第24話(閑話)白猫の初恋②

「『獣戯じゅうぎ幽月仙花夢泥毒蛇ゆうげつせんかむでいどくだ!」


 私は知らないアル。何アルカ? マムシになっているケイの背中が割れたアルヨ。中からケイの瞳と同じ深緑色の大蛇アル。


獣戯じゅうぎ』は一度だけ見せたアル。ケイはきっとそれを真似たアルガ、それは違うアル。ケイは一体何者アルカ?


 遺跡に降り注ぐ毒の雨アル。ボルケーノドラゴンは瞬殺されたアルヨ。けど、ケイはとても苦しそうアル。私、見ていてとても辛いアルヨ。


「ケイ! 大丈夫アルカ!?」


「ケイ君、今助けるだべ!」


 ケイはのたうち回った後、人の姿に戻り倒れたアル。私と変態はすぐにケイの元に駆けつけたアルガ、手遅れだったアル。


「ケイ! 息をするアル!」


「ケイ君……」


 ケイは息をしていなかったアル。私、ケイを失いたくないアル。どうしたらいいアルカ?


 ケイとの楽しかった思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんだアル。たった一年だけだったアルガ、私の五百年で一番色鮮やかな日々だったアル。


 ケイとの出会い……そうアル! 私のすることは、あの時のことアルヨ。死にかけていたアルガ、鮮明に覚えているアル。


 気道を確保して、鼻を塞ぎ口から息を送るアル。そして、あの時のリズムで胸を圧迫するアルネ。全部ケイが私にしてくれたことアル。


「い、息を吹き返した。アネマラ君よくやっただべ」


「変態、ケイは助かるアルカ?」


「オラが知っている最強の回復魔導士を連れて来る。三日以内に見つけるだ。アネマラ君はここで手当して欲しいだべ」


 その後もケイは意識を戻さないアル。私は無力アルネ。ケイだったらあの時みたいにすごい薬で助けてくれるアルヨ。私はただ見ておくことしかできないアル。


 私は泣いたアルヨ。泣いても何も変わらないことはわかっているアル。でも、泣くことしかできなかったアルヨ。枯れていた五百年分の涙を流したアル。


 それから、必死にケイを呼んだアル。喉が潰れたら治して、また呼び続けたアルヨ。


 倒れてから二日目にして、ケイはようやく目を開いたアルヨ。私は思わずケイに抱きついたアル。本当に死ぬんじゃないかと心配だったアルヨ。


「アネマラ」


 とても苦しそうな声アル。ケイは私に、薬の調合方法を伝えたアルネ。あの日、飲ませてくれた苦い薬のように、今度は私が作る番アルヨ。


 ケイの指示通り作ったら、ケイはすぐに喋れるようになったアル。やっぱりケイは天才アルネ。普通はあの状態からすぐに回復しないアルヨ。


「ピヨピヨ」


 ケイが目を覚まして少しした後、赤い小鳥が入って来たアル。初めは癒しだと思ったアルヨ。ただ、小鳥は悪魔だったアル。


「レナスキイグニスなのだ」


 小鳥は突然燃えて、赤髪の少女が現れたアル。その、瞬間ケイは焼き殺されたアルヨ。


「『獣戯じゅうぎ天地乾坤霊峰白猫てんちけんこんれいほうびゃくびょうアル」


 焼き殺されたケイを見て私は、怒り狂ったアル。女は何か言っていたみたいだったアルガ、私はケイの仇を八つ裂きにしたアル。


 小鳥を始末した後、私はケイの残骸の前で立ち尽くしたアル。ケイは真っ黒な塊になったアルネ。もう助かりようがないアルヨ。私はこれからの五百年分の涙を流したアル。


「あれ? 僕は生きている」


 びっくりしたアル。いくら仙人でもあの状態から生き返るなんて思わなかったアル。そして、忌まわしき小鳥も何故か生きているアルネ。


 話を聞くと、小鳥はケイを助けたアル。そして、その後も暴走するケイと戦って抑えているアルヨ。私は感情が追いつかないアル。


 ケイの暴走を抑えるため小鳥は一日一殺することになったアル。やり過ぎアルガ、正直一番いい方法アルヨ。小鳥は何故かケイを強くしたいみたいアル。


「ひっ! なのだ」


 小鳥は私を見るたびにビクビクしているアルネ。困ったアル。私謝らないといけいないアルヨ。それと、毎日寝床と料理を提供してくれる変態にも謝りたいアル。二人ともケイのために頑張ってくれているアル。むしろ、私が一番役立たずアルヨ。



「ケイ、私はダフネとンデラに謝りたいアルガ、謝り方がわからないアル。どうしたらいいアルカ?」


 私はいくら考えても謝り方がわからなかったアル。だから、ケイに頼る事にしたアルヨ。


「普通に、ごめんなさい、でいいんじゃないかな? あと、仲良くなるには謝るよりも日頃の感謝の言葉が大事だよ。父の受け売りだけどね」


 ケイはにこっと微笑んで言ってくれたアルヨ。こんな私にも笑顔を作ってくれるアル。ケイに相談してよかったアルヨ。


「ダフネ、私ひどいことをしてごめんなさいアル。ケイを助けてくれて、ありがとうアルヨ」


 ダフネはびっくりした顔で私を見ていたアル。


「気にしなくていいのだ。仲良くするのだ」


 ダフネは微笑んで気にしないでいいと言ってくれたアル。ケイの言った通りだったアルヨ。私は悩み過ぎていたアル。


 ただ、ダフネの笑顔は危険アルネ。可愛すぎアル。ケイが惚れたら大変アルヨ。困ったアル。


「ンデラ、変態って言ってごめんなさいアル。料理とベット、ありがとうアル」


 ンデラは真っ白な歯をこれでもかと輝かせていたアル。


「オラは全く気にしていないだべ。この格好で変態と言われるのは当たり前だべ。料理もベッドも君たちを尊敬しているから、オラの気持ちだ」


 ンデラがほんのちょっとだけ格好よく見えたアル。それでもケイの足元に及ばないアルガ。ケイの言った通りだったアル。一言で充分だったアルヨ。


 それに、ンデラはたぶん『地仙ちせん』アル。魔力のある人間の中でも仙人に近い存在アルヨ。昔は『地仙』に成るため、全裸になった変態集団がいたのを思い出したアル。別に思い出したくもない記憶だったアルネ。


 ただ、全裸よりも、麦わら帽子と赤褌だけを身に付ける方が変態に見えるアル。不思議アルネ。ただ、それを差し引いてもンデラはいい奴アル。


 人間は嫌いアルガ、霊獣のダフネと地仙のンデラとなら、きっと仲良くなれるはずアル。これもケイのアドバイスのおかげアルネ。昔の私だったらできなかったアル。


「アネマラ、今日もありがとう」


 ケイが今日も生き返ったアル。私は何もできていないアルヨ。ダフネやンデラみたいに役に立ちたいアル。私はただケイが殺される度、泣きながら体を拭いているだけアルヨ。情けないアル。生き返るとわかっていても、ケイが死ぬのを見るのは辛いアルネ。


 そんな駄目な私にケイはいつもありがとうと言ってくれるアル。ケイはズルいアルネ。ありがとうと言いたいのは私の方アル。

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