山公園は人で一杯でしょ。何もそんな日を選んで行かなくても、平日行かれた方がいいのに」


「いや、そこなんだよ、おばちゃん。ご隠居が言うにはさ、いつも観光客に我が物顔で歩きまわられてんだから、一番観光客の多い日に、デンと座って花見を楽しんだらどうだろうって」


「何やけったいな屁理屈やけど、面白そうやな。ウチ、マルニ堂のご隠居と、いっぺん話してみたかったさかい、賛成や」


「よし! 真理ちゃんゲットだな。ご隠居も真理ちゃんに会いたいって言ってたから、きっと大喜びだよ。おばちゃんはどうなの?」


「私は杉山のおばあちゃんに呼ばれてるから、一緒に行けないけど、花を生け終わったら、おばあちゃんを連れて行ってもいいわ」

 

杉山のおばあちゃんというのは歩いて五分ほどの旧家に住む、花好きの老婆のことで、佐和子に庭の花を生けてもらうのを楽しみにしていた。おばあちゃんちの庭では、桜は当然として、紅梅にハナミズキ、モクレン、チューリップから山吹にひなげし、それに松葉菊から月桂樹、鈴蘭にライラックと百花繚乱の様相を呈しているのだ。その中で、おじいさんの仏壇に供える花と玄関に生ける花を佐和子に選んでもらっていた。

 

佐和子も柴もこの城崎の生まれではないので、いわばよそ者であるが、お花の師匠として、また医者として町の人たちに深く親しまれ、特にお年寄りの声望は絶大といってよかった。


「柴先生。コーヒー入れるから、またお話聞かせて」

 

後片付けが終わると、真理がいつものように柴を向かいの居間へ急き立てる。柴や千明の子供の頃のこと、老人医療のこと、医者としての柴の悩み。何を聞いても、真理には新鮮でわくわくするものばかりだった。


「ま、そんなわけでさ。イギリスの外科医ジェンナーという人が、開業しながら、不思議な出来事に注目して、天然痘の予防接種を発見したんだ。その話を本で読んだ時かな、漠然とながら医者になりたいな、って思ったのは」


「ふぅーん。柴先生が大学に残らんと、城崎温泉で流行らん診療所を開いてんのも、ジェンナーの影響やねんな。せやけど、差がつき過ぎてしもてんな。一方は牛乳絞りのおばちゃんを追いかけ回して大発見したのに、片方はマルニ堂のご隠居とお友達になって、花見酒を楽しもういうんやから」

 

一言多いと思いながら、真理はいつもの様に柴をからかう。彼と話していると、なぜか、胸がきゅっと締め付けられて、それをごまかす意味もあるが、つい一言多くなってしまうのだ。


「いや、参った。参った。今日も一本取られちゃったな。ジェンナー先生に較べたら、花見酒を楽しむ不良町医者だな」


「うん、ほんまやね。ところでな、ウチにはまだよう分からへんけど、柴先生の専門は整形外科や言うてたやろ。内科や小児科、それに産婦人科のお医者さんにならんと、なんで整形外科を専門にするお医者さんになったん?」


「いやー! よく聞いてくれたな、真理ちゃん。それについては、南埜正五郎さんという、拳法をこよなく愛していた整形外科の先輩の影響なんだよ」


「へぇー、その南埜正五郎先生ていうのも、柴先生と同じで東京の御茶ノ水にある医科歯科大学を出はったん?」


正五郎という名前を聞いて、真理は初めて聞く整形外科医に強い興味をかき立てられてしまう。富田常雄が書いた長編小説が姿三四郎であって、その姿の師匠が矢野正五郎というのは、千明から聞いて知っていたのだ。ひょっとして、南埜正五郎は倉岡三四郎とつながりのある人物ではないかと思ってしまったのだ。


「いや、南埜さんは神戸大の医学部出身だから、僕の先輩ではないんだ。拳法の先輩・後輩なんだよ。もっとも僕は大山での合同合宿で、南埜さんから懇切丁寧な指導を受けたのに、初段どまりで拳法はやめちゃったんだけどね。やっぱり拳法を続けて、その関係で、南埜さんの得意だった―――患者さんの痛みを和らげる硬膜外ブロック療法(麻酔注射)、あの全身に注射できる技術の教えを乞うて、それをマスターすべきだったな……」

 

何故か柴が急に暗い表情を浮かべたが、その理由は、執拗なパワハラ(パワーハラスメント)が原因の、南埜正五郎の不幸な死であった。手術ミスを犯し落ち込んでいる南埜に、指導医と称する男が異常なほど執拗にハラスメントをかけてきたのだ。外科のスタッフが手術を引き継いでくれ、患者さんは事なきを得たが、南埜追い落としを虎視眈々と狙っていたと思われる男は、好機到来とばかり信じ難いほど執拗であった。医療スタッフ等の人前で、喚きながら何度も南埜を追求もしたらしい。

 

以上のことが、南埜に好意を寄せてくれていた先輩医師からのメールで示唆されていて、モンスターパワハラが病院内で共有されていたとのことだった。ただ不思議なのは、理事長がパワハラ医に厳重注意するとメールに書かれてあったのに、パワハラ医のパワハラは収まりを見せず、南埜は結果的に系列のリハビリテーション病院への預かりの身として、病院はパワハラ医から南埜を守るという手段を講じている点だった。


