第4話 ハワード・ダグラスの回想 ⚪︎
~side ハワード~
わしの名前はハワード・ダグラス。ビスターナで伯爵の地位にある、アル・ローレン様に使える執事じゃ。
そんなわしが、アル様のお使いで辺境の村を訪れていたのが、つい数日前。無事用件を済まし、アル様の一人娘のメアリー様と護衛に雇ったクロムという若い槍術士を連れて、馬車でビスターナに戻る途中に事件は起きた。
お嬢様が用を足し……コホン、お花を摘みに行きたいと申したので、馬車を止めて周囲を警戒していたのじゃ。用が用だけに、あまりお嬢様の近くに行くわけにもいかず、できるだけ気配も察知しないようにしていたのが仇となった。
『キャー』という悲鳴が聞こえたので、急いでお嬢様の元へ向かうと、もう用を足したあとじゃった。まことに残念。じゃなかった、一体の大型の魔物がお嬢様に近づいているところじゃった。
その魔物はニンブルウルフと呼ばれ、フォレストウルフの上位種である。最低でもLv25は超えている危険なヤツなのじゃ。そんなヤツが、なぜこんな街道近くに現れたのかは分からぬが、『わしとクロムが二人がかりでも倒せない』そう思わせるほど強烈なオーラを放っておった。
わしはすぐにお嬢様に逃げるようにお伝えし、クロムと一緒にニンブルウルフとお嬢様の間に入り、お嬢様が逃げる手助けをしたのじゃが……。ニンブルウルフは『素早い』という意味の名前の通り、圧倒的なスピードで回り込み、我々の逃げ道を塞いでしもうた。
街道までの逃げ道を塞がれてしまい、いよいよもって戦うしかなくなったわしらは、覚悟を決めて魔物へと挑んだのじゃった。
しかし、案の定、わしの攻撃は素早いニンブルウルフの身体をかすることさえできず、逆にクロムの攻撃は時折当たってはいるが、その硬い毛皮に全て弾かれてしまっておる。
このままでは、ジリジリと体力を奪われ、ますます勝ち目がなくなってしまうのは、火を見るよりも明らかじゃった。クロムに至っては、素早さ重視のため、わしのように全身を鎧で覆っていないから、躱し切れなかった爪にやられ、あちこちから血を流していた。
せめてお嬢様だけでもと思うたが、わしらが倒されるのも時間の問題で、そうなった時お嬢様一人で逃げ切ることが難しいこともわかっておった。
いよいよもって、もうダメかと思ったときじゃった。どこからか、どんでもない高威力の炎魔法を放ったものがおったのじゃ。その威力は凄まじく、あのニンブルウルフを一瞬で跡形もなく消し去ってしまいおった。だが、炎が収まった後に辺りを探してみたのじゃが、誰も見つけることができなかった。助けていただいたお礼を言いたかったのに残念じゃ。
~side ライト~
【おい、なんで逃げるんだよ。せっかく綺麗なお嬢様とお近づきになれるチャンスだったのに……】
僕が逃げるようにその場を去ったことに、思春期賢者が抗議の声を上げる。
(いや、無理でしょ! 森をあんなにしちゃったし、それに僕があんなに綺麗な人とまともにしゃべれるわけがないよ!)
【そこはあれだ、気合いで何とかするんだよ!】
全くアドバイスにすらなってないアドバイスをかましてくる脳内賢者は放っておくとして、僕は先ほどの魔法について思い出していた。魔物の強さがどのくらいかはわからなかったけど、それなりに強うそうな大人が二人がかりで苦戦していた魔物を倒すことができた。
つまり、先制攻撃さえできれば僕には魔物を倒す力があるということだ。
(!? そうだ! さっき魔物を倒したからレベルが上がってないかな?)
【お、そう言えばお前さんのレベルは1だったな。それなら少しは上がってるんじゃないか?)
早速、ステータスを確認してみると。
ステータス
名前 :ライト
性別 :男
種族 :人族
レベル:5
ジョブ:なし
クラス:なし
職業 :なし
体力 :52
魔力 :1092
攻撃力:50
防御力:49
魔法攻撃力:1978(1319)
魔法防御力:1881(1254)
敏捷 :55
運 :30
オリジナルギフト:スキルメモリー
ユニークスキル
無詠唱・並列思考・消費魔力減少・魔力回復速度上昇
魔法攻撃力上昇(中)・魔法防御力上昇(中)・アイテム効果アップ
ラーニングスキル
炎魔法SS Lv30・風魔法SS Lv30・土魔法SS Lv30・雷魔法SS Lv30
水(氷)魔法SS Lv30・闇魔法SS Lv30・光魔法SS Lv30・聖魔法SS Lv30
重力魔法SS Lv30・時魔法SS Lv30・空間魔法SS Lv30・錬金術SS Lv30
(おお、レベルが5になってる!)
【おほ、4つも上がったのか!? 1からとはいえ、あの魔物そこそこの経験値を持ってたんだな!】
レベルが4つ上がり、ステータスもアップしているのだが。
(あれ? ステータスが結構上がってる。確か、ジョブがないと上がり幅は1レベルにつき0~5くらいだったような気がしたけど……)
僕がお父さんから聞いた知識だと、こんなに上がるはずはないのだが。
【それはあれじゃないかな。俺のジョブが賢者だったからだな。賢者は物理系のステータスが10,魔法系のステータスが20の上がり幅で固定だったから。なるほど、このスキルメモリーはステータスの補正も記憶してくれるのか】
(!? えっ? それじゃあ、ジョブチェンジを繰り返したらスキルだけじゃなく、ステータスの補正まで増えていくのかな?)
【あー、その可能性はあるな。まあ、重複はしないだろうから、そのステータスの中で一番上がり幅が大きいものが適用されるんだろうが】
(えっ、えっ、それじゃあ物理系のステータスも高くなる可能性があるのかな?)
【まあ、俺の考えが当たっていればそうだろうな】
何ということでしょう。剣士や斧戦士のような物理系のジョブのステータス補正をゲットできたら、僕が剣を片手に魔物を倒すことができる日が来るかもしれない。
(これは、僕を馬鹿にしてきた同級生達を見返せるかもしれない!)
僕はそんな期待を胸に、軽くなった足取りで隣町を目指すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます