第31話 傲慢たる暴挙①
「オラたちは
「妾は会議など出たくないのだ」
「マイハニー。そうやって今まで出たことないべ。そろそろ参加しないとリコリス女王に怒られるだべ」
「知らない奴に怒られたくないのだ」
「ほら。ケイ君、頼まれていた薬の材料の野菜だ。たんと用意しただべ。では、また会おう!」
こう言って、ンデラさんとダフネは一足先に
「すいません。わざわざ私のためにこんな寒いところに残してしまって。なんとお礼を言っていいのやら」
ダフネさんは割れた仮面を修復して、以前に会った時と同じ格好になっている。
「アコネは本当にお化けじゃないアルカ? 私お化けだけは無理アル」
アネマラはまだ怖がっているようだが、仮面のおかげで取り乱すことがなくなった。
「またいつ暴走するかわからないから、僕たちはしばらく残ります。できるだけ
僕はアコネさんがまた暴走しないように、考えられる最大の努力をしようと思う。今回はたまたま成功したが、想定外の反応に対応できるようにするため、一週間程度ここに残ることに決めた。
あの時感じた薬師としての惨めさ。僕は自惚れをなくさなければならない。妹の事もあるが、薬師としての責任は全うする。
◇
「ウォルフさん、アコネさん。僕たちはもう行きます。ウォルフさんたちのおかげで、『四霊獣の秘方』の素材も全て集まりました」
『少年たちよ。こちらの方こそ大変世話になった。妹の無事を祈るぞ』
「ケイさん、アネマラさん。私のために長居して貰ってすいません。また、元のように過ごせるなんて思っていませんでした。本当にありがとうございます」
アコネさんは深々とお辞儀をしている。
「いえいえ。おそらく数年は大丈夫だと思いますが、まだ経過を見る必要がありますので、またひと段落したら伺います。それと、鎮魂丸の考えられる副作用と対処方法を記したメモも用意しておきますので」
「私は何もしていないアル。ケイの手伝いをしただけアルヨ」
アネマラは少し、しょんぼりとした感じだ。
「いえいえ。アネマラさんも一生懸命私の薬を作ってくれていたじゃないですか。二人ともに大変感謝しています。末長くお幸せにね」
アコネさんは表情こそ見えないものの、とても明るい声色で言ってくれている。
「そ、そうアルカ。また、会いに来るアルヨ」
「その時はまた、お化けだ! って倒れないで下さいね。ふふふ」
こうして、僕たちはアイスヘルを後にした。
「ケイ、これからどうするアルカ?」
王国に帰る道中の森の中、アネマラが僕に尋ねる。
「まずは王国に保管している『ブルーフードラゴンの逆鱗』を譲り受けに行く。そして、伝染病ラトの特効薬である『四霊獣の秘方』を完成させる予定だよ」
「ホワイトマオタイガーの涙」、「レッドホンバードの羽」、「ブラックミンタートルの抜け殻」、「ブルーフードラゴンの逆鱗」。この四つの生薬が伝染病ラトの特攻薬『四零獣の秘方』の素材だ。
「いよいよアルネ」
そういよいよだ。妹が伝染病ラトに罹ったのが七年半前。僕はようやく特効薬の全ての素材を集め終えた。余命が十年のこの病。なんとか間に合いそうだ。
「うん。これも全てアネマラのおかげだよ。本当に感謝している」
「そんなことないアル。全てケイの力アルヨ」
そんなことはない。あの日、アネマラと出会わなければ、僕はコーロー山で野垂れ死んでいた。アネマラと出会わなければ、魔力を持たない弱者のままだった。
あの日のコーロー山で出会った白く輝く美しい女性が僕の運命を変えた。理想を叶えるための力を与えてくれた。
「ケイは、妹を治療した後どうするアルカ?」
「そのことだけど、アネマラに伝えなければいけないことがある。僕は……」
「はっはっは! やっと見つけたぜ! あの変態が言っていた通りだ。久しぶりだな。ケイ」
突如、僕たちの目の前に彼らが現れた。忘れもしない一年半前、僕をコーロー山に置き去りにした四人組『マグナスフレイム』だ。苦労したのか? 別れた時よりも、老けたように見える。
「久しぶり。エンバル。ガイアンに、セレスティア、ミリアーナも。『マグナスフレイム』のメンバーが揃って僕に何の用だい?」
僕は以前に受けた絶望の記憶が蘇る。この人たちは僕を殺そうとした。口ぶりから僕を探していたようだが。何のつもりだ。
「連れないな。ケイ。俺様はこれでも、お前を見直したんだぜ。本当に生きていれば連れ戻してやらんでもないと、コーロー山に行ったこともあった」
「あんな仕打ちをしておいて、今更何を言ってるんだい」
僕はあの時の怒りを抑え、冷静に努めて発言する。
「ははは。だがこうして生きている。俺様は嬉しいぞ」
この人は何なんだ? 気がおかしくなったか?
(アネマラは僕の後ろに、そのまま隠れていて。これは僕の問題だ)
僕は『
「もう一人、僕の後に入ったアリエルって子がいないように見えるけど、一緒じゃないのか?」
「あんなクソ雑魚女は、俺様が追放してやった」
「マジ、あのぶりっ子、ウザかったよねー」
「ああ、あの女は最低だ」
「あんなダサダサ女いなくなって精々しますわ」
どうやら、アリエルって子を僕と同様に追放したらしい。ということは、僕と同じでどこか置き去りか? よく知らない人だったが、この人たちは人の命を何だと思っているんだ。
「君たちは、最低なパーティーだ。僕は君たちと話す事はない。さよならだ」
「待てよ。ケイ。お前に用はなくても、俺様はお前に用がある」
エンバルが僕に突っかかって来る。ただ、要件とは何だ? 僕とエンバルたちはあの日に縁が切れた。
「あんなことしておいて。まさか僕を勧誘しているのかい?」
「ああ、泣いて乞うならそれでもいい。その代わり、奴隷のように働かせてやるがな」
一体、エンバルは何が目的だ? 勧誘じゃなければ本当に何だ?
「エンバル、まどろっこしい言い方はせずに要件を言ってくれ」
「ああ。そうだな。俺様たちはこの手でお前を殺しに来た。生きて殺せる機会ができて、俺様は本当に嬉しいぞ。何なら、後ろの女も一緒に地獄に連れて行ってやる」
エンバルは嬉々とした口調で僕を殺すと発言した。しかも、アネマラまで。ただ、そう言われても今の僕には効かない。以前の彼らより、僕は強くなった。
「エンバル。君たちと別れた後、僕は強くなった。
殺気を向けてくる彼らに僕は忠告をする。無駄な争いはしたくないからだ。だが、僕の言葉を受けてもなお、四人は不適な笑みを浮かべる。どいうことだ?
「ははは。何を言い出すかと思えば。あんな雑魚どもよりも強いことで何の証明には成りはしない」
エンバルは高笑いをする。どうしたんだ? 僕の知る彼らは
「俺様たちはついさっき、
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