第7話:僕にとって大切な時間。
恋人宣言なんかして僕と美都ちゃんは恋人同士になった。
なったけど、いままでと特になにかが変わったわけじゃない。
美都ちゃんの部活がない時は一緒にお手々つないで仲良く帰っていたけど
彼女が部活がある時は、帰宅部の僕は、ひとり寂しく帰るのが嫌で彼女の
部活が終わるのを校庭の端っこで待っていた。
美都ちゃんは体育館で剣道の練習が終わったら、いつもグランドに出て
ランニングをする。
僕はそんな彼女の姿を遠くから見てるのが好きだ。
上着が白、袴が紺の道着を来た美都ちゃんは凛々しくてカッコいい。
だけど、道着で走ってる時は、少し近寄りがたい美都ちゃんがいて、
その時は、僕とは違う世界にいる人みたいに感じる。
美都ちゃんが剣道に打ち込んでる時、きっと僕のことなんか忘れてるんだろうな。
まあ、彼氏のことなんか不謹慎に考えてちゃいけないんだろうけど・・・。
それを思うとちょっと切ない・・・僕のことだけ考えていて欲しいのに・・・。
僕は四六時中、美都ちゃんのことしか考えてないのに・・・。
あ、ダメだ・・・僕、自分の気持ちを美都ちゃんに押し付けようとしてる。
自分を見失いそうになってる・・・。
ただの思い込みで美都ちゃんを疑ったりしてる・・・。
「芳樹・・・」
「芳樹ってば」
「え?・・・」
(あ・・・美都ちゃん・・・か、可愛い・・・)
(少し火照った顔に汗かいて、まだ少し荒い息遣い・・・そのまま美都ちゃんに
ダイブしたい・・・抱きつきたい)
「なにボーッとしてんの?芳樹」
「あ、ごめんちょっと考え事してた」
「いつもいつも・・・そうやって私を待ってるのは嬉しいけど、ずっと続ける
つもり?」
「退屈でしょ・・・先に帰ればいいのに・・・」
「大丈夫だよ・・・苦にならないから」
「そこで君が待ってるって思うと私が気になるんだよ」
「え、僕って邪魔?」
「そういうこと言ってるんじゃなくて、芳樹に負担かけたくないから言ってるの」
「負担なんかじゃないよ」
「美都ちゃんを待ってる時だって僕にとっては大切な時間なんだ」
「君の走る姿をここから見てる・・・それが僕にとっての幸せだよ・・・」
「僕はいつでもここで君を待ってる・・・だから苦なんかじゃないんだ」
「だけど、美都ちゃんが部活を終えるのを待ってるのって、君にとっては迷惑
って思うなら、めちゃ悲しいんだけど・・・」
「もう、女々しい男・・・」
「芳樹はなんで、そんなに私の心の琴線に触れて来るの」
「キュンキュンしちゃうだろうが」
「言っとくけど私以外の女には、そういうの通用しないよ」
「もっとも他の女のところに行かれても困るけど・・・」
「僕は君しか見てないよ・・・あ、ごめん、こういう言い方って、また押し付け
になるよね」
「だけど・・・そう思ってる・・・」
「分かった・・・あと一週したら、終わるからそしたら 一緒に帰ろ」
「あ、言っとくけど、迷惑なんかじゃないからな」
そう言って美都ちゃんはグラウンドに帰って行った。
つづく。
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