第50話 閑話 ミアのレベル上げ奮闘記

~side ミア~


 私は盗賊にジョブチェンジした後、ランドベリーの冒険者ギルドで龍の息吹ドラゴンブレスというパーティーに誘われた。リーダーは剣士のラルク。その他に、盾士のアランと黒魔道士のノエル、白魔道士のミカという四人パーティーだ。

 全員、年齢が二十代とかなり若い。それでもみんなDランクに達している。ここランドベリーでもそこそこ名の知れたパーティーだそうだ。そして盗賊となった私を加えた五人パーティーは、予定通りランドベリーの北にある未完成の迷宮ラビリンスという地下迷宮ダンジョンでレベルを上げることになった。




▽▽▽




 私が龍の息吹ドラゴンブレスの一員になった次の日、早速、地下迷宮ダンジョンに入ってみることになった。


「それじゃあ、アランが先頭でミアはその後ろについてくれ。もし、罠を発見したらすぐ教えてほしい。その後ろを僕が、ノエルとミカは1番後ろだ」


パーティーにリーダーのラルクの指示の元、未完成の迷宮ラビリンスの一層を進んで行く。壁や天井、床自体が淡く発光していて視界には困らないみたい。広めの通路を少し進むと、T字路に出る。


「この階層はFランクとEランクの魔物しか出ない。ミアは確か冒険者ランクがEだったよな? クエストで使えそうな素材をなるべく持って帰ってランク上げに使おうか」


 ラルクの言葉に私以外のみんなが頷く。どうやら私はまたしてもパーティーメンバーに恵まれたようだ。だけどそのせいで、私はまたライトに申し訳ない気持ちになってくる。


 出てくる魔物を倒しながら奥へと進む五人組。浅い階層では罠も少なく、魔物もそれほど強くない。他のパーティーと出会うことも多く、比較的和やかな雰囲気で進んで行く。


「そう言えば、この地下迷宮ダンジョンは何層まであるかわかっているのですか?」


 今日はお試しのつもりで入ったから、私は事前の情報をあまり集めていなかった。それで、先頭を歩くアランに聞いてみたんだけど、意外な答えが返ってきた。


「ああ、この地下迷宮ダンジョンは最近踏破されたんだ。今のところの最下層は44層だな。と言っても、その踏破した冒険者曰く『この地下迷宮ダンジョンはまだ成長中』だそうだ」


「へぇ、踏破されているんですか。でも、44層ってかなり深いですよね。一体どこの有名なパーティーが踏破したんですか?」


 44層といえば少なくとも魔物のレベルは50を超えてるはず。フロアマスターに至っては60超えかもしれない。そんな高レベルの魔物を倒せるパーティーなら、さぞ有名だと思って聞いてみたんだけど……


「いや、それが噂によるとパーティーじゃなくソロらしいんだ。ただそいつは、踏破してすぐにいなくなってしまったらしく、情報はほとんどないそうだ」


「ええ!? ソロで44層を踏破ですか!? それ本当ですか!? そんなことできるなんて、有名なSランク冒険者とかですか、その人は?」 


 予想外の答えに、思わず大声を出してしまいました。でも、仕方ないよね。話の中身が中身だから。


「そこははっきりしないんだが、逆にそんな有名なSランク冒険者だったらもっと情報があると思う。まあ、その場にいたであろう冒険者達が一様に口をつぐんでいるところを見ると、有名どころが目立つのを嫌った可能性がないわけじゃないが……」


 確かにアランのいうことも一理あるけど、お金と名誉を大切にする冒険者がわざわざ自分の名前を隠すかな?

 何せ、地下迷宮ダンジョンを踏破したとなれば、珍しい者好きの貴族からの依頼も増えるだろうし、どこかの国に仕官することだってできるかもしれない。

 ある意味、有名になりたい英雄志望の集まりが冒険者みたいなところがあるから、やっぱり有名どころのSランク冒険者とは思えない。


 そんなことを考えていた私は、ふとある一人の人物のことを思い出した。ランドベリーのピンチに颯爽と現れ、不可思議な光で騎士を助け、とんでもない魔法で魔物を蹴散らしたあの水色のローブの人を。


(あの人だったらあり得るかもしれない……)


 そう考えて明後日の方向を見ていた私と龍の息吹ドラゴンブレスのみなさんが、なぜか同じ顔をしていた。

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