第112話 異形の者
「ライトさん……ちょ、ちょっとやり過ぎなのでは?」
四人と合流してすぐにショウタにそんなことを言われてしまった。うん、僕もやり過ぎたと思ってるよ。でも、こんなに威力があるとは知らなかったから仕方がない!
なんて僕が開き直っていたら、レイがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
「それよりも、混乱が収まらないうちに魔王を探してしまおう!」
僕は話題を逸らすべくそれっぽいことを言って先に進むように促す。その作戦が上手くいったようで、ショウタはみんなの先頭に立って慌てて魔王城の中へと入っていった。
魔王城の中も城外と同じく魔人達が慌てた様子で右往左往していた。ただ、現在この城にはそれほど多くの魔人はいないとわかっていたので、ここからは正面突破することにした。
入り口で出会った魔人はレイが雷魔法で倒し、二階へと上がる階段で出会った魔人は、ミコの強化魔法を受けたショウタが出会い頭に斬り捨て、三階の立派な扉を守っていた魔人は、僕が氷魔法で氷漬けにした。
おそらくこの扉の奥が王の間なのだろう。僕らと目配せしたショウタが思い切ってその扉を開けた。そこにいたのは……
「貴様ぁぁぁぁ! 魔王様になにをするんじゃぁぁぁぁ! グハァ……」
あまりに壮絶な光景に僕らは完全に固まってしまった。ひとりの二本角の魔人が別の魔人を食べていて、それに激怒した魔人が魔人を食べてる魔人に首をはねられているところだったのだ。うん、自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。
とにかく、二本角の魔人がおそらく誕生したてであろう魔王を食べてしまったようだ。魔王を食べ終わった魔人は、次に自分が首をはねた魔人を食べ始めた。何が、どうなってるんだこれは?
「今がチャンスなんじゃねぇか?」
僕だけじゃなく勇者達もあまりの衝撃で立ちすくんでいたが、レイの一言でみんな我に返った。状況は想定外にもほどがあるけど、とりあえず魔王は勇者達が倒すという約束を守るために、僕は万が一に備えて待機をする。
カオリさんが結界をミコが強化魔法をかけて、ショウタが未だに魔人を食べている魔人に向かって行った。
「慌てるな……」
唯一生き残っていた魔人はショウタが斬りかかっても食べることを止めず、それでいて片手だけでショウタの剣を受け止めた。あまりの格の違いに戦慄が走る。レイも危険を感じたのか、真剣な顔で杖を構えていた。
魔人を食べ終わった二本角の魔人はゆっくりと立ち上がり、ショウタの剣を放した。
「アア、力ガ漲ッテクル……」
短い二本の角に黒い肌、しかし目は燃えるように真っ赤だ。それでいて、なぜか人間に近い顔立ちをしたその魔人は、ぶるっとひとつ身震いをするとカッと目を見開き、その力を解放した。何というか、どす黒いオーラがうっすらと見えている。
これはまずい。もの凄く嫌な予感がする。
(鑑定!)
名前 :シリル・Δ♯・ニБーマン
性別 :ж&∃
種族 :ジュン魔Ω
レベル:Δイ※
クラス:Й
体力 :4444
魔力 :4444
攻撃力:4444
防御力:4444
魔法攻撃力:4444
魔法防御力:4444
敏捷 :2222
運 :0
ユニークスキル
再生
凶暴化
攻撃力上昇(中)
防御力上昇(中)
闇属性
ラーニングスキル
闇魔法S・闇耐性・剣術B
これはやばい。勇者達のステータスはユニークスキルで上昇しているところでさえ2000ほどだ。僕の魔法で強化しても少し足りない。ましてや、低いところは1000くらいしかない。これは勇者達だけで倒せる相手ではないな。
僕はレイに目配せすると、レイも頷き返してきた。レイにもこいつのやばさがわかっているようだ。
「みんな、こいつのステータスは4000を超えている! 僕とレイで相手をする下がってくれ!」
全員に敏捷上昇の強化魔法をかけ、その場から離れるように指示を出す。それと同時に勇者達とすれ違うように前に出て、魔人と相対する。レイは僕の斜め後ろに陣取って、魔法で援護してくれるようだ。
「……ライト コロス コロス コロスゥゥゥゥ!」
何だ!? この魔人。僕を見た途端、発狂したように叫びだした。なぜか、僕の名前を知っているみたいだし。あっ!? こいつの名前、一部文字化けしてるけどシリルってなってるぞ!? ひょっとしてあのシリルなのか!?
うお!? しかも、攻撃力のステータスが上がっている!? これはスキル凶暴化の効果か!?
僕の方に猛然と向かってきたシリルは、いつの間にか手にしていた黒い剣を振り下ろしてきた。僕が慌てて張った結界は何と一撃で破壊され、二撃目の突きは強化魔法で上昇した敏捷のおかげでかろうじて躱すことができた。危ない危ない。
ここでレイが風魔法Cクラスの
「
すかさず僕は炎魔法Sクラスの
「
さらに距離が離れたところで、今度はレイの風魔法Sクラスの
そして、レイの魔法を吸収したシリルは黒い剣を片手に再び僕目がけて一直線に突っ込んできた。その時だった。
「ライトの敵!」
先ほどの爆発で崩れた柱の陰から、何者かがシリルに向かって飛び出し、その首筋を短剣で斬りつけたのだ。
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