第27話 サクラ志願兵

 話を聞かれてしまったと焦るレナちゃんに「あの子達も魔法少女だよ。」と説明をしているとサクラはこちらに小走りで近寄ってきた。それを追うようにるるちゃんも歩いてこちらに向かってくる。


「先輩!こんばんは!こんなところでお会いできるなんて嬉しいです!一緒にいらっしゃるのは学校のお友達ですか?」


 サクラに満面の笑みで挨拶をされた。知らない人が多くいる空間にも物怖じせずにいつも通りの様子で話しかけてくる。

 一方るるちゃんは視線を斜め下に向けたり、目が合わない程度に視線を上げてみんなの様子を伺ったりして居心地が悪そうにしてた。


「いや、この子達も魔法少女だよ。」


「わ!同じ魔法少女の方ですか〜!私、2ヶ月くらい前に魔法少女になったばかりの新人なんです…。先輩とるるちゃん以外の魔法少女にお会いするの初めてで!嬉しいです!」


 明るい表情で私以外の3人に「私、麻倉サクラと申します!」と人好きのする笑顔で元気よく自己紹介を始めた。


 サクラの話を一通り聞いたレナちゃんは私もと言って自己紹介を始めた。


「ミコトさんとチームを組ませていただいている白河レナと言います。美園坂女学院の高等部1年。魔法少女はもう3年目くらいになります。よろしくお願いします。」


 サクラの表情がここにきて初めて曇った。


「先輩ってチーム組まれてたんですか…?」


 私の方を向き少しムッとした表情で尋ねてきた。いつもニコニコとしているサクラの珍しい表情に少し驚いてしまう。


「え、うん。」


「い、いつからですか?」


「えっと、一昨日から。」


「一昨日…?」


 先ほどとは変わり表情には絶望の色が混ざる。いや、私も一瞬誘おうかと思いはしたのだ。ミミィが実力が足りないと言ったからやめたけど。


 私もそろそろサクラのことが分かってきた。この後なんて言うか大体わかる。後ろから様子を伺っていたるるちゃんも先が読めているのか下唇をかみながら渋い表情をしている。


「どうして誘ってくれなかったんですか?私もチームに入れてください!」


 それ見たことか、想像通りの内容すぎて一周回って別の驚きがある。


「えっと…。」


 私は言い淀んでしまう。別にチームに入るのは構わないのだ。

 ただ、私たちは強い『セカイの敵』と戦うためにチームを組んだのであって、魔法少女サークルを作ったわけではない。

 ミミィの口ぶり的にこの子の強さではきっと死んでしまうだろう。


「ぜひ。いいですよね。みなさん。」


 私がぐるぐるとなんて返したものかと悩んでいると、レナちゃんが優しい表情になってそう返していた。レミちゃんとヒマリちゃんもうんうん。と頷いている。


「同士が増えるのはありがたいことですよね。コトミさん。」


 今更だが気づいた。チームの主導権はレナちゃんにある。これは頷かないといけない雰囲気になってしまったではないか。


「えっと。」


 いや、これは空気を読んで返事をしてはいけない内容だ。サクラが死んでしまう。なんて返そうか頭を必死に回しているとミミィがトートバックから頭を出してきた。


「サクラをメンバーに入れるのには条件があるミィ。」


「条件…ですか?」


 レナちゃんがきょとんとした表情で聞き返す。


「レナがサクラをある程度のレベルになるまでにトレーニングするのが条件ミィ。サクラのポテンシャルはそこそこだけれど、経験が圧倒的に足りてないミィ。このままチームに混ざって戦えば確実に命を落とすミィ。

 期間は2週間。そこまでにある程度戦えるようになっていたら加入を認めるミィ。」


「なるほど…。」


「全員に言っておくミィ。プリズマガールの率いるチームはただの魔法少女サークルではないミィ。今後来たるかつてない強さの『セカイの敵』に立ち向かうために仲間を集めているんだミィ。」


 ミミィの話をみんな緊張感を持っていて聞いていた。するとレナちゃんは私の方をみて頭を下げた。


「すみません。私の考えが甘かったです。コトミさんはそこまで考えていらっしゃったのですね。」


 そしてレナちゃんはサクラの方をに向き直り覚悟を決めた表情で話し始めた。


「私は貴方が良ければ喜んでコーチングします。サクラさんの覚悟を聞きたいです。」


「もちろんです!よろしくお願いします!」


 二人はお互いの目をまっすぐに見つめ合いながら手を握り合って覚悟を固めていた。

 その様子をレミちゃんとヒマリちゃんは嬉しそうに見つめていて、るるちゃんは絶望の表情で見ていた。


 その直後るるちゃんは私の方に視線を向け「なぜ止めてくれなかったのか」とでも言いたげな般若の形相でこちらを睨みつけていた。


 ごめんって。

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