3.

ジトー

朝日に照らされながらするおしっこはいつも凄く恥ずかしい。

なぜなら毎日おしっこの先にはこうちゃんの顔があるからだ。

こうちゃんは毎朝私のおしっこを飲みたいと言っていつも私の股の間に潜り込んでくる。

潜り込んでくるこうちゃんの姿は本当に可愛い。もう愛おしくてしょうがない。そう思っているうちに尿意を催し、こうちゃんに言われるがままに立ち上がってパンツを下ろした。こうちゃんはそうして私が脱いだパンツを目の上に乗せる。

「視覚をなくした方が味に集中できるんだ」

こうちゃんが満面の笑みでそう言ってきたのを今でも鮮明に覚えている。

私のおしっこの味に集中したい人がこの世にいるんだ。そう思った。そして考えているうちに嬉しくなってきてしまった。女の子として綺麗で可愛くあり続けるために努力し続けてきた人生だったため、その瞬間に肩の荷が下りたのを痛烈に感じた。

私の汚い部分を愛してくれる人がこの世にいるんだ。その実感が私を天国へといざなってくれた。そこから毎朝こうしてこうちゃんにおしっこを飲んでもらっている。

ジトーーーー

私のおしっこがこうちゃんの舌の上に当たっているのが聞こえてくる。

「あーーーーー」

こうちゃんが高揚している時に出す声だ。この声に私は密かに濡れてしまう。

「ちょっとそんな声出さないでよ。恥ずかしいじゃん」

「あーーー、おめん、えも、いぅぉおうあん」

私のおしっこを口内に溜めながら答えるこうちゃん。これを聞くと私は胸の高鳴りを抑えられなくなってくる。

「ねぇ~、何言ってるか分かんな~い」

ジトーーーーっ

今日のおしっこは昨日より濃い黄色だ。こうちゃんの口内から溢れそうなくらいに溜まっている。

おしっこをし終えると、いつも羞恥心が戻って来る。そして私はすぐさまトイレに駆け込もうとするものの、素早くこうちゃんに腕を掴まれ、見事に隣に座らされてしまう。自分がおしっこを味わい、喉に流し込む様を見ていて欲しいというのだ。これこそ本当に恥ずかしいのだが、不思議と高揚している自分がいる。触らずして膣内がビチョビチョになっているのが分かるほどだ。

クチュクチュクチュ

こうちゃんのおしっこウォッシュが始まった。マウスウォッシュの要領でおしっこを口内に充満させるのだ。口内におしっこを充満させながら、舌で味を確かめているという。この作業中、私は終始こうちゃんを見ていないといけない。言うまでもなく、こうちゃんも私を見つめている。何度やっても恥ずかしさが込み上げてきて時折目線をズラしてしまう。その度に腕の握りをギュッと強められ、強制的に目線を戻される。強制的にとは言っても、実を言うと私が望んでそうされている部分もある。なぜなら私が目線を外せば外すほど、こうちゃんは目をギラつかせながら腕の握りを強めてくる。つまり目線を外せば外すほど、こうちゃんが私を求めるのだ。さらに言うと、私はこうちゃんが私のおしっこを味わっている表情を見るのが大好きなのだ。おしっこを味わいながら時折見せる表情の変化が何よりも私の胸を高鳴らせる。あの食されている感が堪らなく興奮する。私の汚い部分を具現化したようなもの、おしっこを口に含み、人類が果てしない時間をかけて洗練させてきた舌という感覚器官に沁み込ませていると考えると、私のエキスがそのまま取り込まれている感覚になり、心の底から繋がっている感じがするのだ。

ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ

こうちゃんが私のおしっこを飲み込んでいる。私は彼を見つめながら涙を流していた。

生まれてきてくれてありがとう。ありのままの私を受け入れてくれてありがとう。

ゴクン

おしっこを流し込み終わると、こうちゃんは物凄い勢いで私の上に乗っかって口を開くと、私の口内に大量の唾液を流し込んできた。

今度は私が彼のエキスを取り込む番だ。


「京香ちゃんおはよう!」

今日も豚野郎が鼻の穴を膨らませながら私を見ている。

豚は尻が好きらしく、私が離着席する度に食い入るようにこっちを見てくる。

残念ながら無視する訳にもいかず、今にも殺してやりたい気持ちを懸命に抑え込みながら奴と視線を合わせて会釈する。

鞄を下ろして席につくとやっぱりそうだ、奴が私の体を舐めまわすように見てやがる。

とっとと死んじまえ!!!

