第21話 燃焼鳥②
「ああ、スッキリした。よく寝られただべか?」
「はい。おかげさまで。こんなところでぐっすり眠れるとは思っていませんでした」
昨晩はンデラさんの魔法で建てたホテルで睡眠を取った。ベットまで出してくれたので快眠だ。一昨日は徹夜で修行をしたから、正直助かった。
「アネマラ君は、もう大丈夫だべか?」
「ふぁ〜変態やるアルネ。私ベット気に入ったアルヨ」
アネマラは、まだ眠たい目を擦りながら言う。
「それは光栄だべ」
アネマラはよほどベットでの寝心地が気に入ったのか、さっきまで起こすのが大変だった。僕たちは今まで枯葉の上で寝ていたので、寝心地は比べものにならない。
「さて、目的地はもっと奥だ。張り切って行くだべ」
僕は魔獣避けのロズマの香を焚き、遺跡の奥へと歩みを進める。
「ブラックバットの群れだべ」
「ホーンシープだべ」
「ロックアルマジロだべ」
道中、もちろん上級や特級の魔獣に襲われもしたが、さすがにインフェルノボルケーノドラゴンのような超特級の魔獣はそうそう遭遇することはない。アネマラやンデラさんもいる僕たちのパーティ『
「今度のは僕にやらせて下さい」
「任せたアル」
「万が一、ピンチになったら加勢するだべ」
今、僕たちの目の前にいるのは本物のボルケーノドラゴン。赤い炎を吐く。アネマラが戦ったインフェルノボルケーノドラゴンには劣りはするが超特級、僕に取っては格上の相手。
『
僕はボルケーノドラゴンの頭よりも高い位置に飛び、高さのアドバンテージを取る。
「
今回は早速毒を使わせてもらう。
『
ビュン、ビュン、ビュン、ビュン、ビュン
バァン! バァン! バァン! バァン!
早速、毒の合わせ技、アコンの毒にエスティージョンを加えて、麻痺毒の毒性を強めた攻撃を仕掛ける。
「グガアアアアアアアア!」
麻痺毒を付与した鞭撃だったが、効果は今ひとつのようだ。なんせ、この巨体である。皮膚も分厚く、毒の吸収が悪い。
しかも、常に火を吹き、体温がかなりの高温である。植物性や動物性の毒は基本的に熱に弱い。毒性が減弱されてしまったに違いない。
ボルケーノドラゴンは大きく息を吸い、溜めを作る。きっとアネマラとの戦いで見た炎の竜巻だ。アネマラみたいに『
「ゴガアアアアアアアアアア」
巨大な赤い炎の竜巻を吐き出して来た。
「来る! だけど、避け切れない」
ゴオオオオオオオ
「熱っ!」
僕は空中で避けるも、想定以上に範囲が広い攻撃だ。左半身を火傷してしまう。
『
この程度の火傷で済んでよかった。正面から直撃したらこうはいかないだろう。
さて、僕の今からの選択肢は二つ。一つは熱に強い鉱物系の毒を用いた仙花鞭の攻撃。毒による有効打を与えることができ、手堅い選択肢だ。
そして、もう一つは、まだ試したことがない『
僕の中で選ぶべき選択肢は決まっている。後者だ。前者は着実に勝利を掴むことができるだろう。だが、アネマラやンデラさんが後ろに控えている条件では、目先の勝利よりも僕の成長が優先だ。
現にそれを見越してアネマラやンデラさんは手を出さないで、傍観に徹してくれている。やるしかない!
「『
まずは『
父親は言っていた。人体は「
『
『
まずは自身の内面の「
「ケイ、起きるアルヨ! ケイ!」
アネマラの声がする。駄目だ。起きられない。全身の力が入らない。
「ケイ、起きるアルヨ!」
アネマラが叫んでいる。起きなきゃ。まずはこのズッシリと閉じられた瞼。これをこじ開ける。
「お、起きたアル! 大丈夫アルカ?」
アネマラ!? 僕に突然抱きついて来る。顔を見ると目の周りが、とても赤く腫れ上がっている。泣いていた? 僕は何をしていた?
ボルケーノドラゴンと戦闘中に、『
「アネマラ」
「喋ったアル! 意識が戻ったアル」
やっぱり、意識を失っていたのか。ドラゴンの攻撃で生死を彷徨ったのか? やっぱり、あの場で『
「鞄。キャロット。出して」
「わかったアル」
アネマラは僕のカバンをまさぐる。
「これアルカ? カピカピになっているアル」
「沸騰、お湯。二十分」
「わかったアル」
アネマラは僕が言った通り、鍋でお湯を作り煎じてくれた。ちなみに、このキャロットはオタキャロット。栽培が難しいが体力を大きく回復させる貴重なものだ。
「はぁ、助かった。ちょっとはマシになった」
「よかったアル。ケイ、丸二日も気を失っていたアルヨ。心配したアル」
丸二日も? それは心配かけたな。ここは無駄に豪華な装飾品。ンデラさんの魔法のホテルの中だろう。
「心配かけてごめん。ここは遺跡の中?」
「そうアル。今、変態が回復魔導士を探しに行ってるアルヨ」
わざわざ王国まで戻ったのか? それはンデラさんにも悪いことをした。
「アネマラはずっとここに?」
「そうアル。ケイをずっと心配していたアルヨ」
「アネマラありがと。それに心配をかけてごめん。ドラゴンも結局アネマラが倒してくれたんだよね。僕がヘマしたばかりに、ごめん」
「何言ってるアルカ? ボルケーノドラゴンのことアル?」
アネマラは首を傾げながら言う。
「僕が気を失った時に戦っていたドラゴン。あれはどうしたの? ンデラさんが倒してくれた?」
「変態は腰を抜かしていたアル」
「じゃあ、誰が?」
「ケイが倒したアル。覚えていないアルカ?」
僕がボルケーノドラゴンを倒した? どうやって? 駄目だ。思い出せない。完全にその時の記憶が閉じられている。
「ごめん、その時の記憶がないみたいだ。良かったら教えてくれる?」
「記憶ないアルカ!? 凄かったアル」
「凄かった?」
「そうアルヨ! 脱皮して、……待って、何か来たアル!?」
「ピヨピヨ」
アネマラが何かの気配を察知したと同時に一羽の小鳥が入って部屋に飛んで入って来た。見たことがない、全身が真っ赤な小鳥だ。
魔獣? ではなさそうだ。こんなに可弱そうな小鳥だったら、遺跡の中を生きていけるはずがない。森から迷って来たのだろうか?
「小鳥……だよね?」
「可愛い鳥アルネ」
アネマラは小鳥を見て穏やかな顔をしている。今まで緊張しっぱなしだったみたいだから、癒しがあるのは助かる。いや、待てよ。においが。
「アネマラ危ない!」
「な、何アルカ?」
ボッ、トン
鳥が全身火に包まれて地面に落ちた。何者かからの攻撃? それよりもあの鳥、僕が焚いたロズマの香をものともしていない。二日前の物で効力は落ちているが、それでも普通の小鳥は近寄れないはずだ。
「鳥が急に燃えたアル。や、焼き鳥アルカ!?」
「小さすぎて食べられないよ。それよりも何で急に?」
「お主じゃな? 妾を倒せるかもしれぬ男は?」
突然、火の中から声がする。この形は少女?
「だ、誰だ!?」
「誰アルカ!?」
「レナスキイグニスなのだ」
ボオオオオオ
炎の中の少女がそう唱えると、僕の全身は赤い炎に包まれた。だ、駄目だ。今度こそ死ぬ……
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