追放編13 これまでの話を
俺は崖からリリアンを引き上げてゆっくりと地面に下ろす。
「アンタ、力強いのね。アタシを軽々と持ち上げて引き上げるなんて」
「……軽かったからな」
「……あ、ありがと」
彼女は照れたように、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
ちなみに褒めたつもりはない。彼女は腰から剣を携帯していることから剣士であることが分かる。
そんな華奢な身体で本当に剣など触れるのだろうか。
リリアンはパサパサとスカートについた土埃を払い立ち上がる。
そして少し微笑みながらまだ地面に座っている俺に手を差し伸べる。
「それじゃあ、あなたの話を聞かせてもらおうじゃない。道すがらね」
「どこへ向かう道すがらだ?」
「……アタシの家……とか?」
再び顔を赤らめながら彼女が言う。
「照れるなら言わなきゃいいのに」
「照れてない!行くわよ」
そう言ってリリアンは無理やり俺の手を掴み引き上げる。
華奢な身体からは想像もつかない力だ。身体強化魔法の類いだろうか。
「アンタが嫌なら、無理に話さなくてもいいんだからね!」
そう言って歩き出すリリアン。
アンタか……そういえばまだ名前を名乗ってなかった。
「エルリックだ」
「え?」
彼女は振り返り、キョトンとしながら首を傾げる。
「俺の名前だよ」
「……そう、エルリックね」
彼女は噛み閉めるように俺の名前を呼び、何度か繰り返す。
「聞いてくれるか、俺の話」
俺がそう聞くと彼女はまっすぐとこっちを見つめて応える。
「……聞かせなさいよ」
そこから俺は今まで起きたことを話した。
かなり長い話しになったが彼女は黙ってその話を聞いてくれていた。
「なるほどね。それは災難だったわね」
最後まで話した後の彼女の感想は実にあっさりしたものだった。
「軽いな」
「で、その彼女には会いに行かないの?」
「彼女じゃない。……怖いんだよ。会いに行って拒絶されるのが」
「女々しいわねぇアンタ」
呆れたようにため息をつく彼女に俺は少しムッとする。
「……だまれ」
「会いに行きなさいよ。彼女に」
彼女をそう言われて俺は一瞬歩みをとめる。
「……気が向いたらな」
「意気地無し」
ボソッと彼女がつぶやく。
「だまれ」
そんな言い合いをしながら俺たちは森を抜け街を歩いていく。
街はもう明かりがなく、静寂に包まれていた。前にいた街ほど大きくは無いがそこそこの人口があることが分かる。
「着いたわよ」
彼女がそう呟き、顔を上げるとそこには少し小さな木造の三角屋根の家がそこにはあった。
年季が入ったドアをギギギーっと開け、彼女がのそのそと入っていく。
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