第76話 修行開始 ⚪︎
剣士の冒険者ランクがAランクに昇格してから三日が経った。この三日間は、親方に鍛冶の知識を教えてもらいつつ、空いた時間にボッザと採掘に行ったりして過ごしていた。
特に浅い階層なら魔物も弱いし、効率は悪くても掘れば銅鉱石や鉄鉱石くらいなら採ることができるので、少しでも採掘量を増やしたいとついて行く者もいるそうだ。
ただ、僕の場合はこっそり採掘師に転職して掘っているので、習熟度もすでに2あがり、結構な量が採れてしまっている。ボッザにバレないようにこっそり
ちなみに親方は片腕だし、ローラさんはひどい火傷でほとんど寝たきりだから、食事は僕が作っている。普通に作る料理ももちろん褒めてもらったけど、ドワーフは大のお酒好きらしく、お酒のつまみになるような料理をたくさん教えてもらった。そのおかげで、『お前を弟子にしてよかった!』とお褒めの言葉をいただきました。
そんな感じで鉱石を蓄えたり、ドワーフ好みの料理の研究をしながら過ごしていると、
やっぱり親方は有名な鍛冶師だけあって顔も広いし、親方にお世話になったというドワーフがそれこそ山ほどいるそうだ。親方はそんなことは一言も言っていなかったが、時折見に来てくれるノックスさんが教えてくれた。
親方の工房は住居兼工房なので、生活道具も含め全て
でも、この家が空き家になるのはもったいないからこっそり僕が購入しておくことにした。
▽▽▽
「さて、今日からここで本格的に鍛冶の修行にはいるぞ!」
「はい! 親方!」
引っ越しを終えた次の日、早速本格的な修行が始まった。修繕が済んだ親方の工房は、素人目の僕から見てもすごく立派に見えた。ここで鍛冶のイロハを教えて貰えると思うと心が躍る。
「へー、本当に復帰したのか……いや、片腕はそのままだから弟子をとったってところか。それにしても、その後ろにいるヤツが弟子なのか? 人間の子どもじゃねぇか! 天下のガスティンも落ちぶれたもんだな!」
っと、せっかくここから修行が始まるのかと思ったら、水を差してくる人物がいた。背格好はガスティン親方と似ているが、ドワーフ特有のひげはなく、妙にキザったらしい人物だった。
「ザナックスか……何のようじゃ?」
なるほど。こいつがザナックスか。親方が警戒しているのも無理はない。ちまたの噂じゃ、親方の工房に火をつけたのはザナックスに命令された手下じゃないかと言われているからね。
「なあに、元No.1鍛冶師のガスティン様が戻ってくると聞いて、現No.1の俺様が確かめに来てやったのよ。だが、いらぬ心配だったな。相変わらずの片腕に、弟子は人間の子どもときた。せいぜい、ドワーフ鍛冶師の名誉を汚さないようにひっそり頑張ってくれや!」
【あんなに嫌なヤツ、見たことないな】
(全くだ)
ザナックスとやらはそんな捨て台詞を吐いて、すぐにいなくなってしまった。と言うか、レイの言う通り、こんなに噂通りに嫌なヤツなんて初めて見たよ。あ、いや、ひとりいたな。僕を置き去りにしたヤツが。
そんなこんなで、水を差された感じになってしまったけど、やっと修行に入れるぞ。親方も気を取り直して、鍛冶の基本について教えてくれた。
「とは言ってもワシは見ての通り利き腕が無いから・・・実際にやって見せれないのが心苦しいが、そこは勘弁してほしい」
一通りの説明が終わった後、弟子入りが決まったときと同じことを言われたのだが……
「あの……以前から気になっていたのですが、親方はその右腕は治さないのですか?」
僕はちょっと失礼かとも思いながら、以前から気になっていたことを聞いてみた。なぜなら親方は右腕がないことに負い目を感じているようだったから。それなら、いっそのこと治してしまえばいいのにと思ったのだ。
「……随分と簡単に言ってくれるな。そりゃ治せるものならワシだって治したいさ。だがなライト覚えておくといい。例え神聖国家セイクレイドの聖女様だって、失われた腕を取り戻すことはできないんだよ……」
そう言えば誰かもそんなこと言ってような……まあ、僕には関係ないけどね
「そうでしたか。では、治しちゃっても構いませんね?」
「いや、お主、ワシの話を聞いていたか? 治せるものなら治していると……」
「はい、
僕が聖魔法Sクラス、
「な、な、な、な、なにぃぃぃぃぃぃ!?」
その叫び声を聞いて、奥からローラさんが姿を現す。
「あなた、どうしたの!?」
慌てて出てきたローラさんも、親方の右腕が作られていく様子を見て絶句している。その姿を見て、僕は思った。
(ついでにローラさんの火傷も治しちゃおう)
「ローラさん、ちょっと失礼します。
本日二回目の
「おま、おま、おま!?」
「あ、あなた!?」
