第20話 パズルの攻略法
翌日、花織は
先に来ていた
案の定、花織は
「す、
対し、
「設定された状況下で、与えられたクリア条件を満たす問題……と言ってもわかりにくいだろう。実際に例題を出す」
レッドドラゴン。
高いライフとアーマー(ダメージ軽減効果)を持つ、強力なレプリカだ。
「今、オレの場にはこいつがいる。このターン中に、これを捨て札へ置くのがクリア条件だ。ただし、使える魔力は水属性3つだけ。手札は好きなカードを何枚でも使っていい」
「え、えええ!?」
花織は
水の魔力3つだけでレッドドラゴンを倒すなど、
ただでさえ、水属性はダメージを与えるカードに
しかも、レッドドラゴンのアーマーを突破するには、
数分後、花織は早くもギブアップ。
「全然わかりません……。どうやっても倒せないように見えます」
「……そうだな。倒せ、とは一言も言っていないからな」
「えっ!?」
花織は思わず
が、何を聞き返せばいいのか。それさえわからない。
あまりにも意味がわからず、言葉を失っている。
「もう一度言う。オレはこのカードを捨て札に置けばクリア、と言った。倒せ、とは言っていない。つまり、場から捨て札へ置かなくてもいいということだ」
「場からじゃなくても……。あ!」
花織はハッとし、2枚のカードを取り出した。
「水のカードなら、捨て札へは置けなくても手札に戻すことならできます! まず、ウェーブを使用して、それから残りの1魔力でデリートを使用します!」
「正解だ」
花織は
「
「この問題のポイントは、水以外のカードも使えるという点だ。水の魔力しかなくても、無属性しか消費しないカードなら使用可能だからな。このように、出題者は状況や言葉で
「15体のレプリカを並べた。全てライフは1で、特に効果も気にしなくていいものばかり。これを、光のカードを3枚使い、このターン中に全滅させればクリアだ」
「ええと……今回は光のカードという条件があるんですね」
花織は光のカードを取り出し、1枚1枚確認してゆく。
まず探したのは全体ダメージを与えるカード。
しかし、そのようなカードは光属性には存在していない。
次に、1枚で5体へダメージを与えられるカードがないか、探し始める。
15を3で割って5。
しかし、そんな単純な話なわけがない。
だが、花織はカードゲーム初心者なので、それに気付かずカードを
「うーん……。5体を倒せるようなカード、ありましたっけ……?」
「さっき言ったことを思い返してみるといい。出てくる数字は十中八九ミスリードだ。そもそも、同じカードを3枚使うだけでは、パズル問題とは呼べない。まずはそこに気付くところからスタートだ」
「なるほど……確かにそうですね。では、どうすれば……」
「組み合わせ次第でたくさんダメージを出せるカードを探してみろ。効果が変動するカードは、使い方次第で
「それなら、さっき見かけたカードが……。ありました!
花織の勢いが失速した。
天国の
1体だけ倒せずに残ってしまう。
頭を抱える花織。
「後1体、どうすれば……」
「最大効率を出すことを考えるといい。天国の
「一度に……ッ! わかりました! 2枚使うのは
「正解。この考え方は実戦でも使える。天国の
新たにカードを置く様子もない。
そして、まっさらな場を前にし、口を開く。
「最終問題。オレはライフ4。手札も場も0だ。対するお前は、手札にインフェルノブリンガーが2枚と、任意のカードが1枚。チャージ済みの魔力は6以上だが、そのほとんどが消費済み。つまり、このターン中は使用できない。水1魔力だけを使って、そのインフェルノブリンガーを捨て札に置くのがクリア条件だ」
「水1魔力だけで……」
……と、1枚のカードがその目に
「あ! 取捨選択。このカードですね!」
「ああ、正解だ」
「わあ……! 自力で解けると嬉しいです!」
「まあ、この問題は出題
「難しそうです……」
「安心しろ。パズルは考え方さえ身に着ければ怖くない。オレがコツを教えてやる」
「それでも解けなかった時は……?」
恐る恐る問う花織。
その不安げな
「それは、お前が教えを破った時だけだ。オレが教えた通りに考えれば、必ず解ける。その思考手順を
「もちろん信じます! 問題を解く自信はありませんが、
「そうか……。なら、今から言うことは絶対に忘れるな」
「はい!」
良い返事を合図に、特訓の日々が始まった。
――そして、梅雨空の
場所は都内の某大学。
参加人数は数千人。
だが、これもほんの一部。
予選は各都道府県で行われているため、総参加人数はさらに多い。
とは言っても、都内が特に大人数なのもまた事実。
その大勢のライバルの中、あまりの心細さに花織は震えていた。
何しろ今日は一人きり。
だが、離れていても、心の支えであることに変わりはない。
特訓の日々を思い返し、花織は勇気を振り
「……大丈夫。私は一人じゃない」
そう自身を
そして、配られた専用の電子機器の動作チェックを終え、準備は完了。
いよいよ、予選試験が始まる。
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