第26話 暗躍する影
予選終了から約一か月後。
その日も
いつも通り、特訓に夢中の三人。
と、そこへ……。
「
不意に、遠くから
客の視線を浴び、全力
この二人が
だが、高校生にもなった我が子を追ってカードショップまで来る親などそうそういない。
そんな彼の心境も
「
「そうだぞ
顔を真っ赤にして
その様子を見て、花織は
「……あの」
そう一声出した。
だが、その
「これは親子の問題だから、他人は黙ってなさい!」
激しい
思わず
しかし、見過ごすことなどできない。
改めて声を出そうと勇気を振り
同じく
だが、その様子に気付いた
そして、冷ややかな視線を両親に向けると……。
「いい加減にしろよ?」
静かに、そう
両親の表情がさらに険しくなるも、
「オレはもう、あんたたちを親だと思ってない」
「何だと!? 親に向かって何だその口の
「だから、親だと思ってねえって言っただろ? 話を聞けよな本当に……。お前はオレにこう言ったよな? 嫌なら出てけと。世話になるなと。言われた通り、出てってやったのに……。一体何の不満があるんだ?」
「お前には養育費をいくら使ったと思ってんだ! だったら金を返せ!」
「あのな? 養育費って子が親に返す義務ねえんだよ。お前こそ、
「親が子を
「自分の感情で怒ることを、
「ああ好き勝手言ってろ! お前が誰を敵に回したのか、いつかわかる時が来るから!」
「それ言えば論破したことにはならねえんだよ」
「ああ、もう好きにしな! いい! お前の言い分なんて一切通らないから!」
まともに話も通じない相手に、
その間も、父親は
お前なんか一つも正しくない、と。
ゲームなんて下らないものにばっかり熱中しやがって、と。
浴びせられる
「それは聞き捨てならないね」
横から
そして、
「またお前か……。いつからいたんだ?」
「ついさっきだよ。せっかく助けに入ったんだから、そんな顔しないで。ね?」
「……お前にどうにかできるのかよ」
「任せてよ。それにほら……
そう言って
彼らは
「お前が
意味がわからず口をぽかんと開けたまま固まる
数秒後、その連中を指さし
「お前が呼んだのか?」
その問いに、思わず
「違う違う! 何でそんなことする必要があるのさ!?」
「……まあ、お前は
「ちょっと! その
「いや、こいつらの相手もする気はないぞ? オレは試合の申し出を全て断ってるんだが?」
そう言いながら団体へチラリと視線を向けると、不敵な
「負けるのが怖いのか?」
「ほう……?」
「オレは今、虫の居所が悪い……。
その様子を
「あーあ、オレ知らね……」
と
そして、着くなり映像を記録した
映し出されたのは、
ライフ2からの鮮やかな逆転劇を見せた
「ゲームは下らないと、そう言いましたね?」
「ああ言った。ゲームなんて、頭も使わずにただ手を動かしてるだけだ」
「ゲームと一口で言っても、いろいろあるんですよ? 手を動かすだけというのは、たぶんアクションかシューティングをイメージしてるんじゃないですかね? もっとも、それらも距離やタイミングの計算、動きの予測や
「物は言いようだな」
「本当にそうでしょうか?
「だから何だ!? それが何になる?
「
そう言って
「
「それがどうした? 医者になれば、もっと多くの人を救える!」
「そんなに医者にさせたいんですね……。自分がなれなかったからですか?」
「はあ!?」
明らかに、父親は声を荒げた。
「君と話していても意味がない! 日を改めてもう一度来る。失礼させてもらおう!」
そう告げて去ってゆく両親。
直後、それを追うように
その去り
「覚えとけよ! 今は勝てなくても、本戦でリベンジしてやるからな! 出場権は
と、捨てゼリフを残した。
それを聞いた
「終わったなあ、あいつら……」
そう一言、
こうして、
――そして、これは
「……あ、もしもし。キョウさん?」
「はい、お母様。
「それが、全然聞く耳を持ってくれなくて……。それに、
「そうですか。では、また新たな作戦を考えますので、少々お時間いただきますね」
「はい。お願いします……」
切れる通話。
笑うキョウ。
「
向けられた視線の先で、アヤメと呼ばれた女子が口を
「私は許せないわ。バカな奴がのうのうと生きているのが……」
「そうか……。じゃあ、あいつら好きにしてもいいよ」
「……見るのも嫌だから、いい」
そう言って、アヤメは部屋を出た。
――それから約一週間後。
再びショップに母親が現れた。
ドアを開けるなり
その姿が目に入り、
わかりきっているからだ。
何度言っても
聞く耳を持たぬ相手だと。
変わりようがない……。
そう、
だが、次の
「ごめんなさい!」
母親は目の前で土下座した。
予想外の出来事に
数秒後、母親はゆっくりと顔を上げ……。
「私たちが間違っていたわ。本当に、何て言ったらいいのか……」
だが、簡単に許せるわけもなく、
「何も言わなくていい。もう、来ないでくれ」
「……あのね、お父さんも謝りたいって。でも、会いたくないって言われそうだからって来なかったの」
「ああ正解だ。顔も見たくない」
「……大会、見に行きたいらしいんだけど」
「来るなっ!!!」
その声量は、
あまりの勢いに、母親は
母親は弱って、助けを求めるべく花織へと視線を向けた。
だが、返されたのは厳しい視線。
そして……。
「
そう静かに、しかし強く言い放った。
トボトボと帰ってゆく母親。
その姿が見えなくなると、
「ずっと、これが書けなかったんだ……」
そう言って、そこへ記入した文字は……第一志望にプロゲーマー。
ただその一つだけ。
その用紙を見つめる
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