追放編6 私というものがありながら

「どうした。というかドアから入ってこいよ。何事かと思うだろ」


「いいじゃないですか。私がやりたいようにするんです」


 そう言ってセレーネはべたーん!と俺のベッドに倒れ込む。


「そこ俺のベッドな」


「もごもごもご」


 セレーネは何かを言い返しているが、俺の枕に顔を埋めているので何を言っているのかよく聞こえない。


 長くなりそうだと判断した俺は酒の瓶を出して、適当なコップに注ぐ。どうせセレーネと話すなら楽しく話したい。


「.....なんのお酒です?」


「さあ?アラゴンがくれたんだ。多分お高いんだろうさ」


 コップにとくとくと赤黒いお酒が注がれる。


「私も飲みます」


「コップ取ってこい」


「えー.....めんどくさいのでそのコップでいいです。こっち来てください」


 なんだか今日のセレーネは少しわがままだ。だが、こういうセレーネは嫌いではない。


「わかった.....お前はこれ飲め。俺が新しいのもってくる」


「このコップで一緒に飲みましょうよ。それとも関節キスで動揺しちゃうお子様ちゃんですか?」


 セレーネはわざとらしく口に人差し指を当てながらニヤリと笑う。


「お前に言われるまで思いつきもしなかったよ。俺たち兄妹みたいなもんだろ」


 そう言いながら俺はセレーネの隣に座り酒の入ったコップを渡す。


「でも本当の兄妹ではありませんよ?」


 セレーネの言葉に少しショックを受ける。俺はこいつのことを家族だと思っているんだけどな。


「冷たいこと言うのな」


「.....兄妹だと、そういう.....恋愛が出来ないじゃないですか」


 セレーネが目を泳がせながらお酒を少し口に含む。


「.....は?」


 何を言っているのか分からず俺は首を傾げる。


「ほ、ほら。エルリック、あなた今はもう17でしょう。その歳になって女性経験がないというのは可愛そうですからね。だ、だからいざとなったら私が.....その.....」


 セレーネがモジモジしながら顔を赤くしている。プシューと音がしそうな程だ。

 だが、ひとつ訂正したいところがある。


「セレーネ」


「ひ、ひゃい!」


 セレーネの名前を呼ぶと変な声で返事をするセレーネ。一瞬目を合わせたかと思うとすぐに目をそらす。


「いつまでも生娘のお前と一緒にするな」


「へ.....?ま、まさかエルリック、あなた.....!」


「もう17だぞ。それくらいその.....するだろ」


 はわわわ、とセレーネが顔を真っ青にする。


「だ.....だ、だ、だ、誰とですか!?私というものがありながら!私は初めては決めていたのに!」


 セレーネは俺の肩をブンブンと振りながら目をぐるぐるも回す。

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