第102話 亡者の墓①
今、目の前ではショウタと小次郎さんが剣を合わせ、その横ではミコがレイに言われた通り五大属性の魔法を順番に放っている。
カオリさんは聖女様と一緒に治療院に出かけているそうだ。そこで、怪我人を治しつつ聖魔法のレベルを上げているとのことだ。
ここである程度技術を身につけたら、
その時、通訳がてらご一緒させてもらって精霊魔法や強化魔法について教えてあげるとするか。
となると、僕もその二つを中心に上げてスキルレベルを30にしておくか。2人の訓練の様子を見た僕は、そっと訓練場を後にした。
その夜から、僕は三人の勇者にこの世界の言葉を教えるため、教皇様に広めの部屋を借りて机に向かう日々が始まった。
初めのうちは苦戦していたが、コツを掴んだのか話すことに関しては、ぐんぐん上達していった。逆に書くのは少し苦戦していたが、それでも予想よりずいぶん早いペースで上達している。
「ライト君は気になる女の子とかいないのかな?」
流暢なこちらの言葉で、そんなことを聞いてくるカオリさん。会話の練習をしてるんだよね?
「お前、何を聞いてるんだよ! 相手はまだ子どもだぞ!?」
会話の練習をしているカオリさんに、やけにムキになって絡んでいるショウタ。冗談なんだから、そんなに怒らなくても。
「あたし達だってまだ子どもみたいもんでしょ! それにあたしライト君の結界で守ってもらいたい! ミコはどう思う?」
「わたしは……ありかも」
「ミコ……お前もかよ」
うんうん、ちゃんと会話が成り立ってるね。三人ともすごい上達しているよ。まるで、劇を見てるみたいだったからね。
こんな感じで一週間経つ頃には会話に困らなくなり、三週間経つ頃にはこちらの世界の本を読めるようにまでなっていた。
ついでにこたらの言葉を教えることで、僕のスキルもぐんぐん上がっていき、ついに知識共有のスキルを覚えた。
いやー、異世界の料理ってすごいね。こちらにも似たようなものがあるけど、完成度が違う。カオリさん達が暮らしていた世界の料理は、芸術だね。味もいいんだろうけど、見た目にもこだわったものばかりだった。
何とかこちらで再現するためにも、似たような素材を探さなくては。
それと、メインスキルの方も順調に上がっていたようで、ついにCランクに達したのでそろそろ
▽▽▽
「ここって、アンデットモンスターがたくさん出るんだって。あたしこわーい! ライト君守ってね!」
三人の勇者達は今、聖国が管理する
『亡者の墓』はその名の通り、スケルトンやグールといったアンデット系のモンスターが多く出ることで有名だ。
聖国の神官たちは皆、光魔法や聖魔法の使い手なので、ここはレベル上げに丁度いいのだろう。それでも、深い階層には彼らでも手に負えない、強力なアンデットもいるとか。
相変わらず、こちらの世界の言葉を冗談を交えて練習しているカオリさんに微笑みを返して、いざ
低階層は低レベルのアンデットしか出ないので、勇者達三人は簡単に蹴散らしながらどんどん進んで行く。僕ら指導者組は、その後をのんびりついていくだけだ。
アンデットには治癒魔法が効くようで、カオリさんが活躍していて嬉しそう。いつも、治してばっかりだから魔物を倒せるのが楽しいみたい。
そんな感じで四時間ほどかけ、十階層まで到達した。さすが聖国が管理しているだけあって、階段の場所や出てくる魔物が記入された地図が手元にある。これを使って最短でここまで来たのだ。
さて、十階層に降りたところで昼食をとることにした。もちろん、料理担当は僕だ。僕の料理を知るコジローさんはすでにそわそわしてるし、レイも初めて僕の料理を食べられると興奮している。唯一、聖女様だけポーカーフェイスだけどね。
そして、僕が今から作るのはカオリさん達に教えてもらった異世界料理、『ハンバーガー』だ! ふわっと焼き上げた円状のパン二枚の間に、タレをつけた焼いたお肉に野菜を挟んで完成だ。
こっちの世界にも似たようなものはあるけど、丸いパンに挟むというのは見たことがない。挟むお肉は高級なドラゴンの肉にしてみた。もちろん、ステータスアップのおまけつきとなっている。
「わあ! ハンバーガーだ! まさかこっちの世界で食べれると思ってなかった! ありがとうライト君!」
カオリさんが代表してお礼を言ってくれたけど、ショウタもミコも今は戻ることができない故郷の料理ということで、すごく喜んでくれている。
濃い味付けも好評で、みんな「おいしい、おいしい!」と言って食べてくれた。ちなみに、一番たくさん食べたのは終始無言で無表情だった聖女シトラス様でした。
お昼ご飯も済ませ、ステータスがアップした勇者達はさらに勢いを増して、五時間かけて二十二階層まで到達した。
今日はここで野営をすることになるので、それぞれテントを出して準備をする。七人いるので見張の順番を決め、夜ご飯を作って食べた。今度は、こちらの世界で定番の柔らか煮を作ってみた。お肉はベヒーモスだけど。
指導陣にも好評だったし、カオリさんたちも『シチュー』に似てると言って喜んでくれていた。ちなみに、一番最後まで食べていたのは、終始無言で、時々ニヤッとしていた聖女様でした。
ご飯の後は、それぞれ稽古をしたりお話をしたりと思い思いの時間を過ごした。最後にカオリさんに寝ていても消えない結界のコツを教えて、二人で全員分の結界を張って寝ることにした。
(僕の見張りは最後だから、早起きしなきゃね)
そんなことを考えつつ、すぐ眠りに落ちていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます