追放編10 そして現在に至る

 開けたら魔力の信号が飛び、感知できるように細工した酒瓶に強力な睡眠薬の入ったワインをエルリックに渡す。

 普段あまり交流もないエルリックだけにこれを渡してしまうのは不自然なため、睡眠薬の入っていない普通のお酒もガーディアンズの全員に配る。


 ただ、この努力は無駄だったようで最初にエルリックに渡したが、疑いもせず「まじか!ありがとな!」と言って他のメンバーに配ることを見ることなく自分の部屋に戻って行ってしまった。


 あとはエルリックが酒瓶を開けるのを待つのみだが、なかなか開けなかった。

 

 配ってから1年以上が計画し、ようやく自体が動く。


 ガーディアンズとして街を魔族から守護した日の夜、ついに彼が酒瓶を開けたのだ。


 俺は事前に雇っておいた暗殺者に連絡を入れレイスの妻であるイレイナを拘束させる。


 時を同じくして部下に部屋に眠っているエルリックを所定の場所に運び出す。

 セレーネも一緒にいたのは予想外だったが、彼女に手荒な真似をするのは本意では無いためセレーネの部屋に運び、寝かせておく。


 その後、レイスにイレイナが誘拐された可能性があることを伝えるとレイスは疑うことなくそれを信じだ。


 その頃、部下が眠っているエルリックとイレイナを人気のない路地裏に運び、ナイフでイレイナを殺害する。従順な部下のなかから背の低いドワーフに少年風の格好をさせる。


 そして睡眠薬の切れる時間を見計らってレイスを路地裏に誘導しする。そして、現在に至る。


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「エルリック!貴様ァ!!」


 レイスが俺の胸ぐらを掴んでくる。その目には殺意が込められており、何も分からないまま、俺はレイスに殴り掛かられる。


「どういうことだ!?全く分からない!ここはどこなんだ!何が起きている!?」


「とぼけるなよエルリック!この少年の証言と貴様が握っているナイフ、状況を見れば貴様がイレイナを殺したことは明白だろう!」


 アラゴンを指を刺されてそう言われる。

 俺は血のついたナイフを急いで投げ捨てる。もう何が何だか分からない。頭が混乱てし何も考えられない。


「ち、違う!俺がやった訳じゃない!話しを聞いてくれ!」


 俺は必死に弁解するが誰にも聞き入れて貰えない。


「エルリック!君をガーディアンズから追放する!残念だよ君がこんなことをするなんて。極めて残忍なその所業、王子である私が貴様に死刑を宣告する」


 周りからたくさんの足音と甲冑が擦れてカチャカチャと言う音が聞こえてくる。


 ここにいたらまずいと本能が告げている。

 ここは一旦逃げるしかない。ここにいたら殺される。


 俺はただ逃げた。ひたすら逃げて、逃げて、身体が悲鳴をあげても構わず、ただただ走った。

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