第26話 そんな目で見ないで。

「コトミさんは授業中とかも関係なく討伐に行ってるんですか?」


 私とミミィのやり取りを聞いていたヒマリちゃんが尋ねてきた。


「うん、まぁ…。」


 そうだよ。現役高校生の時はそうしてた。そんな生活で卒業単位が足りたのは奇跡でしかない。 

 私が歯切れ悪く返事をしていると、少し前を歩いているレミちゃんがぱっとこちらに振り返った。


「いや、そのための定時制に通ってるんでしょ…?」


「あ、そっか。なるほど!」 


 ヒマリちゃんはとても納得した様子で頷く。

 ありがとうレミちゃん。そういう設定にしてたの忘れてたよ。


 ヒマリちゃんとレミちゃんは「プリズマガールってやっぱり普通の魔法少女とは違うんだね。」とトートバックから少し頭を出してぬいぐるみのフリをしているピピィに話しかけ始めた。

 ピピィは肯定だか、否定だかわからない「ピィ。」と言う鳴き声を発している。


 先ほど公園で遠目には3人と楽しく話をしていた様子が見えたのに、私たちを視界に入れた瞬間「ピィ…」としか言わなくなってしまった。

 ミミィの仕打ちが忘れられないのだろうか。可哀想に。


 一方レナちゃんは「プリズマガールはやっぱり私たちとは背負っているものが違うんですね…。」とひどく衝撃を受けたように呟いていた。


「コトミさん。」


 レナちゃんが立ち止まりつつ、私の手をぎゅっと握り、真剣な眼差しで私を見つめる。


「私達にコトミさんの背負っているものの大きさは計り知れないですが、あなたの助けになれるように頑張ります。」


 レナちゃんは握る手の力を少し強めて続けて言う。


「あなたの仲間として戦えることを、私は誇りに思います。」


 レナちゃんがそう言った直後、ヒマリちゃんが手を重ねて「私も!私も誇りに思います!」と言い、それに続くようにレミちゃんも手を重ねて「…私も!私もそう思います…!」と言った。


 3人とも真剣な顔で、覚悟を決めたような表情で私の目をじっと見つめている。


 何故みんな、魔法少女の仕事にそんなに積極的なんだ。当然のように使命感を持って『セカイの敵』討伐をしているように思っているようだが、私は嫌々魔法少女をやっている。


 世界を救いたいだなんて爪の先ほども思ってはいない。そんな目で見ないで欲しい。居た堪れない。


 世界を救う責務こなした先は親に黙って学校を辞めて、それを隠したまま数年フリーターだぞ。


 この子達に今それを伝えたらどんな顔をするだろうか。ミミィはどんな反応をするだろう。

 きっとこの9年間で見たことの無い面白い反応をするのでは無いだろうか。


 そう思い始めた時、


「あっ!センパイ!」


 聞き覚えのある声に反応して振り返ると、そこにはサクラが大きく手を振りながら立っていた。すぐ後ろには当然、るるちゃんもいる。


 この子達はいつも間が悪いんだよな…。

 私が渋そうな顔をしていると、レナちゃんが「あの子達は学校の後輩ですか?魔法少女の話、きかれちゃいましたかね?」と焦ったように耳打ちしてきた。



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