第11話 優しさ
彼女は気まずさのあまり
経験上、彼にはこういう時いい思い出があった
大抵は非難を浴びる
そして、その居心地の悪さを
その間、ずっと流れる沈黙。
数秒後、
「……いたのか」
ぼそりとそう
そのたったの一言でも花織は
無理もない。
いつ破門にされるかわからない彼女にとって、
それでも重たい口を何とか開き……。
「……はい」
と、ようやく声を
しかし、問答は続く。
「いつから?」
「……バトルの途中からです」
「そうか。待たせて悪かったな」
「いえ……」
「それじゃ、始めるか……」
花織は対面に移動し、浮かない顔でそれを見つめる。
「カードゲームにおける最も基本的な考え方に、
「え、ええと?」
数秒後、流れる沈黙を断ち切るように
「オレの場にいるベビードラゴンはパワー3、ライフ1。お前の場のカゼスズメはパワー1、ライフ1。チャームマーメイドはパワー1、ライフ3。どちらで攻撃した場合でも、反撃ダメージを受けるから相打ちになる。ここまではルールとして教わったか?」
「はい、
「そうか。なら、これが次のステップだ。どちらで攻撃しても相打ちだが、カゼスズメで攻撃した方が、より強い味方を生き残らせることができる。言い方を変えると、カゼスズメのライフ1に対してベビードラゴンのパワー3が
対し、花織はゆっくりと
「確かに。それならパワー1でも足りている、ということですね」
「ああ。逆に、オレの場にいるのがパワー1ライフ1のレプリカだった場合、今度はチャームマーメイドで攻撃すれば
「難しそうです……」
「まあ、すぐに身につけろとは言わない。今後、少しでも意識すればその内慣れるだろう。ところで……」
そして……。
「どうかしたか?」
解説中も続く重たい空気に、とうとう
思わず花織が目を
「え、ええと……」
言い
「
「い、いえ! そういうわけじゃないです!」
だが、
「本当にそうか? あまり気分がよくないように見えるけどな……」
「ええと……」
花織は
数秒後、意を決し……。
「すみません!」
まず最初に勢いよく頭を下げた。
そして、ゆっくりと顔を上げ、弁明を続ける。
「不快な思いをさせたのなら謝ります。けど……。けど! 本当にそうじゃないんです!
「……けど?」
「けど、
花織が一気に話し終えると、
「……お前、こういう時はオレみたいな
「そんなの当たり前じゃないですか!
「……変わった奴だ」
そう
そして、真剣な表情で見つめてくる花織へとまっすぐに視線を
「好きにしろ」
たったの一言、そう返した。
とても短い言葉。
だが、それはいつものぶっきらぼうな言い方ではなく、
その思いが花織にも伝わり、満面の
「はい! 明日、もしまた来たら声をかけてみます!」
「まあ、がんばれ」
そう言って
その後は
そして迎えた次の日。
それに気付いた
だが、
なので、
しばらくして、一段落を迎えた時のこと。
隣のテーブルで待つ
しかし、彼は
気まずい空気の中、花織は声をかけようと勇気を振り
そして……。
「あの……」
やっとの思いで声を出した。
不意のあまり、
直後、その表情が
「……悪かったな。ここにいられたら、そりゃあ嫌な気分にもなるよな。用が終わるまで待って、もう一度リベンジしようと思ったんだが……。先客がいたことだし、出直すとするぜ」
そう言って苦笑すると、
その背に向かい、花織は思わず手を
「待ってください!」
呼び止める声に、
花織が自分に一体何の用があるのか。
一方、花織は花織でどう声をかけたものかと迷っている。
十数秒後、悩んだ末にようやく口に出した言葉は……。
「あの……もしよかったら、私ともう一度バトルしませんか?」
まさかの再戦の誘い。
予想外の出来事に、
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