第13話 因縁の相手
特訓の合間、次のテーマ図を作っている
「本当によかったのか? ゴールデンウィーク中ずっと特訓で」
「おうよ! 結構楽しいし、全然問題ねえな!」
「……金持ちなら旅行とか行くイメージだけどな」
「んなもん飽き飽きだぜ」
そう吐き捨て、
そこに悪気など
が、
しかし、
「何がおかしいんだよ? 別に変なことは言ってねえだろ。バカにしてんのか?」
などと、不平を並べ出す。
すると、目に映ったのは生き生きとした表情。
言わずとも伝わってくる彼女のやる気に、
「……心配するまでもなかったな」
「はい!」
「そういえば、花織は何で優勝したいんだ? カードゲーム経験者でもねえんだろ?」
「お母さんが病気で、治療費を用意できたら心配事が少し減るかなって……」
「んぐッ!」
想定外の重々しさに思わず
そして、花織への
「
「いえいえ、いいんです! 事情を知らなかったのはお互い様ですから」
「いいや……良くねえ。お前がそれで良くても、オレが納得できねえ! もしオレが優勝したら、賞金はくれてやらぁ!」
「ええ!? でも、ご両親が……」
「説得してやるさ! 優勝までしたんだから、こっちの話だって聞いてもらうぜ!」
声高々に宣言し、豪快に笑う
そこへ……。
「おい」
短い言葉で
声がしたのはテーブルの真向かいから。
言うまでもなく、そこにいるのは
「何だよ
「誰が優勝するって? いや、違うか。優勝までしたんだから、と、まるで完了形のようにお前は言ったな?」
「面倒な奴だな本当に! 仮の話だ! 仮の!」
「仮にでも、このオレに勝てると?」
「ああもう、本当に面倒だな」
下らない言い合いをする二人。
と、その時!!!
「やっと見つけたよ、
不意に横から
聞き間違うはずもない、その声を。
口調こそ
その声は
にもかかわらず、耳にぞわりとした感触を残す程、はっきりと響く。
それは、
まるで
その声にハッとし、振り返った先に
一方の
振り向いた際に半歩飛び
見開いたままの目と、大きく開けた口。
冷や汗。
「久しぶりに会ったというのに……そんなに僕のことが嫌い?」
数秒後、
「……何しに来た?」
「大丈夫、すぐに済むから。僕は君に伝えなきゃならないことがあって来たんだ」
「……言ってみろ」
「ウィザーズウォーゲームの大会、今回は出ないでもらえるかな? また君に嫌な思いをさせたくないんだ。僕が大会に出るのはこれが最後。だから、今回だけ……」
「……嫌だと言ったら?」
「今日一日、じっくり考え直してほしいかな。明日また来るよ。それじゃ……」
その後ろ姿を見送った後、
「何だよあの言い
その様子に、不安を
「今の奴、天才ゲーマーの
「
口々に問う二人。
対し、
「……どうしても聞きたいか?」
だが、負けじと二人も強く
語りながら、その
――五年前のこと。
その
出会いはゲーム大会。
当時、
歳が離れていたものの、
なぜなら、男は
次のような調子で……。
「君、すごいね! こんな素晴らしい試合、見たことないよ! 将来はやっぱりプロゲーマー?」
「え、いや……。親が厳しいし……」
「えー!? もったいないよ! こんなに才能
単純な言葉。
しかし、
なぜなら、
こうして、彼らは親しくなった。
だが、それは男の
……名乗ったが、それは偽名。
しかし、花織たちに語っている現在も、
キョウは、
そんなことを続けていたある日。
キョウは話を持ちかけた。
「ねえ、この大会出てみなよ! 新しくリリースされる
「う~ん……。他のゲームが気になってるんだけど、どうしよう」
「このゲーム、絶対に話題になるから! ね!」
「……まあ、そう言うなら」
こうしてまんまと引っかかり、
そして当日。
同じく大会に参加していた当時まだ無名の
結果は
手も足も出ずに一方的な負け。
そして試合後。
キョウのもとへと戻った
「がっかりだよ。何あれ? あんな
そう告げて去ってゆくキョウ。
あまりの
そのまま長らく放心していると……。
「気にする必要ないよ」
そして、ゆっくりと顔を上げた
「……さっきの、友達とは呼べないと思う。これで正解だったんじゃない?」
「……は?」
「いや、だから……」
「圧勝したからって調子に乗ってんじゃねえ! 何様のつもりだ!? 上から目線で言いやがって! そんなに自信あるならお前、オレともう一回勝負しろよ! 今度こそ……」
「いいけど、何度やっても同じだよ。僕に攻撃は通らない」
「ッ!? いい加減にしろよテメェ! その自信へし折ってやる!」
こうして、二人の再戦が始まった。
が、宣言通り、何度やっても
ただただ、一方的に負け続ける。
何度やっても……。
そして、トドメに
心を読める、と。
さらに、対戦中の
そのことがきっかけで
前よりも暗い性格に
それだけでない。
彼にとって
それさえも悲劇を思い返すきっかけとなるため、しばらくは触れることすらできなかった。
二年後、対人でなければゲーム可能なまでには回復したが、
彼にはもう、プロゲーマーとして表舞台に出る気はすっかりなくなっていた……。
――以上が今も尾を引く
そんな中、
「おかしいだろ? キョウはともかく、
「……ないですよ」
口を
数秒の沈黙の後、その口が再び開いた。
「……おかしくなんて、ないですよ。確かに、そのキョウって人は最低だと思います。でも、
その
自分のことのように号泣し、顔を真っ赤にする花織のその姿に……。
そしてさらに続ける。
「間違ってますよ……。そんな冷たい言い方じゃなくて、もっと他にあったと思います。さっきだって、
言い終えた
その一部始終を見守っていた
しかし、
一秒
それでも
「なあ! どうすんだ
問い詰める
「……もちろん、受けて立つ。けど、お前たちは見に来るな」
「何でだよ!?」
「……嫌だからだ」
「ああっ!?」
「また
対し、
「お前、まだそんなこと言ってんのかよ? この
「……どうしても見られたくないなら、見に行きません。けど……もし負けた時は、一人で
花織たちの温かい言葉が
数秒後……。
「好きにしろ」
とうとう
だが、声のトーンは温かく、表情は
その
「おう! 見守っててやるからな!」
「大丈夫です!
二人の応援に対し、
しかし、彼の横顔を見れば
その
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