最終話:理屈じゃないんだ・・・美都ちゃんが好きってこと。

僕は美都ちゃんを、私を美化しすぎてるんだって彼女から言われてショックだった。

でも、目から鱗・・・少し目が覚めたかな。


僕はもう少しで美都ちゃんを綺麗な人形にしてしまうところだった。

ガラスケースに入れていつまでも汚れのないまま眺めていたかったんだ。


美都ちゃんはなにも悪くない。

美都ちゃんが言ってることが正しいんだと思う。


僕は美都ちゃんに固執しすぎてたんだ。

まあ、それは悪いことじゃないと思うけど、自分勝手な思い込みはダメだよな。


「いい機会だから言っとくけど・・・私はいけない妄想だっていっぱい

するし彼氏ができたら、自分捧げてもいいって思ってる」

「彼氏って芳樹のことだけどな・・・」


美都ちゃんはそう言った。

それって僕とならエッチしてもいいってことだよな。

僕はそんなこと考えもしなかった。


でも、そう思っててくれてるってことは、嬉しいことなんだ。

身も心も捧げますよってことだから・・・。


美都ちゃんも普通の女の子だったってことだよな。

ちょっと驚いたけど。それこそが人間らしい女の子ってことなんだ。


今は、それがイヤとは思わないし、むしろそれでいいんだと思う。

そのへん、ちょっと潔癖すぎる僕がいけないんだ。

もっと男女の性についても寛容にならないと僕は考えが古くて幼稚なんだ

と思う。


もっと大人にならないと・・・本当の美都ちゃんを受け入れないと。

そうじゃないと、いつか美都ちゃんに嫌われてしまう。


次の朝、T字路のところで待てると向こうから手を振りながらやって来る

美都ちゃんの姿が見えた。


「美都ちゃん、おはよう〜」


「おはよう芳樹」


いつもと変わらない挨拶。

いつもと変わらないふたり。


「今日は部活ないから、一緒に帰れるぞ」


「あのさ、今朝、美都ちゃんの姿が見えて僕ホッとした」

「昨日のことで、・・・美都ちゃん僕のこと幻滅したんじゃないかと思って」


「なんで?」


「いくら愛してるからって言っても理想や価値感の違うもの同士じゃ、

すれ違っていくだけだよ、って美都ちゃんに言われたし僕が無知で夢みたいなこと言ってる幼稚な男だから・・・」

「もう嫌われちゃったのかなって思って・・・」

「もし嫌われたら・・・どうしようと思って」


「女々しい男・・・」

「私以外の女には、そういうの通用しないって言っただろ?」

「嫌いになんかならないよ」

「なんで、そんなことで・・・」

「いろいろあるだろうけど、もしお互いダメなところがあったら修正してけば

いいだけの話だろ?」

「基本的なところでは芳樹のこと好きだよ、なにも変わらないよ 」


「それより芳樹こそ私のこと、幻滅したんじゃないの?」

「私が芳樹が思い描いてる女じゃないって分かって、そこらにいる女子高生と

変わらないって分かったから嫌いになったんじゃないの?」


「まあ、さっきのT字路のところで私を待てったってことは、まだ私に

気があるって思っていいのかな? 」


「思ってくれていいよ」


「あの後、反省も含めていろいろ考えちゃって、で眠れなくて夜中だけど

無性に美都ちゃんに逢いたくなって・・・」


「逢いたい・・・美都ちゃんに逢いたい・・・」


1分一秒も待てなくていつもより早く家を出て、ここで待ってたんだ。

だから美都ちゃんの姿が見えた時、もうウルウルきちゃって・・・。


「女々しい男」


「だよね」

「でも僕こそ美都ちゃんのこと嫌いになったりしないよ」

「高校に入学した時から僕は他の子に脇目も振らないで美都ちゃん一筋なんだから」


「ん〜一筋って・・・ちょっと重いけど、まあ持てないほど重くはないか・・・

むしろその重さ、嬉しいかな」


「理想とか理想じゃないとか、そんなことはもうどうでもいいんだ」

「理屈じゃないんだ・・・僕が美都ちゃんを好きだってこと・・・」

「これからは美都ちゃんに嫌われないよう方向修正しながら努力するからね」


「芳樹・・・キュンキュン来てるよ」

「充分だよ芳樹」

「芳樹はそのままでいい」

「君みたいな男子、珍しいからね」

「今時、芳樹みたいな素直で純粋な男はいないよ、いい意味でな」

「私は芳樹の真っ直ぐで素直なところが好きだって言っただろ?」


「まあ、私が少しづつ芳樹の方向修正していけばいいんだし」

「分かんないことや間違った認識は私が直してあげる」


「じゃ〜今のままでいいんだね」


「今んところはね」

「ま、多少のすれ違いはどこのカップルでもあることだし・・・考えが違うこと

だって、あって当たりまえ」

「要はお互い価値観や基本的な内面がブレなきゃいいの」

「だから私たちの関係もなにひとつ変わんない」


「それに私が芳樹をフったりしたら芳樹のお母さんに恨まれるよ」


「母ちゃんか・・・あはは、そうだよね」

「昨日も、美都ちゃんとうまく行ってんのって聞かれた」


「親不孝しちゃいけないからね、芳樹」


これからは本質を見失わないよう視野を広く持って美都ちゃんを受け止めていこう。

絆を大切に、僕たちはいつだって一緒だ。


僕に笑顔を見せた美都ちゃんがめちゃ可愛くて無性に愛しくてたまらなかった。

今日の空も僕たちの想いと同じで綺麗に晴れ渡っていた。


で・・・いつかエッチするのかな?美都ちゃんと。

それは明日かもしれないし一週間後か、はたまた一ヶ月後かもしれない・・・。

それは自然の成り行き・・・お互いの気持ちの赴くままに・・・。


おしまい。


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軟弱男子とイケメン女子。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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