「一番偉い理事長さんの注意が及ばんで、パワハラが続くというのは、どういうことやろ。ウチにはよう分からへんわ」

 

まさに真理の言う通りで、柴も大いに疑問を感じてきたが、最近に至り、病院内で行われたと思われるカルテの改ざんや偽・変造の可能性が躍り上がって来たのだ。これら病院にとって不都合な事実を知られているため、パワハラ医に強く出られなかったのではないか。

 

 ―――南埜さんの無念を晴らすために、県警か地検に捜査を促すべきではないか。

 

捜査が入り司法手続きに移行すれば嘘が通らなくなって、病院スタッフも真実を語りパワハラの概要が明らかになるだろう。そのための資料も南埜の両親から託されて、柴は自分の手元に保持してあるのだ。ここ暫く、柴を悩ます重くて、南埜正五郎に関する深刻な案件であった。

 

ところで不幸というのは重なるものなのか、兵庫県内では南埜正五郎の死と前後して、彼の後輩の26歳の研修医が自ら命を絶ち、伊丹市立病院の25歳の研修医も自殺に追いやられていた。


「パワハラいうたら、宝塚で25歳の女性劇団員の人も亡くなってるけど、あれもイジメが問題になってんやね……」

 

新聞や雑誌で大きく取り上げられ、若い前途ある女性の痛ましい事件だったことから、真理もよく知っていた。何より昨年の夏前までは、真理も彼女と同じくイジメの対象であったのだ。           


「……な、柴先生。南埜正五郎先生の話は今度ゆっくり聞かせて貰うことにして、そろそろマルニ堂のご隠居のとこへ行かな」

 

気働きのある真理は、柴の余りにも落ち込んだ様子に気付いて彼を明るい話題に引き戻す。


「そうだったな。そういや、そろそろ出かけなきゃ。ご隠居、桜の下で首を長くして待ってるよ」

 

実際、腕時計に目を落とすと、大まかな約束の時間を過ぎている。真理に促され、柴は正五郎先輩問題を棚上げし、漸くマルニ堂のご隠居との酒席に気を向けたのだった。


「ほな、行こうか。ところでウチ、何を持って行ったらエエんやろ?」


「何もいらないよ。ゴザも酒もツマミも、全部、店の若い衆に持って行って貰うって言ってたから。実はご隠居、真理ちゃんを招待したいんだよ。藤井家の新住人に会うために、わざわざ花見をセットしたんじゃないのかな。俺はそう思ってんだよ。ご隠居、結構粋なとこがあるからさ」


「エーっ! ホンマやの。ウチ、それ聞いたら、会う前からご隠居、大好きになってしもたわ。ほなら、早う行こ、行こ。―――おばちゃん、先に行っとくわな。おばちゃんも、じきに来てな」

 

玄関先で佐和子に断わりを入れ、真理は柴と並んで芭蕉堂と秋葉大権現を巡る坂道を西へ上って行く。公園の桜もすでに満開で、二人の足下には花じゅうたんが敷きつめられ、肩にもひらひらとピンクの花弁が舞い落ちて来る。


「な、柴先生。エエ音色やな」

 

秋葉権現下に緋毛氈を敷いて、日本髪の粋筋が琴を奏でている。


「気持ちエエやろなあ、芭蕉と大権現さんに見つめられながら、公園の皆に聴いてもらうやなんて。ウチも秋葉大明神の前でピアノ弾いて、温泉客の皆さんに聴いてもらいたいわ」

 

湯の山公園への歩道を歩きながら、真理は夢見心地で柴を見上げた。


「よし! 決めたぞ! 俺もトランペットを練習するから、真理ちゃんもおばちゃんにピアノを教えてもらえよ。千明ちゃんのピアノ、真理ちゃんの部屋にあるんだから。湯の山公園で、ピアノとトランペットの共演だ。な、約束だぞ!」


「‥‥‥うん」

 

真理は寂しそうな顔をして俯いてしまった。とてもそんなに長く城崎に居られそうにないのだ。


「どうした。急に元気がなくなって。さ、走るぞ!」


「もう! ちょっと、待ってぇや。ウチ、走り苦手なんやから。なあてぇ」

 

ふくれっ面で抗議しても、柴はお構いなしに走って行く。仕方なく真理も柴の後を追いかけて、花見客で賑わう湯の山公園へ入る。


「おーい! 柴先生! ここだよ! ここだよ!」

 

いた、いた。マルニ堂のご隠居が、大きな花ゴザに腰掛けて、二人を手招きしている。ふっくらとまん丸笑顔に真っ赤なアンダー。粋に羽織った渋めの白いブレザーも印象的だった。


下半身に目をやると、ぷくっと愛嬌満点お腹に紺のジーンズが似合っていて、洒落っ気たっぷりの性格を表していた。年の頃は八十半ば。肌の色つやがよく、八の字眉とQPハゲに茶目っ気と親しみが溢れていた。


「コンニチハ」

 

柴の後から、真理がはーはー息を吐きながら芝生を駆け上がって来て、ご隠居にぎこちない挨拶をする。初対面なので、やはり緊張してしまう。


「やあ、アナタが真理ちゃんか。不良隠居のマルニ堂です。よろしくお願いしますよ」

 

ご隠居が立ち上がって真理の手を握ると、口元に白い歯が光り、八の字眉の下の目が線に隠れて、恵比須顔に相好が崩れたのだった。


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