パソコンを開き、今日も仕事が始まる。喉の奥から溜息が込み上げてくる。いつまでもこうちゃんとぬくぬく出来たらいいのになぁ~。なんでこんなモサイ男どもの中で働かないといけないんだろう。

キーッ

隣のキモ男がまた執拗に椅子に寄り掛かっている。寄り掛かると私との距離が近くなるため心底迷惑だ。キモ男の分際で堂々と距離近くなってんじゃねぇよ。太ったカエルのような顔をした上に猫背で、話す時はじっと見てくるばかりでまともに指示を出さない、かと思えば私の髪型やどうでもいいエピソードトークを生き生きと語ってくる時もある、何か変な匂いもする、隣になりたくない人ランキングの1位、2位を争うクソキモ男め。テメェもとっとと死んじまえ!

「おい荒田!!!」

また豚がキレてる。豚もキモカエルには思うことがあるようだ。こんなこととは言え、共通点があるのは不愉快だが。

「椅子に寄りかかって仕事してんじゃねーぞコラァ!」

豚が再び吠えると、カエルが前かがみになりながらパソコンと向き合い始めた。

と、豚とばっちり目が合ってしまった。気持ち悪い。

私を見ながらニヤけやがった。マジ死ね。

引き気味に笑顔を作ってすぐさまパソコンに目線を戻した。

うっえ。吐き気がする。このまま目の前まで言ってゲロまみれの豚にしてやろうか。


はあ。

やっと社員の残業情報を作り終えた。でも情報の作成よりもこの後に来るキモカエルに確認をお願いする作業の方が数倍嫌いだ。今日は豚がいるから長々と話されることはないだろうが、あのうんともすんとも言わない感じから書類の出来がオッケーなのかどうかを読み取る作業が心底めんどくさい。なぜ後輩社員の私がそこまでやらないといけないのか意味が分からない。

表情と息を整え、

「あの、すみません」

キモカエルが私を凝視してくる。

「うん」

耐えられない。

顔面マスクしろと思いながら思いっきり口角を引き上げ、

「書類の確認お願いします」

返事が返ってこない。

声出ねぇんだったら視線合わせてくんじゃねえよ。こっちはテメェなんかのために口角上げたくねぇんだよ。

「おい荒田!テメェ何京香ちゃん困らせてんだあ!」

また豚の遠吠えが始まった。テメェが何言っても変わんねぇんだよ。

「あ、いや、、、」

目線を落として口ごもるキモカエル。豚を見ろよ豚を。眼球汚染やめろ!

ドスドスドス

豚が顔面を真っピンクにしながらキモカエルの前まで近づいてきた。テメェはいつも餃子の匂いがすんな。

「だからぁ何困らせんだぁって言ってんだよお!」

汚ったねぇ唾が飛んでいるのが私の位置からも分かる。

例によってカエルはただただ豚を見上げている。こうなると話は平行線の一途をたどる。

「あ、いえ、私は大丈夫ですので、、、、」

また無理に口角を上げ、豚に言い放った。とっとと席に戻れ。一刻も早く次の作業に移らせてくれ。

「いやダメだ。コイツはいつまで経っても人に迷惑をかけることしか知らない。京香ちゃんには特にそうだ。見てらんねんだよお!」

今日はなんだか正義感に熱い上司で私を釣ろうとしているらしい。反吐が出そうで口を閉じておくのがやっとだった。

「おい、聞いてんのかよぉ!京香ちゃんに迷惑かけんなって言ってんだよぉ!」

今日の豚はいつもにも増して気持ち悪い。カエルの胸倉を掴んで思いっきり睨みつけている。好きな女の子にアピールする小学生みたいだ。

「なんとか言えよコラァ!!!!」

これは流石に予想外。

豚がカエルを思いっきり殴ったのだ。

そのままデスクに突っ伏し微動だにしないキモカエル。

正直ちょっとスッキリした。

嫌だ。豚の行動に胸がちょっとスッキリしてるなんて何かちょっと心を犯されてるみたいで股の間がウズウズしてくる。思わず豚を見つめてしまった。

「大丈夫だ」

グッと私を見つめて豚は言った。

そこからキモカエルを何回か揺すり、私を見てニッコリ笑顔で頷いた。

「うん、大丈夫だ。問題ない」

頭が真っ白になってしまった。私どうしちゃったんだろ。もう小さく頷くくらいしか体が動かなくなっていた。

「何があったんだ」

別の声が耳に入りこんできた。見るとうちの部長だった。

「部長!」

豚が部長の方を向きながら驚いている。ちょっと可愛い、、、

「何があったんだ」

部長が冷たい声で言っている。うちの部長はいつもそうだ。まるで機械と話しているようで、何回かしか話したことがないが、私は部長がとても苦手だ。声を聞くだけで緊張してしまう。でも今は不思議とそこまで気にならなかった。なぜなら私の前には豚がいるから。

