第27話 未完成の迷宮 踏破 ⚪︎

「!! これは、アダマンゴーレム!?」


【アダマンゴーレム:Lv65:体力999:魔力659:攻撃力862:防御力843:魔法攻撃力560:魔法防御力808:敏捷682 スキルー】


 四十階層のフロアマスターはミスリルゴーレムの上位種、アダマンゴーレムでした。

 赤紫に輝くその身体は、防御力も魔法防御力もこれまでの魔物達より桁違いに高く、生半可な攻撃は全て弾いてしまうだろう。しかも体力はほぼ1000。これって普通のパーティーで倒せるレベルなのだろうか? 果たして僕だって勝てるのか?


 ちなみに僕の今のステータスはというと……



 名前 :ライト

 性別 :男  

 種族 :人族

 レベル:35(54)

 ジョブ:結界師

 クラス:B(S)  

 職業 :冒険者


 体力 :180(1180)

 魔力 :280(2693)

 攻撃力:110(1177)

 防御力:110(1176)

 魔法攻撃力:180(3448)

 魔法防御力:270(3351)

 敏捷 :120(1185)

 運 :275


(オリジナルギフト:スキルメモリー)


 ユニークスキル 

 効果持続 Lv24

(無詠唱・並列思考・消費魔力減少・魔力回復速度上昇

 攻撃力上昇(中)・防御力上昇(中)・魔力上昇(小)

 魔法攻撃力上昇(中)・魔法防御力上昇(中)

 敏捷上昇(中)・鑑定 Lv21・探知 Lv24・隠蔽 Lv11

 思考加速 Lv20・集中・獲得経験値倍化・経験値共有

 アイテム効果アップ)


 ラーニングスキル 

 結界術S Lv24

(炎魔法SS Lv30・風魔法SS Lv30・土魔法SS Lv30・雷魔法SS Lv30

 水(氷)魔法SS Lv30・闇魔法SS Lv30・光魔法SS Lv30・聖魔法SS Lv30

 重力魔法SS Lv30・時魔法SS Lv30・空間魔法SS Lv30・錬金術SS Lv30

 剣技D Lv1・槍術D Lv1・斧術D Lv1・弓術D Lv1・拳術D Lv1・盾術D Lv1

 暗技D Lv1・短剣術D Lv1・強化魔法D Lv1・加工D Lv1・採集D Lv6

 算術D Lv9・裁縫D Lv1・農耕D Lv1・採掘D Lv1)


【素手で殴り合ったって勝てるわ】


 レイはそう言うけど僕はそれほど自信があるわけではない。そりゃあ。魔法を使えば何とかなりそうだけど、殴って勝つなんて想像もできない。だって、あの身体とっても堅そうだよ?


(さすがに素手は無理じゃない?)


【んじゃ、試しにやってみろよ。結界術もSに上がってるから反射結界リフレクトバリアでもかけておけ。万が一、攻撃を受けても反射でダメージを与えられるから】


 レイがそこまで言うなら、試しに素手で戦ってみようかな。幸い、魔法防御力は高いからレイの言う通り結界を張っておけば大丈夫だろう。


【ってか、結界すらいらないと思うけどな】


 レイの最後の呟きはよく聞こえなかったけど、急激に上がるステータスに身体を慣らすためにも、できるだけ魔法を使わずに頑張ってみよう。




 フロアマスターの部屋に入ると、今までよりやや狭めの正方形の部屋の真ん中に、赤紫色に光るゴーレムが片膝をついてうずくまっていた。しかし、その状態ですら優に三メートルはある。僕が部屋に入ったことで、侵入者を検知したのだろう、その金属の巨人が立ち上がった。


 片膝ついて三メートル、立ち上がると五メートルはあろうかという巨体が動き出す。防御力は843、敏捷は682。通常ジョブなら、レベル100でも勝てるか怪しいほどのステータスの高さだ。


 まずは先制攻撃とばかりに、何の工夫もない右ストレートのパンチを繰り出すアダマンゴーレム。だが意外にもそれほど速くは感じなかった。余裕を持って、左ステップで躱してみる。


 ブゥン!


 結構距離が離れていたのにもかかわらず、風圧を顔で感じた。やはり僕の防御力の方が上回っていたとしても、まともには受けたくない。


 おそらく全力で放ったであろう右の拳が、いとも簡単に躱されたことに対して、感情がないと思っていたアダマンゴーレムから、動揺した気配が伝わってくる。


 さらに、続け様に放った左フックをこれまた余裕を持って躱すと同時に、アダマンゴーレムの背後に回り込む。敏捷に至っては500以上差があるので、僕を見失い慌てたように辺りを探すアダマンゴーレム。


(何か、魔法生物っぽくないな)


 続いて、素手の攻撃力を確かめるために放った僕の右ストレートは……


 ドゴォン!


 アダマンゴーレムの右足を打ち砕き、バランスを崩したアダマンゴーレムが崩れ落ちた。


【ほらな!】


 勝ち誇ったかのよう声を荒げる鬱陶しいレイ。


(まさかとは思ったけど、本当にアダマンタイトを素手で壊せちゃうとは……日常生活に支障ない?)


