第27話 明かされた正体!
世間が夏休みで浮かれている中、大会出場者たちには緊張感が
何しろ今日は本戦一日目。
今まで費やしてきた努力が、
そんな不安を誰しもが抱え
ぞろぞろと入場してゆく観客の
そんな彼らとは違い、シード枠の
彼はこの暑い中で汗を
と、その姿を見つけた
「……ああ」
と生返事をした後、自動販売機へと向き直る。
そして、ブラックコーヒーを選び、手にするなり平然と飲みだした。
それに気付いた
だが、
当然、
「何飲んでんだよお前!? 間違って買ったのか? そうだよな!?」
「……? いや? 毎日飲んでるが?」
そう答えた
「マジで言ってんのかよ……。普段からストレートティー飲んでる
「落ち着くのに丁度いいぞ。お前も飲んでみろ」
「お断りだな! 試合前に落ち着いていられるか! こういう時は炭酸飲料一択! 一番キツそうなのをな!」
そう言って
「く~!
不敵な笑みを浮かべ、自動販売機を顔で指し示す
対し、
当然、その態度は
「お前! 炭酸バカにしてんのか!?」
「してない」
「じゃあ何だその態度は!?」
「別に?」
「ああん? お前……さては炭酸飲めねえな?」
「飲める」
「本当か?
「お前こそ、こんな下らないやり取りで緊張を
「なっ!?
対し、
「心配するな。オレと
「だから、緊張してねえって!」
「じゃあ、その震えは何だ?」
「
「足で
「
「両足で
「あー、もう! うるせえ! オレは先に会場行ってるから、お前はそこでのんびりしてろ!」
そう
その十分後……。
今度は花織がやって来た。
「おはようございます」
「……ああ」
「結局あれから
「来たら来たで、無視するだけだ。お前は自分の心配だけしていればいい」
「そうですね……。私、勝ち進める自信ないです」
対し、
「お前に教えたのはこのオレだ。今日までずっと特訓してきただろう? それでもまだ不安か?」
その言葉に、花織の表情へ
「そうですよね。私はもう初心者じゃありません。
「ああ、楽しませてくれ。オレは客席で見てるから」
「はい! 行ってきます!」
元気よく返事し、花織も会場へと
――数十分後。
会場にスポットライトが当たり、開会のファンファーレが鳴り響いた。
直後、入場する出場者たち。
その中でも
一人はコスチュームに身を包んだアイドル。
それと呼応するかの
やたら色々な光り方をするペンライトと、キャンディちゃんラブと書かれたウチワを振っている。
残り二人は、カラフルなパンダの着ぐるみ男と、宝石を散りばめた青いドレスを着た金髪の女子。
他の出場者から痛々しい視線を向けられるが、本人たちは気にしていない。
それどころか、観客へと猛アピールをする始末。
良くも悪くも客席はざわつく。
こうした
開会の
「本日行う一回戦目では、参加者総勢五十人から六名の準々決勝への進出者を決定! 相手を選んでバトルしていただき、三敗した方から脱落となります。
始まりを告げる合図。
それと同時に、
バトルに勝っても、準々決勝に進むためのアドバンテージになるわけではない。
つまり、周りの
誰もがそう考え、
「おい、あいつになら勝てるんじゃないか?」
誰かがそう声に出した。
その指さす方向にいたのは花織。
周囲の視線が
次の
簡単な話だ。
じっとしていれば、誰かにバトルを
それなら、確実に勝てそうな相手と戦っていた方がいい。
その考えに
直後、花織へバトルを
多くの人は、ただ弱者を狩るためだけに並んでいる。
集団で一人を相手取る構図は、さながらイジメのよう。
その
「かっこ悪いな、お前ら。たった一人に対して
「ああ?」
「ダサくて見てられねえっつってんだ。お前らさ、優勝しに来たんじゃねえのかよ? 他の奴と戦うのがそんなに怖いか? 勝つ気がねえならさっさと帰れ! この
これで花織の負担も半減した。
だが、たった二人で四十人以上相手にするのは大変。
客席で見ている
と、その背後から……。
「やあ、
ギョッとして振り向いた先にいたのは
彼は、あろうことか
当然、
「待ってって。話をしに来ただけだよ。ほら見て。心配しなくても、
会場を指さす
だが、その光景の意味はわからず……。
「あいつ、何やってんだ……?」
そう
「参加者に混じって、過度な集中砲火やバトル
今度は違う場所を指さす
そこにいたのは先程の悪目立ち三人だった。
彼女らは「弱い者イジメは許さない!」など、並ぶ参加者を口々に批難しバトルを
そして、バトルが始まると……魔力を数えるカウンターとして、それぞれに不可思議な物を取り出した。
アイドルのキャンディは
そのあまりの異常さに対戦者たちは非常識だと
それどころか……。
「あら? ご
「そうよそうよ! 知らないの?」
などと
その声は観客席までは届かないが、
そして、
「何だあいつら? ふざけてるのか?」
と、
対し、
「いや、あの三人は真剣だよ。どっちかと言うと……ふざけてるのは
そう言って見つめる先……早くも一試合が決着した。
あまりの早さに出場者たちはざわつく。
その内の一人……四十代の男が
「あ、あいつは……!」
思わず
前に並ぶ少年がそれに気付き、振り返った。
「どうかしたのかよ? おっさん」
「……今の試合、最初から最後まで見ていた。あの鮮やかな速攻、勝った時の
「は? 誰だよそれ?」
「……二十年近く前の話だ。当時はまだカードゲーム
話を聞いた少年は、
目に映るのは生き生きと戦う姿。
盤面を
数分後……。
またしても
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