第13話 やり過ぎちゃいました!? ⚪︎
(うーん、わざと攻撃を弱くしているのかな? もう僕の結界の出番は終わったと思うんだけど……)
ヒューゴさんがくれたチャンスのおかげで、僕は初めての結界術でいいところを見せることができた。だからもう倒してもらって構わないんだけど。ヒューゴさん達の攻撃が、ワイバーンに全く通用していない。
【単純にあいつらが弱いんじゃね?】
レイはそんなことを言っている。いや、レベル的には確かに劣ってるかもしれないけど、彼らは立派な武器を持っている。いい武器なら、攻撃力の五百や六百くらい底上げできるのではないか?
「よし、武器を鑑定してみよう。えーと、ヒューゴさんの剣は……」
『鑑定 アイアンソード:攻撃力50』
うん、これは無理だ。
【だから言ったじゃねぇか……】
確かにレイの言う通りだったのだが、それはそれで困ったことになった。僕が魔法で倒してもいいのだが、そうなると『結界師の僕がなぜ魔法を使えるのか』と不審がられてしまうだろう。
僕は考えに考えた末、ある結論にたどり着いた。
(自然災害に見せかけるのはどうだろうか?)
【いや、それは無理じゃね?】
レイは即座に否定してくるが、この場を乗り切るにはそれしかないと考えた僕は、早速手持ちの魔法からそれっぽいのを探す。
(炎魔法はこの森の中じゃ危ないし、氷魔法は不自然だし、やっぱあれしかないか)
何とかごまかせそうな魔法を見つけた僕が、それを使うタイミングを計っていると、すぐにチャンスが到来した。またもやワイバーンが咆哮を上げ、
(今回は二回目だから、すぐに硬直が解けるはず。その前に決める!)
「
僕が小声で唱えたのは、雷魔法Aクラスの
あ、ちなみに無詠唱のスキルを持ってるから、魔法の名前を言う必要はないんだけどね。その方が気分が盛り上がるから、言うようにしているんだ。
ズゥゥゥン!
電光石火の一撃を受け、頭部を失ったワイバーンが力なく崩れ落ちた。
【絶対バレると思うけどなぁ】
(大丈夫! 知らぬ存ぜぬを通せば諦めてくれるはず!)
レイの心配を振り切るように、僕は強気にそう返答した。
程なくして起き上がる、
「な、何が起こったんだ?」
起き上がるやいなやワイバーンの死体を見たリーダーのヒューゴさんが、僕の両腕をガッチリと掴み、ものすごい剣幕で質問してきた。
「みなさんにトドメを刺そうとしていたワイバーンの頭に雷が落ちました!」
「か、雷?」
僕の答えに不思議そうに上空を見上げるヒューゴさん。釣られて、他のメンバーも上を見上げる。
雲ひとつない快晴。レイのため息が脳内に響き渡る。
「いや、本当です! なぜかわかりませんが本当に雷が落ちてきたんです!」
必死に言い訳をする僕を、目を細めて見つめてくるみなさん。これは、絶対に信じていない顔だ。
しかし、全員が地面に倒れていたから僕が魔法を放っているところは誰ひとり見ていない。僕が雷が落ちたと言い続けたら、渋々だが納得してくれた。
だが僕への追求が終わったわけではなかった。次に僕に質問してきたのは斧戦士のジャスパーさんだ。
「なあ、お前さんのステータスってどうなってる? なぜワイバーンの咆哮がお前さんだけ効かなかったんだ?」
うっ、これも本当のことを言うわけにはいかない。
「えーと、偶然耳を塞いでいたからでしょうか?」
僕のナイスな言い訳に……
「「「ないないない!」」」
全員が顔の前で手を振って否定する。さすが一年も一緒に行動しているパーティーだけあって、息ぴったりだ。
「それじゃあ、私からも質問です。あなたが使った結界はいった何だったのでしょうか? ワイバーンの攻撃を一切受け付けない結界なんて、レベル21の結界師が張れるはずないと思うのですが?」
くっ、確か結界の強さは魔法防御力に依存するんだったはず。そりゃ2000超えてれば、あんな攻撃を百回受けたってびくともしないけど……
「ワイバーンが弱ってて、攻撃力が落ちていたのでは?」
これまたありそうな言い訳に――
「「「ないないない!」」」
またもやハモる四人組。
「僕からもいいかい?」
質問タイムはまだ終わらない。弓術士のキースさんまで聞きたいことがあるようだ。
「君は、全く戦闘に参加していないのにレベルがあがってたよね? 何でかな~?」
そんなところまで見てるとは! ヒューゴさんも頷いているから気がついてたのか。
「そ、それはあれですよ。みなさんの溢れ出る優しさが、僕に経験値という形で流れ込んできたのですよ!」
「「「…………」」」
そこは突っ込まないんだ……。ジト目のタイミングまでぴったりだとか、ある意味すごいな……
確か、冒険者がお互いの素性を詮索するのは御法度だって、受付のお姉さんが言ってたのに……
まあ、それでも僕が知らぬ存ぜぬを貫き通した結果、ようやく僕への追求が終わってくれた。
ちなみにワイバーン一体で僕のレベルは二つ、
名前 :ライト
性別 :男
種族 :人族
レベル:23
ジョブ:結界師
クラス:C
職業 :冒険者
体力 :60(483)
魔力 :100(1887)
攻撃力:40(480)
防御力:40(478)
魔法攻撃力:70(2518)
魔法防御力:100(2421)
敏捷 :40(487)
運 :120
(オリジナルギフト:スキルメモリー)
ユニークスキル
効果持続 Lv4
(無詠唱・並列思考・消費魔力減少・魔力回復速度上昇
攻撃力上昇(中)・防御力上昇(中)・魔力上昇(小)
魔法攻撃力上昇(中)・魔法防御力上昇(中)
敏捷上昇(中)・鑑定 Lv4・探知 Lv6・思考加速 Lv8
集中・隠蔽・獲得経験値倍化・経験値共有
アイテム効果アップ)
ラーニングスキル
結界術C Lv7
(炎魔法SS Lv30・風魔法SS Lv30・土魔法SS Lv30・雷魔法SS Lv30
水(氷)魔法SS Lv30・闇魔法SS Lv30・光魔法SS Lv30・聖魔法SS Lv30
重力魔法SS Lv30・時魔法SS Lv30・空間魔法SS Lv30・錬金術SS Lv30
剣技D Lv1・槍術D Lv1・斧術D Lv1・弓術D Lv1・拳術D Lv1・盾術D Lv1
暗技D Lv1・短剣術D Lv1・強化魔法D Lv1・加工D Lv1・採集D Lv3
算術D Lv2・裁縫D Lv1・農耕D Lv1・採掘D Lv1)
ワイバーンを倒した僕らは、十分レベルも上がったということで、ワイバーンの素材を解体して戻ることにした。ワイバーンの鱗が硬すぎて、めちゃくちゃ解体に時間がかかってしまったけどね 。
みんなが悪戦苦闘している中、僕の脳内賢者だけは『解体する美女……そそられる』とか何とか恐ろしいことを言っていた。
▽▽▽
「クエストの達成確認ですね。少々お待ちください」
ビスターナのギルドに戻ってきた僕達は、まずはゴブリンやフォレストウルフなどの討伐クエストの報告をする。
僕は、Fランクのクエスト二つ分とEランクのクエスト三つ分でランクがEになった。最初のクエストでランクが上がるなんて、やっぱり先輩冒険者達のおかげだね!
まあ、Fランクは見習いみたいなものだからすぐに上がるとして、ここから上げるのが大変みたいだけど。
その先輩冒険者達は、帰ってくる道中にもっと質問してくるかと思ったけど、みんなぶつぶつ独り言を言いながら歩いていた。
そして今も、クエスト報告をしているのに心ここにあらずといった感じだ。
続けて、買取カウンターで素材を買い取ってもらうことになったんだけど……
「なあ、これって出していいと思うか?」
買取カウンターの前で、ヒューゴさんが仲間に問いかける。
「私もそれを聞きたかったわ」
エイミーさんもヒューゴさんと同じ疑問を抱いていたらしい。
そんな二人が手にしているのはもちろん、ワイバーンの素材だ。
「でも、このまま持っておくわけにもいかないだろう?」
キースさんの意見に他の三人も『確かに』と頷く他ない。
なぜそんなに出し渋っているのだろうか? もしかして、五人でワイバーン一体の素材なんか出したら、恥ずかしいからだろうか? 確かにワイバーンなんてソロでも狩れそうな魔物だから、パーティーで一体なんて恥ずかしいかもしれない。
だけどワイバーンは大きいからなぁ。
まあ、それでもいつまでも持っているわけにはいかないから、結局は買い取りに出すみたいだけど……
ヒューゴさんから順に、買い取りカウンターに傷ひとつないワイバーンの一部を『ゴトリ』と音を立てて置いていく。
僕が最後にワイバーン翼を置いた時には、受付のお姉さんの顔が引きつっていた。
「こ、これはどう見てもワイバーンじゃないですか!?」
受付のお姉さんの叫び声に、周りの冒険者達が集まってきた。たかだかワイバーンの素材に、なんでこんなに人が集まるのだろう?
「おい、あいつらは
「それよりも、あのワイバーンを見てみろよ! 全く傷がついてないぞ! どんな倒し方したら、あんな風になるんだよ!?」
「いや、頭の中心に穴が開いているぞ! ひょっとして、ワイバーンの頭を一撃で潰したのか!?」
「いやいや、Eランクのパーティーがそんなことできるのか?」
どうやら周りの冒険者達の会話から、ワイバーンがCランクの魔物だということがわかった。そんな魔物をEランクパーティーが、どうやら頭部への一撃で倒したっぽいからこんな騒ぎになっているのか……
【なあ、魔物のランクって何なんだ?】
そう言えば忘れていたけど、レイは人里離れた森の中で一人で暮らしてたって言ってたっけ。魔法や薬草の知識は膨大だけど、人間が作った決まりやシステムについては疎いんだよね。
(冒険者と同じように魔物も強さによってランクが決まっているんだ。基準は冒険者ランクになっていて、同じランクの冒険者がパーティーを組めば倒せる強さに設定されてるんだってさ)
僕がレイに説明している間にも、買い取りの交渉は続いている。
「それで、買取の方は大丈夫でしょうか?」
ヒューゴさんは、こうなることがわかっていたのだろう。周りの声を気にせず、諦めたように淡々と話を進めていく。
「あ、大きな声を出してすいませんでした。ワイバーンでしたら、買取の方は問題ありません。ただ、こんなにもきれいなワイバーンの素材を見たのは初めてだったので、少々驚いてしまいました。買い取り金額も普段より高くなると思いますよ!」
おお、買取価格が高くなるのはありがたい! 宿代も稼がなきゃならないしね。それにこの騒ぎだって、注目されてるのはヒューゴさん達だから、僕には関係なさそうだ。それに、明日になったら収まってるだろう。
その後すぐに、ワイバーンの査定が出たのだが、魔石と素材を余すところなく買い取ってもらえたようで、金貨の二十枚になった。おかげで一人金貨四枚も手に入れることができた。クエストの報酬と合わせて、一人金貨四枚と銀貨四枚なら十分な稼ぎだろう。
そして、僕は
なんか色々あったけど、優しい人達とパーティーが組めて良かったよ!
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