第34話 兄の子

 バイトを終えて携帯を開くと母から連絡が入っていた。

 長兄の子供が生まれたらしい。女の子だそうだ。


 退院後、家に戻ったタイミングで産後のお見舞いに来ないかと連絡が来ていた。ちなみに兄夫婦と両親は同居している。同居はギスギスする話をよく聞くのだが関係は良好なそうだ。


 実の娘が不出来なため、出来の良い義理の娘を上手いこと可愛がれているのかもしれない。そんなことをふと思い少し気持ちが沈んだ。


 気を取り直してスケジュールを確認し、行けそうだった為母に行くと連絡を入れる。


 生まれた姪を見に行くのは楽しみだが、実家に戻るのは気が重い。


 やれ進路だの生活は上手くやれているのかだの聞いてくる。心配してくれるのはいいが、何一つ本当のことを話せないため心苦しい。


 ちなみに家族は私がまだ専門学校に通っていると思っているため、隠すための心の準備も必要なのだ。早く打ち明けねばとは思うのだが、ここまで来たらなんと言って事実を伝えれば良いのかわからない。

 家族にどんな反応をされるか分からないのが恐ろしくずっと言え出せない。


 それと単純にコンプレックスが刺激されて居た堪れなくなる。何もかもできて当然の人たちなのだ。私の様な突然変異の不出来者を責めこそしないが、少し扱いずらそうにしている様は辛い。



 実家は自分で言うのもなんだが比較的裕福な方で、仕送りも、学費も全て出してくれている。仕送りに関してはバイトはしなくて良いほどに貰っていた。

 学校を辞めたくせにそのお金に手をつけるのは人間的にダメな気がしているためそっくりそのままお金はとってある。こちらも早く返して楽になりたい。


 状況的にはこんなに恵まれているのに、あの時ミミィとうっかり契約をしてしまったがためにそれを活かせずにいる人生。一体なんだのだ。




 そうだ、義理の姉の葉月さんにもお祝いの連絡を入れておこう。

 きっと疲れているだろうからいつでも見れらる用にチャットアプリにメッセージを入れる。


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