第9話:美都ちゃんのイメージ。

「芳樹・・・美都ちゃんと上手くやってるの?」


「やってるよ・・・順調だけど・・・」


「ならいいんだけどね・・・お母さん心配なのよ」

「あんたが美都ちゃんから、いつかフられるんじゃないかって思うと・・・」


「なんで、フられることなんか考えるんだよ」

「応援しろよ、母親なんだからさ」


「応援してるよ」

「大事にしなよ・・・美都ちゃんのこと」


「大事にしてるよ、腫れ物に触るくらい大事にしてるよ」


毎日のように母親に言われる・・・うんざりだよ。

息子のことを気にかけてくれてるのは嬉しいけど・・・人の顔見たらこれだもん。


母親は、まあそれでもいい。


問題はクラスの一部の男子。

僕と美都ちゃんのことはクラス全員知ってるわけで中には僕にちょっかいを

出してくる奴もいる。


「おい、中野・・・おまえ、もうやったのか?」


「やった?・・・なにを?」


「何をって・・・おまえお子ちゃまか?・・・」

「やったって言ったら、そんなもんセックスに決まってるだろうが・・・」


「セ、セックス?・・・なにバカなこと言ってんだよ」

「そんなこと、想像もしたことないわ」


「バカだなおまえ、もたもたしてたら彼女、他のやつに持っていかれるぞ」


「そんなことあるわけないだろ・・・いい加減なこと言うな」

「純情男・・・まあ、せいぜいフられないよう頑張れよ」


セックスって、そんなこと。

考えただけで気分が悪くなる。

できわけないだろ・・・そんな不潔なこと。


って言うか、今時芳樹みたいなそんな男いないだろって話、まあ性格にも

よるんだろうけど・・・。

夢見る少女じゃないんだから・・・純情男なんて言われるわけだよ。


僕は美都ちゃんと一緒に帰るとき彼女に聞いてみた。


「あのさ、美都ちゃん・・・美都ちゃんと僕のことクラス中にバレてる

こと知ってるよね」


「知ってるよ・・・なに、芳樹そんなこと気にしてるの?」


「気にはしてないけど・・・美都ちゃんクラスの誰かから何か言われて

ない?・・・ちょっかい出されてるとか?」


「私にちょっかい出すヤツなんかいないよ」

「芳樹・・・誰かになんか言われたのか?」


「うん・・・言ってきたヤツいた」


「なに?言われたの?」


「そんなこと言えないよ」


「言えないようなこと言われたのに、私に報告したの?」

「いいからなに言われたか言ってみ?」

「場合によっちゃ、そいつ絞めなきゃなんないからね」


「いやいや、暴力はダメだよ」


「うん、まあやりゃしないから言ってみ?、なに言われた?」


「そんなに知りたいの?」

「芳樹にちょっかい出すやつは許せないからね?」

「内容によっちゃ黙ってないかも」


「つうか・・・おまえら、もうやったのか?って・・・」


「は?・・・なにそれ?・・・バッカじゃないの?」

「人のプライバシー聞いてどうしよって言うんだろうね」

「それをまたクラス中に言いふらすのか?」

「低俗、最低だな・・・」


「で?芳樹はなんて答えたの?」


「そんなこと、想像もしたことないわって・・・」


「うそ、とっくにやったって言ってやればよかったのに・・・」


「え〜、そんなこと言えないよ・・・エッチしたいってことだって美都ちゃんに

さえ言えないのに・・・」


「芳樹・・・今、どさくさに紛れて言ったね・・・私とエッチしたいって?」


「え?・・・あ、いやごめん・・・そんなこと・・・」

「そう思ってもすぐ否定するよ、そんなこと思ったら自己嫌悪に陥っちゃうよ」


「否定って・・・私とはしたくないのか?、芳樹」


「したいとか、したくないとか・・・」

「だって、美都ちゃんを汚したくないし君には綺麗でいいてほしいから」


「・・・・・・」


「芳樹、芳樹は私のことどうイメージしてるの?」

「美化しすぎてないか?」

「自分のなかで私を自分の理想の女に作り変えてるんじゃないの?」


「だって美都ちゃんは僕の理想だし」


「まあ、まだ付き合って日にち経ってないからしかたないけど、もしかしたら

私は芳樹が思ってるような女じゃないかもよ」


「どういう意味・・・」


「芳樹の中の私のイメージって清廉潔白、品行方正とか青天白日なんて思って

んじゃないだろうな?」

「いい機会だから言っとくけど・・・私はいけない妄想だっていっぱいするし

彼氏ができて、求められたら自分捧げてもいいって思ってる」

「彼氏って今は芳樹のことだけどな・・・」


「人を愛するってそういうことだろ?・・・漠然とでもそれは考えると思うけどな」

「愛があるならセックスって成り行きは当たり前のことだって・・・」

「芳樹が私を求めてくれるなら、ちゃんと応えてあげる覚悟はできてるよ」


「たぶん芳樹は私の綺麗な部分しか見てなくて本質を見ようとしてないんだよ」

「そういう考えは間違った方向へ行っちゃう恐れがあるし視野を狭くするだけだよ」


「どうなの?・・・綺麗なんてのは見かけだけだよ、それも私だよ、幻滅した?」

「それで、私のこと嫌いになったなら、そう言って」

「もし、芳樹にその気がないならそれは残念だし価値観の違いってことになるね」


「いくら愛してるからって言っても理想や価値感の違うもの同士じゃ、すれ違って

いくだけだよ」


美都ちゃんの発言は僕にはちょっとショックだった。

どう答えたらいいのか・・・今すぐ返事を返す言葉が見つからなかった。


つづく。

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