第31話 やっと帰れると思ったのに
とりあえず下に降りようと思い飛行高度を下げる。
地上に降りると焦った表情をしたレナちゃん達が走り寄ってきた。
「今の光はコトミさんが…?」
「あ…。うん。そうだよ…。」
皆一様に驚きの表情をしている。
「S級をい…一撃でってことですか?」
ヒマリちゃんが信じられないという表情で尋ねてくる。私も信じたくないよ。自分のビームにあんな出力があるなんて…。
「うん…。」
私が俯いて返事をするとミミィが間に割って入ってきた。
「こんなところでのんびりしている場合じゃないミィ。さっきの発信源がこことばれるのも時間の問題ミィ。早く場所を変えたほうがいいミィ。」
その通りである。警察やら野次馬やらが来てしまう。ちなみに過去に台風を晴らした時は辺りが警察に封鎖されていた。
「そうですね。私、姿を隠せる魔法を使えるので皆さんの姿をそれで隠します。一度その状態で先ほどの公園に戻りましょう。」
レミちゃんがそう言って呪文を唱え始めた。魔法少女の魔法って色々あるんだな。私たちに姿を隠せる魔法なんて使える機能が備わっていたことに驚きを隠せない。
本当に魔法少女について知らない事ばかりである。
私たちはレナちゃんに魔法を掛けてもらいコソコソと移動を始めた。
公園に向かう道中、警察や、野次馬であろう人があたりをうろうろしていて緊張が止まらない。『セカイの敵』を倒すためとはいえ流石にやりすぎた。
例の公園に到着して私たちは魔法と変身を解いて一息つく。
「怒涛の展開でしたね…。」
珍しく疲労の色が見えるサクラがそう言った。
全員が流石に疲れたという雰囲気を出している中、レナちゃんが手を叩いて「お疲れのところ申し訳ないけれど、今後の方針を決めましょう。」とキリッとした表情で言う。きっとこの子の学校でのあだ名は“委員長”だ。
「今日の戦いでコトミさん以外の弱点ははっきりしましたよね。と言うわけで皆さんには平日は夜の20時から、休日は朝から毎日集まって特訓することにしてもらいます。」
毎日特訓…。え?私もやるの?普通にバイトあるんだけど。と思い始めた瞬間、「あ、コトミさんは他の討伐でお忙しいと思うのでお付き合いいただかなくて大丈夫ですよ。でも、週に一回くらい様子を見に来てくれたら嬉しいです。」と言ってくれた。
よかった。レナちゃんが全てやってくれるのなら安心だ。私は週に1回だけ集まりに行けば良いのなら楽だ。これまでの生活をあまり変えなくて済んでありがたい。
レナちゃんは私以外のみんなに向き直って話を続ける。
「“かつてない強さを誇る『セカイの敵』”を倒すには、ミコトさんを主軸に私たちが援護するような戦い方をするのが理想です。でも、今のままでは足手纏いにしかなりません。だから1日でも早く強くなれるように頑張りましょう。」
レナちゃんがそう言うとるるちゃん以外のメンバーは拳を宙に向けて「おー!」と言った。るるちゃんはその様子を引いた目で見ている。
「詳しい詳細はLINEで共有するのでもう23時過ぎてしまったし早く帰りましょう。」
レナちゃんの一言により、やっとお開きの雰囲気になって少しホッとする。
「今日は警察がたくさん巡回しているみたいなので補導されないように気をつけてくださいね。」
レナちゃんが続けてみんなに言う。そうか、みんな18歳以下だから補導とかあるのか。魔法少女の討伐のために家からこっそり抜け出すのとか結構大変なんだろうなとちらりと思った。
私も皆と別れて一人帰路につく。本当に色々なことがあって疲れた。ご褒美にアイスでも買って帰ろうかと思いながらゆっくり歩いていると
「ねぇ、君ちょっといい?」 背後から知らない男の声で呼び止められる。
振り返ると警察の2人組が立っていた。
「君、中学生だよね?今何時かわかってるかな?」と諭すように話しかけてくる。
あぁ、声を掛けられたのがみんなと別れた後で良かった。
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