第101話 カオリとの訓練

「ライト君! 君すごいね! あんな結界の使い方よく思いついたね! それに結界を出すのがすごく早い! あたしにもしっかりと教えてほしいな!」


 翌日、早速僕が指導するカオリさんと顔を合わせた。昨日、僕のことを目をキラキラさせて見ていた女の人で、珍しい黒髪に黒い瞳のきれいな女性だ。まずは、彼女のステータスを確認する。


名前 :カオリ・サオトメ

性別 :女  

種族 :人族

レベル:22

ジョブ:聖女

クラス:S

職業 :白魔導師


体力 :312

魔力 :751

攻撃力:231

防御力:229

魔法攻撃力:162

魔法防御力:768

敏捷 :285

運 :206


ユニークスキル 

回復力上昇・魔法防御力上昇(小)・効果持続


ラーニングスキル 

聖魔法C Lv9・光魔法C Lv9・結界魔法D Lv2


 さすがは異世界からの勇者。レベル22にしてこのステータス。レベル100に上がったら相当強くなるんじゃないのかな。それに聖女様の指導がいいのか、聖魔法と光魔法は順調に上がっているみたいだね。僕は三日に一回、このカオリさんに結界魔法を教えることになった。残りの二日間は割と自由にしていいみたい。なかなかの好待遇だね。


 さて、このカオリさんは異世界人だからなのか勇者だからなのかわからないけど、飲み込みが早い。結界魔法の主な使い方から、応用的な使い方まで僕が知っている限りの知識を伝える。今はまだ経験不足だし、ランク不足だからできないことも多いけどイメージしておくだけで大分違うからね。

 それからひたすら結界術を使ってスキルレベルを上げていく。最近は魔法回復薬マナポーションを飲みまくっていて、いい加減飽きてきたって言ってたね。


 それから、休憩の時間に異世界の料理について聞いてみた。どうやら、コジローさん達の祖先が彼らの世界の人達らしく、異世界の料理だけじゃなく以前コジローさんから聞いた味噌や醤油、マヨネーズと言った調味料や様々な種類のお酒についても教えてくれた。


 学者のラーニングスキル"知識共有"があれば、その姿形も拝めたのに残念。早く覚えなくては。これは自由時間はスキル上げと料理の研究で消えていきそうだ。


「あれ? そう言えば、ライト君ってなんで私達の世界の言葉を話せるのかな?」


 カオリが使うこちらの言葉はかなり拙かったので、向こうの世界の言葉を話してもらっていると、そんなことを聞かれた。


「ああ、それは僕の今の職業が学者だからかな? 学者のユニークスキル"言語理解"の効果だと思う」


「へー、そんなスキルがあったんだ。ねぇねぇ、それなら私達の国語の先生になってよ!」


 どうやらこの勇者達ご一行は、やはり言葉の壁に悩まされていたようだ。頑張ってこちらの世界の言葉を覚えようとしているけど、やることが多くて思うように進んでいないらしい。国語の先生っていうのが何をさしているのかよくわからないけど、まあ、言葉を教えるくらいなら問題ないか。

 僕は少し考えた後、引き受けることを伝えた。他の二人の勇者にも興味あるからね。


「よし、それじゃあもう一踏ん張り頑張ろうか」


「はい、先生!」


 僕が休憩の終了を告げると、カオリさんは元気よく立ち上がってまた結界魔法の修行へと戻るのだった。



 ▽▽▽



「ようライト。あのカオリって子はお前に気があるんじゃねぇか? 今度、食事にでも誘ってみろよ!」


 その夜、レイと食事をしているとそんなことを言い出した。まったく、相変わらずそんなことしか考えていないのか。


「ふぅ。なんでわざわざ自分から面倒事に巻き込まれようとするんだよ。勇者とそんな関係になったら、トラブルが増えること間違いなしでしょ!」


 まさかこいつ、女性勇者の二人に手を出してないだろうね。


 そんな心配をしつつ、カオリさん以外の勇者についてや魔族の動向について聞いてみた。レイの話によると、ショウタの剣術はコジローさんのおかげでメキメキと上達しているが、精霊術については手つかずらしい。ミコは五大魔法は順調に育ってるけど、強化魔法は少ししか教えてもらってないみたい。

 レイに両方教えられないか聞かれたから、一応できるとは言ってみたけど、正直面倒くさいことになるのはわかっているから、できれば遠慮したい。

 それから、魔族の動向については何でもここ最近は不気味なくらい静かだとか。魔王の誕生まではもう少し時間がありそうだと聖女様が言ってたから、ひょっとして魔族側でも不測の事態が起きているのかもしれないと言っていた。


 何でも魔族が魔族を襲う事件があったとかなかったとか。魔族も一枚岩ではないのかな?


 どちらにせよ。魔王が誕生するのは確定で、その魔王を倒すために勇者達が召喚された。その勇者達を、できるだけ早く鍛え上げなければならない。


(うーん、魔族のことを考えたら、精霊魔法や強化魔法も教えた方がいいのかな)


 僕が複数のユニークスキルを持っていると知られたら、面倒ごとに巻き込まれそうなんだけど、魔族に支配されたらそうは言ってられないわけで……うん、タイミングをみて伝えるとするか。


 明日は自由行動の日だけど、僕は他の勇者の訓練の様子でも見ておくことにした。

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