お師匠様とローラさんの驚きの声が重なる。
「これでよし! さあ、親方。これで、手本を見せることができないとは言わせませんよ!」
親方の治療を終え、僕はワクワクしながらハンマーを構えて待っているのだが……
「おま、おま、おまえ! や、火傷が、火傷が治っちょるぞぉぉぉぉ!!」
「あ、あ、あなたこそ! 腕が、腕があるじゃないですか!」
喜びを分かち合う親方夫婦。これはしばらく時間がかかりそうだ。僕は持っていたハンマーを下ろし、お互いの治った部分を触り合っている親方夫婦を眺めながら、
その後、我に帰った親方に色々と根掘り葉掘り聞かれたが、いつもの通り勝手にダブルだと勘違いしてくれたので、曖昧に頷いておいた。『鍛治師より聖者をやってる方が絶対儲かるだろ……』と言われたが、それは華麗にスルーしておく。
親方が一通り納得したところで、いよいよ鍛治の修行が始まった。とは言っても、最初は銅鉱石を溶かす訓練だ。炉に燃える石と自分で採掘してきた銅鉱石を入れる。
銅鉱石と一重に言っても、多少の不純物が混ざっている。それらは銅よりも低い温度で溶けるため、まずは銅以外の不純物を溶かして取り除く。それから銅の塊になったところで、さらに温度を上げ銅を溶かしていくのだ。この時、銅に魔力を込めておくと比較的低い温度でも溶けるそうだ。
普通に銅が溶かそうとするならば、炉の中の温度を上げるのは燃える石だけでは不十分である。一応、穴の空いたバッグのようなものを使って炉の中に風を送り込めば、燃える石はさらに燃え上がり、銅をも溶かす温度に達する。もしくは、燃える石の代わりに魔石を使えば、銅どころか鉄くらいなら風を送らずに溶かせるそうだが、お金がかかるので大抵は魔力を込めて溶かしやすくする。
僕の場合は魔法があるので、そもそも燃料すらいらないのだが、せっかく教えてもらっているので、親方の言う通りにやってみた。
「ほう、初めての割にはなかなかだな」
見様見真似でやってみたが、なかなか上手くいったみたい。親方からお褒めの言葉をいただき、つい顔もニヤけてしまう。
【お前のニヤけ顔もなかなかきついな……】
おう、まだ起きてたんだ辛辣賢者さん。
(思ったより上手くいったんだからいいだろう!)
【それにしても、ローラは火傷が治っても……なしだな】
(ドワーフにはドワーフの美的センスがあるんだよ!)
本当に突然しゃべりだしたかと思えば何を言い出すんだこいつは。
っと、脳内でそんな会話をしつつも、溶かした銅を型に流し込みインゴットを作成していく。
この日から3日間、自分で採ってきた銅鉱石に加え、ボッザから買い取った銅鉱石をひたすらインゴットに変える訓練をした。それだけで、鍛冶師のラーニングスキル"素材加工術"の習熟度が3つ上がったのだった。
名前 :ライト
性別 :男
種族 :人族
レベル:40(70)
ジョブ:鍛冶師
クラス:D
職業 :鍛冶職人
体力 :400(1540)
魔力 :200(3109)
攻撃力:420(1537)
防御力:420(1536)
魔法攻撃力:200(3928)
魔法防御力:300(3831)
敏捷 :355(1525)
運 :355
(オリジナルギフト:スキルメモリー)
ユニークスキル
鑑定 Lv3(30)
(無詠唱・並列思考・消費魔力減少・魔力回復速度上昇
攻撃力上昇(中)・防御力上昇(中)・魔力上昇(小)
魔法攻撃力上昇(中)・魔法防御力上昇(中)
敏捷上昇(中)・探知 Lv30・隠蔽 Lv30
思考加速 Lv30・集中・獲得経験値倍化・経験値共有
アイテム効果アップ・効果持続 Lv30・暗視・魔物調教
契約・召喚・重ねがけ・ジョブチェンジ・
ステータスアップ効果)
ラーニングスキル
素材加工D Lv3
(炎魔法SS Lv30・風魔法SS Lv30・土魔法SS Lv30・雷魔法SS Lv30
水(氷)魔法SS Lv30・闇魔法SS Lv30・光魔法SS Lv30・聖魔法SS Lv30
重力魔法SS Lv30・時魔法SS Lv30・空間魔法SS Lv30・結界術SS Lv30
錬金術SS Lv30・調理術SS Lv30・槍術D Lv1・斧術D Lv1・弓術D Lv1
拳術D Lv1・盾術D Lv1・暗技D Lv1・短剣術D Lv1・剣術SS Lv30
刀術SS Lv30・強化魔法C Lv9・採集S Lv23・算術SS Lv30・裁縫D Lv1
農耕D Lv1・採掘D Lv3・暗殺術D Lv1・調教術D Lv1・精霊契約D Lv1
付与術D Lv1・祝福SS Lv30)
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