 その時僕は、『身の回りのものを勢い余って壊さないようにしなければならない』と強く心に刻み込んだ。


「よし。身体も思い通りに動くみたいだし、かわいそうだけどトドメをさそう」


 レイが自慢げにごちゃごちゃ言っているのをかき消すように声に出しながら、倒れたアダマンゴーレムの頭部をジャンピングかかと落としで打ち砕いた。バラバラに砕けたアダマンタイトはミスリルよりも希少なので、もちろん余さずお持ち帰りする。


 四十階層を突破し、魔力を登録し終えた僕は、さらに攻略を進めていった。だが、未完成の迷宮ラビリンスと言われるように、まだ発展途上のこの地下迷宮ダンジョンはその後四日かけて潜った四十四階層が最下層らしく、この四十四階層は全ての通路が行き止まりになっていた。


 そのうちの一本で僕が目にしたのは、地下迷宮ダンジョンが徐々に広がり成長していく様子だった。目の前で僅かずつながら、淡い光を発しながら徐々に広がっていく地下迷宮ダンジョン。さすがにこの現象を見たという話は聞いたことがないので、ちょっと得した気分を感じながら、空間転移テレポーテーションでランドベリーへと戻った。




 ▽▽▽




 カラン、コロン


 僕がランドベリーの冒険者ギルドの扉を開けると、受付に集まっていた冒険者達が一斉に僕を見つめた。


「まじか!? 生きて帰ってきたぞ!」

「ええ!? 絶対間に助からないと思ってたのに」

「だから言った。絶対無事。むしろ、踏破してくる」

「いや、さすがにそれはない……よな?」


 そんな言葉が僕にかけられる。


(ん? みんな僕のことを言ってるのかな?)


【おお、めぐたん! 相変わらず美人だな!】


 エロ賢者が言ってることを含め、何が起こっているのかよくわからなかったが、よくよくみんなの声に耳を傾けてみると、どうやら僕が地下迷宮ダンジョンに一人で入ったはいいが、帰ってこないから救助隊を送るかどうか揉めていたようだった。


 その中にあって唯一、龍の爪ドラゴンクロウみなさんだけは僕は無事だと思っていてくれたみたいで……というか、メグさんに至っては最下層まで踏破してくるって断言していたみたいだし……


「ライトさんですね? 私はここで副ギルドマスターを務めている、ベティ・フローレンスと言います。実は二週間ほど前に、未完成の迷宮ラビリンスの二十層にお一人で転移して行ったという目撃情報がありまして、何かあったのではないかと心配していました。無事に帰られて何よりなのですが、今までどうやって生き延びることができたのですか?」


 先ほどまで騒いでいた集団の中から、ひとりの小柄な女性が僕の前までやってきて、そう尋ねてきた。


 どうやら、二十層より先に進めるパーティーはそれほど多くないらしく、さらにソロで向かうなど前代未聞の自殺行為だと思われていたようだ。副ギルドマスターという偉い人まで出てきて、連日ちょっとした騒ぎになっていたみたい。


【ふむ、随分小柄だが悪くはない。告白してもいいぞ、ライト】


 この空気の読めない賢者は放っておいて、粗相がないように話を進めよう。


「えーと、生き延びるというか普通に攻略していただけなのですが……」


「えっ? おひとりで?」


「はい、おひとりです」


 まだ若そうな副ギルドマスターは、かけていた眼鏡を触りながら不思議そうな表情を浮かべる。


 集団の中から『だから言ったのに』なんてつぶやき声が聞こえてきたけど、あれはたぶんメグさんだろう。


「とても信じられません……それで攻略はどこまで?」


「えーと……四十四階層ですが……そこから先は全ての道が行き止まりだったので、最終階層だったのかな?」


 途端に騒ぎが大きくなる。『まじか!?』とか、『嘘だ!?』とか『やっぱり……』とか聞こえてきた。


「そ、それは本当なのですか!? もし本当なら、四十階層のフロアマスターを見たのですか!?」 


 副ギルドマスターのベティさんは、それはもう先ほどまでの冷静な様子とは打って変わって、取り乱した様子になっている。眼鏡なんてもうずり落ちかけているし……ぐいぐい来て顔は近いし……


【ライト、偶然を装ってあと二十センチメートル顔を前に出せ! 後は俺が何とかする!】


 いや、何をさせようとしているんだこのエロ賢者は! とうか、僕の脳内でしか活動できないレイが何をどうできると言うんだ。


「あの、ちょっと近いです……。四十階層のフロアマスターは……」


 当然顔は近づけずに、というかむしろ距離を取って、僕がアダマンゴーレムのことを話そうとしたとき、ギルドの奥からひとりの職員が慌てた様子で駆け寄ってきた。


「ベティさん!! 大変です! ビスターナが魔物の大群に襲われています! たった今、応援要請の魔法通話が入りました!」


 その職員が伝えた情報は、このギルドをさらに混乱させるのに十分過ぎるものだった。


「詳しい状況を教えなさい!」


 ベティさんも、すぐに副ギルドマスターの顔に戻り状況を確認する。


【おいおい、ビスターナと言ったらあの可愛い受付嬢がいるところか!? よし、ライト。今すぐ助けに行くんだ!】


 可愛い受付嬢云々は置いておいて、ビスターナに行くというのは賛成だ。今の僕の力がどれほど役に立つかはわかならいけど、一度訪れた街が壊されるのを放っておく訳にはいかない。


 僕は時間が惜しいので、すぐにギルドのドアを飛び出し転移魔法を使った。

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