第12話 贖罪の一戦
突然の申し出に
だが、しばらくして
「そうか、そうだよな……。いいぜ。前と同じデッキを使うから、
「え? えっと……」
発言の
その予想外の反応に、
流れる沈黙の中、
そして、以前の
「使うか?」
「……」
花織はそれを手に取り、じっと見つめる。
脳内を
その中に自分本位のことなど一つもなく、あるのは二人への
数秒後……彼女は首を横に振ると、デッキを返した。
「すみません。せっかく作っていただいたんですが……」
「いや? 好きにしろ」
たったそれだけの返答。
言葉だけなら冷たく聞こえるが、花織はその表情を見てわかった。
なぜなら、その目に映ったのは
花織は安心し、
そして、意を決して
「……あの! 自分のデッキを使ってもいいですか? 生意気に聞こえるかもしれませんけど、
花織なりの意思表示。
対し、
「別に構わないぜ。こっちには拒否権なんてねえしな……」
「え?」
「何でもねえ。気にすんな」
「……はい、わかりました」
花織は教わったことを思い返しながら、低コストのレプリカを並べ着実に攻める。
火吹きのヴォルケーノをサボタージュで阻止し、業火にはカウンタースペルで対処。
まだ
一方、
しかし、彼は全く気にしていない。
いや、気にしてないと言うよりは、そもそも戦意がなく、ただ作業のように手を動かしている。
……しばらくして、彼は静かに
「どうだ? これで満足したか?」
「……え?」
キョトンとする花織。
対し、
「ん? 嫌な思いをした分、やり返したいんじゃねえのか? それか、トラウマを
「ち、違います! あれから私もいろいろ考えたんです。私、カードゲームのこと全然わかってなくて、対戦相手になってくれた
「……ッ!」
自分を責めるどころか、
そしてさらに、
「さっき、
問いかける花織の表情は真剣。
しかし、その
全て許してくれるような、そんな優しさに……。
しかし、それでも
「聞く必要ねえよ。下らねえ理由さ……」
「下らない悩みなんてありません!」
まるで時が止まったかのように固まる彼へと、花織は悲しい
「どんな小さな悩みでも、本人にとってはどれだけ苦しいことか……。 もし、どうしても言いたくなければ無理にとは言いません。けど、もし話してくれるなら、絶対に笑ったりしません! 責めたりもしませんから……!」
その言葉は魔法のように
数秒後、彼の重たい口から言葉がゆっくりと
「昔な、オレの両親は助けた人から恩を
そう言って
しかし、花織からは何も言葉が返ってこない。
数秒後、不思議に思い視線を向けると、目に映ったのは泣いている姿。
その理由がわからず、
「お、おい。何でお前が泣くんだよ?」
「辛かったんだな、と思って……」
「そんな、言う程辛くはねえよ。それに、だからって何でお前が泣くんだよ?」
「だって……悲しいですよ、そんなの」
心の底から悲しみ、涙する花織。
それを見て
「あーあ。完全に否定されちまったな、こりゃ。何が
「そんなこと……ないですよ」
「……オレの完敗だな」
その後ろ姿を見て花織は察し、優しく
「よかったです、
「礼を言うのはこっちだ。ありがとな」
顔は
そして、いつになく
「それともう一つ。
「好きにしろ」
背中を向けたままの
だが、それでも
「ああ、そうさせてもらう。しばらくの間、お前の戦いぶりを見させてもらうぜ。間近でな!」
そう言って
それを聞き、花織は目を見開く。
「それって……!」
「オレもカードゲーム仲間に加えてもらいたいんだが、嫌か?」
「嫌だなんて、そんなわけないです! 嬉しいです!」
花織は目を
それを見た
「決まりだな! わからないことがあったら
ようやく戻った
しかし、以前の
だが、その発言が
「ほう? オレより上手く教えられるとでも? 大した自信だな……」
「うるせぇ! お前が来れない時だってあるだろ? そん時は
荒々しい口調で返す
しかし、三人共その表情はとても
こうして、
――そして数日後。
その日もいつも通り、三人はカードショップ内で特訓をしていた。
まさに今、ショップに向かって足を運んでいる
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