第32話 閑話 シリルのその後③

~ side シリル ~


 俺が『血塗られた盾』の頭になってから、およそ一ヶ月が経った。前の頭だったゴランが死に、俺が頭になってから直ぐに拠点を移し、今は食文化の街トルーフェン近郊の森に隠れている。

 あの時六人しかいなかった仲間はすでに二十人ほどに増えている。それもひとえに俺の人徳のおかげだろう。


 『血塗られた盾』に入った当初は反抗的だったリビーとグレースも、すっかり大人しくなった。今では仲間の一員として認められ、それなりの立場を獲得している。まあ、俺の近くには寄ってこないが。


 そんなある日、側近のワコウがとある情報を持ってきた。


「聞きやしたかお頭。ビスターナの街が魔物の軍勢に襲われたそうですぜ」


「ビスターナだと。俺様を門前払いしたギルドがあるところだな。それで、街はどうなった? 壊滅か?」


 ビスターナにいい印象などない俺は、むしろ被害が大きいことを期待しながらさらに詳しい情報を聞き出そうとした。


「いえ、何でも魔物が街になだれ込んで、もうだめかってときに救世主だかが現れて、奇跡的にほとんど被害がなかったらしいですぜ」


(クソッ! 俺を認めないヤツらなどみんな死んじまえばいいのに!)


 ワコウの情報には少々がっかりしたが、俺様がビスターナ近郊でもたもたしていたら、その魔物の襲撃に巻き込まれていたかもしれない。そう思うと、やはり俺様は先を見る天才といわざるを得ないだろう。


 それから、俺様のステータスだが今はこんな感じだ。


ステータス


名前 :シリル・ニューマン

性別 :男

種族 :人族

レベル:21

ジョブ:剣士

クラス:C 

職業 :野盗


体力 :175

魔力 :56

攻撃力:241

防御力:234

魔法攻撃力:51

魔法防御力:75

敏捷 :138

運 :68


ユニークスキル 

攻撃力上昇(小)

防御力上昇(小)


ラーニングスキル 

剣技C Lv9


 あの時に比べ、レベルも大幅に上がった。クラスもあと少しでBに上がる。俺様の配下達はまだC、Dクラスが多いが俺様がBクラスに上がる頃には、こいつらもB、Cに上がるだろう。それまでは、商隊を襲うのは極力控えてレベル上げに専念させるつもりだ。


 それでも、時折フラッと現れる少人数の旅人なんぞは襲わせてもらってるがな、ククク。


 さらに俺達は別の収入源として毒草を栽培し始めた。運良く配下にジョブが"農民"ってヤツがいたからな。

 アジトの近くで毒草を育てさせ、裏取引で捌いているのさ。これが中々の当たりで、目下俺達の主な収入源となっている。買っていくのは貴族が多いが、果たして何に使っているのやら。ククク。


 まあ、そんなこんなで楽しく野盗をやらせてもらってるよ。ランドベリーを追い出されたときは運が悪いと思ったが、今となってはあのおかげで今の俺様があるんだからな。世の中わからないものだ。


 ゆくゆくは、ゼノビア帝国を拠点に世界中に存在するという犯罪組織『ユベル』に並ぶ、でかい組織にしてやる。そのためにも、今は力を蓄える時だ。


 俺様はそんじょそこらの野盗とは違う。裏社会の王となるべき存在だ。そんな野望を胸に、俺達はせっせと毒草を売りさばくのだった。

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