「いえ、特になにも。居眠り社員を少々注意していただけです」

彼がここまで頼れる男に見えたのはこれが始めてだ。よく見ると、肩幅が広く、守られている感がある。

「そうか、まぁ詳しくは聞かんが、あまりやり過ぎるなよ」

引き下がった。豚がロボット部長を引き下がらせた。

「はい、大丈夫です。ご心配なく」

豚がそう言うと、ロボット部長は自分のデスクに戻っていった。

さっきから物凄く変な気分だ。豚を見ながらずっとお股の間が熱い。私、こんな気分になったのこうちゃんとの初めて以来だっけ、、、、、

「ほら大丈夫だから、皆自分の業務に戻りなさい」

ギュッと力のこもった目で言われ、私はドキッとしてしまった。

他の社員たちが自分のデスクに向き直る音が聞こえる。でも私の体は動かない。豚の方を向き続けていたかった。でもじーっと見つめるのは違うと思った。これまでの私の態度と合わないからだ。そこで私はキモカエルを心配するフリをすることにした。目の細胞が死んでしまいそうで心配だったが仕方がない。

「ほら望月、お前もだぞ」

普段より数段低い迫力のある声で豚が言い放った。お股の間の疼きは最高潮に達していた。

身がよじれるのを頑張って抑えながら豚を見上げ、自分史上最高の反抗顔を作って自分のパソコンに向き直った。

まずい。ちょっとしたらトイレに行った方がいいかもしれない。湿り具合が尋常じゃない。


騒動から15分後、私はトイレの中にいた。

トイレットペーパーで湿り気を拭きとった後、我慢できず一人で盛り上がってしまった。

恥ずかしながら頭の中で豚を思い浮かべながら。

豚がカエルを殴った瞬間、完全に私の心が開かれてしまった。これまで毎日キモカエルに感じていた汚い感情、思い描いていた残虐な仕打ち、それらが豚の一撃によって全て受け入れられた気がしたのだ。これはこうちゃんが初めて私のおしっこを心底味わっている表情を見た時に感じたものと同じ、あるいは下手するとそれ以上のものかもしれない。おしっこやうんちを飲んだり食べたりするというのは言ってしまえばプレイとして完全に成立しているものだと思う。でも職場の人に対する残虐な想像を丸々受け入れてもらえることなど一体どれだけあるだろうか。ましてやそれをほんの少しであったとしても現実にやってのけてもらえることなどあるのだろうか。豚はやってのけてくれたのだ。私のキモカエルに対する憎しみを、殴り殺してやりたいというとてつもなく黒い衝動を行動に移してくれたのだ。これまでにないレベルで私の中の黒い存在を受け入れてくれのだ。こうちゃんには申し訳ないが、これ以上の人がこの先現れるかどうか分からない。これまでこんなに近くにいたのに気付かなかった自分がバカすぎる。なんとかして豚と、いや豚さんと一緒になりたい。そうして私のどす黒い部分を全て受け入れ肯定して欲しい。私の中の闇をこの上なく愛でて欲しい。


デスクに戻ると豚さんがいなくなっていた。

社内システムで彼のスケジュールを見ると今日は終日会議が入っており、デスクに戻ることはなさそうだ。残念すぎる。これまでは嫌味なくらいにデスクにいたのに、心を開かれた瞬間遠くに行かれてしまった気分だ。

しょうがない、明日よりアタックを開始するしかない。もとより、彼は私にぞっこんだ。一緒になるのはそう難しいことではない。

とりあえず今の問題は社員の残業情報のチェックをもらうことだ。騒動を通して新たな心の受け入れ先が見つかったのは最高だったが、キモカエルからのチェックを貰えていない。挙句の果てには、未だにキモカエルが目を覚ましていない。どんだけ体が弱いんだ。そう耳元で叫んでやりたいくらいだ。体を揺すって起こそうかと思うものの指一本触れたくない。それにさっき豚さんに揺すられた時も微動だにしていなかった。もう完全に気を失っているのだろう。キモイ上に貧弱だとか本当に取るとこのない人間だ。

これまで各書類を確認してもらってはいるものの、訂正が入ったことは一度もない。ならば、確認してもらう意味などそもそもないのではないか。今までは新入社員としてペコペコしていたが、流石にもういいのではないか。後輩社員相手にまともに話せないあいつが悪いんだ。よし、じゃあそのまま進めてしまおう。キモカエルはそのまま突っ伏していればいい。どうせ何の役にも立っていないのだから。もうこのまま死んでいなくなっちまえばいいのに。豚さん、とどめをさしてくれないかな~。

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