第106話 亡者の墓⑤

 四十階層でドラゴンゾンビを倒し、前人未踏の四十一階層へと足を踏み出した僕達は凶悪な魔物達を蹴散らしながら先へ先へと進んでいく。

 四十三階層に突入したときには、四十階層のボスよりレベルの高いドラゴンゾンビが複数で現れるようになっており、すでにコジローさんを加えた六人パーティーで戦っている。

 パーティーは六人しか組めないので、レベルが上限に達しているレイはひとりぼっちだ。ふふふ、ここから出た後レイをからかういい材料ができた。


 コジローさんが加わったことで前衛が増え、強敵相手にも安定した戦いができるようになっている。勇者の三人も僕もレベルが90に到達し、この地下迷宮ダンジョンに入った時より明らかに強くなっている。敵も強くなってるから実感がないかもしれないけど。


 各上相手に戦っているおかげで、スキルレベルもガンガン上がっているようだ。ショウタはノームのヒロシを出しっぱなしにしているし、ミコも強化魔法もバンバン使っている。僕もできるだけアドバイスしているので、少しはスキル上げに貢献できているといいんだけど。


 レイの方を見てみると、意外なことに笑顔でこちらを眺めていた。いや、こちらというより聖女様の方を見ていないか?

 っと、レイの方を気にしていたらスケルトンキングが一体僕の方にやってきた。よし、こいつは僕が直接相手をして……はい、精霊王達にボコボコにされています。ああ、骨がバキバキに折れてかわいそう。


 多少の各上相手でも、精霊王達のおかげか有利に戦いを進めることができている。ただ、進化したからか消費魔力も格段に多くなっているので、この状態だとあまりランクの高い魔法は使わない方がよさそうだ。



 そんな感じでさらに先へと進んでいき二日後、亡者の墓に入ってから十日目の夜に五十階層へと到達した。この段階で全員がレベル100に達している。今日はここで野営をし、明日、五十階層のボスへと挑戦するつもりだ。

 僕が扉の向こうにいるボスを鑑定してみると、不死の王イモータルキングと出た。


不死の王イモータルキング Lv110:体力3311:魔力2056:攻撃力2390:防御力2355:魔法攻撃力2255:魔法防御力2431:敏捷1383 スキル 再生:闇魔法A:雷耐性:水耐性:土耐性:闇耐性:睡眠耐性:麻痺耐性:魅了耐性:石化耐性】


 人型のアンデットで大きさは二メートルほどだが、ステータスは勇者達より高い。攻撃力や防御力は素の状態であれば僕より上だ。だだ、竜断を装備すればダメージは与えられそうだけどね。


 僕が作った食事を食べながら、鑑定で得た不死の王イモータルキングの情報を交流する。予想以上のステータスの高さに、勇者達の顔がこわばっているようだ。


 確かに、魔法抜きなら僕でも苦戦するかもしれない。ひょっとしたら、ここが最終階層という可能性もあるな。


 食事をとりながら入念に作戦を練っていく。無表情で食べ続ける聖女様を除いて。今回はヘイト管理が重要になりそうだ。あの攻撃力なら、後衛は一撃で死んでしまうからね。


 そこで、最初はショウタとコジローさんだけで頑張ってもらうことにした。強化魔法と結界は切らさないようにして、しっかりとヘイトを稼いでもらう。

 不死の王イモータルキングの体力が半分になったところで、攻撃魔法の解禁だ。


 作戦が決まったところで、明日に備えて寝る準備を開始する。ショウタとコジローさんは軽く打ち合いをするようだ。カオリさんとミコと僕は強化魔法と結界のタイミングの確認だ。残り者の聖女様とレイは意外にも話が弾んでいる。聖女様ってあんなにしゃべれたんだ。


 それぞれの確認が終わったところで、テントに入る。ここは魔物は入ってこないし、ここまでたどり着ける冒険者はいないだろうけど、念の為明日戦闘に参加しない予定のレイが見張りをしてくれることになった。はて? そんなこと引き受けてくれるようなやつだったかな?


