第39話 制服着たら母校にも多分潜れる

 あの後、母の洋服をあれこれ着せられたが、どの洋服も着丈が合わなかった。


 母が諦めつつと言った様子で私が中学生くらいの時に着ていた洋服をクローゼットから引っ張り出してきた。私は中学1年生で成長がほぼ止まったので当然の様に着ることができた。なぜかそこから母に火がついて昔の洋服をあれこれ着せられてファッションショーする羽目になった。


「中学生の時のミコトちゃんにまた会えた気がして嬉しいわ!」


 母は喜びながら、あれを着て、これを着てと次々に服を渡してくる。ちなみに家のクローゼットに残っている洋服は全て母の選んだものでまぁまぁ高価な洋服だ。


 1階で赤ちゃんを見たり、お喋りしている兄達を途中から上に呼び寄せて写真を撮らせ始めた。私たち今日は奏月ちゃんに会いにきたはずなんだけど。何故こんなことをしているのか。


 母が一通り満足したあたりでファッションショーが終わった。疲れたな。ちゃんと着せ替え人形をさせられていた。


 今の格好を姿見で改めて確認する。確かに母の言う通り完全に中学生の時の私だった。今更ながら私自身の容姿は中学生の時からほとんど成長が無く、身につけるものだけが変わっただけと言うことが分かりやすく示されてしまいそれなりに凹む。


 自分で言うのもなんだが育ちの良さそうな中学生然とした格好だ。普段でも喫煙所で煙草を吸っていると声をかけられることが多いが、この格好で吸ったら100%の確率で止められるだろう。


 げんなりとした気持ちが顔に出ていたのか、理人くんがこそりと「大丈夫?」と声をかけられた。本当に人の顔色を伺うのが上手い人である。


 みんなについて奏月ちゃんと葉月さんのいるリビングへ行く。私の姿を見た葉月さんが「昔着てた服?かわいいね」とにこやかに笑って言った。



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