タンテイ

信号機。三色の光で身体の進退を決めるもの。横断歩道。歩行者が歩く場所。白黒白黒。うまい考え方はできないが、連想できることはあまりない。渡ろうとすると車が出てくる。前を遮る。連想できるのはあまりない。1つぐらいしかない。簡単な答えが出る。言われなくても誰だってわかるだろう。進むのが怖い。ただそれだけだ。有り体に言えば将来の不安だ。見たくないから蓋をしている。考えをシャットアウトしている。小市民的な考え方しかできない。自分の未来を決めることで狭めたくない。無限の可能性を。大学生になっている時点で狭まっているのだろうが。社会に出るまでのモラトリアムを得るために。モラトリアム?「モラトリアム…。」猶予期間、準備期間。人生の間隙。隙間。だから隙間か。ここは私の大学生活。私のモラトリアムそのものなのかも知れない。『それを君は押し込み、しまい込み、隠しこんだんだね。ポケットに。』「そうなのかもしれないが、こんなことでいいのか。正直いつも少し胸に引っかかっているだけのものだよ。」『いいんだ。正しいか正しくないかじゃあない。君だけの間隙なんだから、君が解決すればいいんだ。周りに求める物じゃない。さあ、信号をわたるんだ。しっかりと手を挙げてね。』「そんなことして平気なのか。さっきみたいにいきなり車が出てこないか?」『大丈夫だ。私が進むとしっかり表示すればね。元の世界に戻ると意思表示すれば。』そうか。そうだったのか。ここから出るではなく、元の世界に戻る。巻き込まれたのではなく自ら入り込んだ、作り出した。認識というのは何とも。『結局はとらえ方だ。今回は君に怪奇が偶然かみ合っただけとも考えられる。もう、怪奇と遭遇しないことを願うが難しいだろう。君は認識してしまった。知ってしまった。見えていなかったものを認識してしまった。簡単にわかりやすく言うと、告白されると気になっていつもより目につくみたいなものかな。』「今後はまだわからないこともあるけどありがとう。そういえばあなたは一体だれなんだ?」『私かい?世界に認識されていないもの。0であり0でないもの。まあ、怪奇探偵とでも認識してもらっていいよ。』礼を言い私は一歩足を前に踏み出した。手をしっかり挙げて。世界が色づいていくように感じた。後ろから探偵はつぶやいた。『電話番号をポケットに入れておいたよ。いつでも相談依頼をしてくれ。また会わないことを望むが、まあ。またね。』

横には天良がたっていた。どうやら帰ってこれたようだ。少し疲れた。もうこんな体験をしたくはない。違和感がぬぐえないが。

天良は思いついたかのように私に話しかけた。

「そうそう。友達から聞いたんだけどね。学校内に開かずの扉があるんだって。そんなところあったらおもしろいよね。」

私は苦い顔をするしかなかった。こういうことか。いつもはデマや噂と切り捨てるが認識をしてしまった。やれやれ。


億劫に思いながらも歩を進めた。一歩づつ前に。


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