 少し疑問が残るけど、見張りをしてくれるのはありがたい。素直に感謝しておこう。




 翌朝、体力と魔力が回復したことを確認して、いよいよボスの待つ部屋へと入っていく。


 今までのボスの部屋と違って、城の玉座の間のようだ。薄暗い部屋の奥に豪華な椅子に座る人型のアンデットが座っている。


 アンデット達の王、不死の王イモータルキング。その名に恥じない威圧を纏いながら、静かに立ち上がる。


「よし、行くぞ!」


 少し残る恐怖を打ち消すように、ショウタが大声を出して飛び出して行った。それに続くコジローさん。二人にはすでに強化魔法と結界がかけられている。


 レベルが100になって、ショウタのステータスはコジローさんを超えている。そのショウタが不死の王イモータルキングに斬りかかった。

 ショウタにはカオリさんが攻撃力上昇と敏捷上昇をかけているが……不死の王イモータルキングはぎりぎりでその一撃を躱す。


「くっ!?」


 大振りを躱されてできた隙に、不死の王イモータルキングの拳が迫る。


「抜刀術・速」


 その拳にカウンターを合わせる形で、コジローさんが必殺技を放った。ブシュっという音がして、コジローさんの「神滅」が不死の王イモータルキングの腕を半分に切り裂く。


「助かりました!」

「なんの!」


 間一髪で助けられたショウタが、すかさずコジローさんにお礼を言う。結界があるから大丈夫だと思うけど、さすがはコジローさん。


「グゴォ、グァァァァ!」


 腕を半分に裂かれた不死の王イモータルキングが叫ぶ。それと同時に不死の王イモータルキングの腕が逆回しのようにくっついていった。さすが再生待ち。


「コジローさん、合わせます!」

「承知!」


 今の攻防で落ち着きを取り戻したショウタは、コジローさんにメインアタッカーを任せ、サポートに回るようだ。


 コジローさんが上手く不死の王イモータルキングの攻撃をいなし、細かな傷をつけていく。

 その合間をぬって、ショウタが強烈な一撃をお見舞いする。不死の王イモータルキングの再生が徐々に追いつかなくなってきたところで、そろそろミコの出番のようだ。ミコの合図と共に、ショウタとコジローさんが不死の王イモータルキングから距離をとる。


炎核爆発ニュークリア・エクスプロージョン!」


 炎魔法Sクラスの炎核爆発ニュークリア・エクスプロージョン不死の王イモータルキングの目の前で目もくらむような大爆発が起こった。

 この一撃でとどめとはいかなかったが、不死の王イモータルキングの顔と胸が爆発の衝撃でえぐれており、シュウシュウと音を立てながら再生を試みている。


「剣技:斬!」

「抜刀術:速!」


 そこにショウタとコジローさんの必殺技が炸裂し、首が飛び、上半身と下半身が分断された。さすがにこの状況では再生が叶わず、不死の王イモータルキングの身体は崩れ落ちた。


「お疲れ様です! やりましたね!」


 僕は勇者達とコジローさんにねぎらいの言葉をかける。終わってみれば、結界も破られることなく、ノーダメージでの完全勝利だ。


「強化魔法と結界魔法のおかげです!」


 ショウタは不死の王イモータルキングを倒したことにおごることなく、謙虚な姿勢でお礼を言う。うんうん、この調子なら大丈夫そうだね。ミコもこの地下迷宮ダンジョンで使えるようになったSクラスの炎魔法の威力に大満足しているようだ。カオリさんも結界魔法が破られなくて、ほっとしている。


 今回、唯一出番がなかった聖女様は……あぁぁぁ!? レイと手をつないでやがる!? まさか、これはまさかなのか!?


 二人で手をつないでさっさと転移石がある部屋へと移動するレイと聖女シトラス。しかし、コジローさんも勇者の三人も特に反応することなくドロップアイテムを回収している。あれ? もしかして、驚いているのは僕ひとりなのでは?


 僕もなるべく平静を装って、みんなの後に続き転移石の間へと移動した。


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大変申し訳ありません。ついにストックがなくなってしまいました。これからの更新は不定期になります。(週末更新を目指します)

更新が遅くなりますが、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

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