第104話 亡者の墓③
亡者の墓の二十二階層以降は、その階層の魔物のレベルに追いつくまで先に進まないことにして、レベル上げを優先した。おかげで時間は少しかかったけど、安全を確保しながら順調に強くなっている。
一方、僕ら指導者達は時々連携を試す機会はあったものの、必ずレイかコジローさんがあっという間に倒してしまうので、この辺りでの連携練習は諦めていた。
そして、僕達が亡者の墓に入ってから1週間が経ったところで、ようやく三十階層へと到達した。亡者の墓の三十階層からはスケルトンキングやダークリッチなどのAランクの魔物が現れるそうだ。レベルも60を超える個体がごろごろいるらしい。現在、勇者達三人のレベルは55。ここでも慎重に進むことになりそうだ。
そして、四十階層のボスはドラゴンゾンビなのだとか。レベルも80を超えていて、現在の最高踏破記録が三十九階層なのは、誰もドラゴンゾンビを倒したことがないからなのだろう。今回のレベル上げの目安のひとつとして四十階層の突破も期待されている。だから、勇者達三人には最低でもレベル80になってもらわないと。
ちなみに僕のレベルは74。最近、強い魔物と戦っていなかったから全然上がっていない。勇者達のレベルが74になったら、僕もパーティーに混ぜてもらおうかな。正直、だんだん勇者達も三人じゃきつくなってきてるみたいだから、僕が入った方が効率よく倒せるようになるはずだ。
この話をしたら、聖女様が『私も混ぜなさい』なんて言い始めた。彼女のレベルは80だから、そこまで到達したら五人でパーティーを組むことにした。
そこからは指導者陣も全力でサポートしたので、思ったよりも早く一週間ほどで勇者達のレベルが74へと到達。さらに、僕がパーティーに加わったことでカオリさんの負担が減り、相手の攻撃も気にしなくてよくなったので殲滅速度が上がった。たった三日で80へと上がり、勇者三人と僕と聖女様の五人パーティーができあがった。
「よし、それじゃあドラゴンゾンビに挑戦するぞ!」
聖女様を入れて何度か連携を確認した後、いよいよ四十階層のボスであるドラゴンゾンビに挑戦することになった。このパーティーのリーダーであるショウタの指示の元、五人が先に中に入り、コジローさんとレイが後ろからついてくる。
「お、思ったよりも大きいんですね?」
黒魔導師のミコがドラゴンゾンビの大きさに驚いている。確かに、ゾンビとはいえ元はドラゴン。頭の先から尻尾の先まで全長十メートルくらいはありそうだ。炎は吐かないけど、闇魔法を使えるようだ。
「カオリとライトさんは結界を頼みます。ミコは炎魔法を中心に。聖女様はいつでも治癒できるように準備しておいてください。では、行きます!」
ショウタがリーダーらしくみんなに指示を出す。簡単な指示ではあるが的確だ。五人パーティーの内、四人が後衛という何ともバランスが悪いパーティーだけど、僕はカオリさんの指導者枠だからね。前衛ができることは内緒にしておかねば。いざとなったら、コジローさんが参戦してくれるでしょう。
ミコが強化魔法をショウタにかけ、炎魔法の詠唱を始めた。そして、僕がショウタにカオリさんが後衛に結界を張る。
自身の強化と結界を確認したショウタが、ドラゴンゾンビ目指して駆け出した。しかし、ドラゴンゾンビも黙って見ていたわけではない。ドラゴンゾンビの目の前に黒いモヤが現れ、ショウタへと襲いかかった。
それを見た僕は冷静にショウタに
ショウタは黒いモヤにあえて飛び込み、姿を隠しながらドラゴンゾンビの左側へと回り込む。僕の結界を信用しての行動だね。その信頼には応えねば。
ミコはショウタが右に回り込んだのを見て、ドラゴンゾンビの前に
これで、黒いモヤが晴れても後衛への攻撃はできないだろう。機転が効いた上手い使い方だ。
ドラゴンゾンビの目を掻い潜ったショウタが、左足へと斬りかかる。
ブシュ!
にぶい音がして、ドラゴンゾンビの足から緑色の液体が飛び散った。強化魔法で筋力を上げたショウタの剣は通ったのだが、これダメージはあるのか?
ドラゴンゾンビも今の攻撃に気づいていないみたいだし、あんまり効いてないみたいだ。
それを見たショウタは、今度は垂れ下がった翼に斬りかかった。が、またしてもドラゴンゾンビはその攻撃を無視して、今度は
ブレスを吐きながら顔を動かし、
「きゃあ」
ミコへの一撃はカオリさんの張った結界で防げたが、その一撃で結界が粉々に砕け散ってしまった。
「この野郎! お前の相手はこっちだろう!」
ミコを攻撃したことで、無防備になった背中をショウタが斬りつけるが、やはり致命傷には程遠いようだ。むしろ、最初に傷つけたはずの足が治ってるし……
「ガァァァァァ!」
ダメージはないが素早い連続攻撃を鬱陶しいと思ったのか、ドラゴンゾンビが咆哮をあげた。途端に展開される複数の魔方陣。眷属召喚だ。
魔方陣から召喚されたワイバーンゾンビの数は六体。ドラゴンゾンビほどの強さはないが、前衛が少ない僕等にとってはこの数は致命傷になりかねない。チラッとコジローさんに目をやるが、まだ動く気はなさそうだ。
「ショウタさん、精霊魔法を使いましょう」
数に対抗するには数を増やすのが一番だ。僕はショウタに精霊を召喚するように指示を出す。ショウタが召喚できるのは地の精霊ノームのみ。しかも、まだランクが低いのでそれほど戦力にはならない。だから、僕も召喚する。
「おいで! シル、フィー、サラダ、ノーム、ディーネ、ドリア!」
僕の呼びかけに応じ、六体の精霊が現れる。
「やっと俺様達の出番だな!」
「出番だな!」
一番に召喚された風の精霊シルが元気よくワイバーンゾンビの前に躍り出る。それにフィーも可愛らしく続く。他の四体もそれぞれ別のワイバーンゾンビの相手をしてくれるようだ。ちなみにだけど、僕の精霊魔法スキルはすでにレベル30に到達しており、それに合わせて精霊達も進化した。
シルとフィーは風の精霊王ジンと風の精霊女王ジーナに、サラダは炎の精霊王イフリートに、ノームは大地の精霊王ベヒモスに、ディーネは水の精霊王リバイアサンに、ドリアだけは木の精霊王になっても種族名は変わらずドリアードだった。
精霊王になったことで姿が変わるのかと思ったけど、みんな今まで通りがいいってことでそのまんまの姿を維持している。変えようと思えば変えられるらしいけど、僕も慣れ親しんだ姿の方がよかったので、今まで通りでお願いした。
レイを除く全員が驚いているみたいだけど、今はそれどころじゃないから目の前の敵に集中するように檄を飛ばした。
さて、数の不利はなくなったから第二ラウンドといきますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます