第5話 「清貧」と「細く長く」という有害思想

 清貧や、細く長く生きる人々を賞賛するような娯楽作品は、小説に限らず多々あるが、それらは有害思想だ。そういう思想が好まれているのだろうし、求められている売れ筋娯楽作品の要素なのだろうが、僕は感心しない。


 まず清貧だが、これは現実的でない。浮浪者を見て”あの人は清貧だ”などと思う人がいようか? また金持を見て”悪い事をしているからあんなに儲けているのだろう”という目で見る人も多いのだが、現実に金に汚いのはむしろ貧乏人の方が多い。なにせ、金がなくてその日の生活にすら支障が出ているのだから、金にはどうしても敏感になってしまう。

 お金持ちは貧乏人を恐れ、ロレックス等の高級品を身に着けている人を見て安心するなんて話もあるくらいだ。貧乏人は常に自分の金を狙っているから恐ろしく、ロレックスのような高級品を身に付けられるほど、豊かな人なら安心できるという訳だ。彼等にとっては貧乏人の方が、油断ならない存在なのだ。

 そして娯楽作品において金持を悪役にするのは、貧乏人の嫉妬心を晴らしてカタルシスに浸らせるために過ぎないんです。実際に悪い事をして金儲けをする輩もいるが、それ以上に金に困って犯罪を犯す人が多いんですから。

 そして、清貧という思想、あるいは清貧を良しとする娯楽作品に染まった人は、決して豊かにはなれない。

 内心金持になる事を恐れているため、自らが豊かになる選択肢を無意識に避けてしまう。

 なにせ自分が金持になってしまったら、自分が嫉妬される対象となり、どんな悪い噂を立てられる事かと恐れなければならないのだから。

 それに、お金持ちになれば100%幸せになれるというものでもないが、同時に貧乏な人の方が圧倒的に不幸になる確率が高いのが現実だ。


 細く長く生きるというのも、”太く生きたら長く続かないに違いない”という恐れがあるから、信じられている戯言に過ぎない。これも清貧と同じく、周囲の嫉妬の目を恐れての事。

 ”出る杭は打たれる”とのことわざもあるが、目立って周囲から袋叩きにあう事を恐れているに過ぎない。心の底から目立たぬ事を望んいる訳ではなく、そこを誤魔化しているに過ぎないのだ。

 良く娯楽作品の主人公には、目立ちたくないのに不可抗力で目立ってしまうという描写があるが、滑稽でしかない。本当は目立ちたいのに、自らの意志で目立つ事をしていたら周囲、あるいは読者からの嫉妬が主人公に向けられてしまう。だから、仕方なく目立ってしまったのだという体をとっているのだ。

 ただ、本当は目立ちたいんでしょうっていうのが、透けて見えるのですよ、こういう演出には。僕もアンチなろう小説(https://kakuyomu.jp/works/16818023212501287015)の三話でネタにしてましたけど、現実じゃ美女を連れて歩いてるだけで目立っちゃうんです。本気で目立たない主人公を作ろうと思ったら、かわいいヒロインなんて登場させちゃいけません。

 そして、最悪なのが細く長く生きようとしている人に限って、人の足を引っ張るのが大好きなんです。

 そりゃそうですよね、本当は目立ちたいのに、周囲の目が怖くてそうできないフラストレーションを普段から溜め込んでんですから。のびのびと太く目立って生きている人が憎ったらしくもなるでしょう。だから、有名人に限らずちょっと目立った人がつまづいたら、もう夢中になって追っかけて叩きまくるという訳です。

 で、こういう人達は清貧の時と同様に、太く目立って生きる事は不可能です。だって目だったら今度は自分が袋叩きにされる標的になるんですから。

 でも、細く長く生きる人生をリアルに想像してみて、それで満足できる人なんてほぼいないんですよ本当は。子供の頃に描いていた夢の方が、まだ素直で本音に近いものでしょう。


 ちなみに、清貧、長く細く生きるという生き方をみんながしてくれると、助かる人達もいます。いわゆる支配者層と呼ばれる方々ですね。

 みんなが金持にもならず、目立ちもせず、脇役に徹して生きるんですから。これほど支配しやすい民もない。ハッキリ言って奴隷根性を美化するために作られたような思想なんです。

 金持になりたい、成功者になりたいと思うなら、こういう思想を美化する物語はとっとと棄てて、忘れてしまうべきだと思いますよ。

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