第25話 労働基準法における未成年者

 私たちは『セカイの敵』を探すために公園を後にした。


「いつもこうやって『セカイの敵』を自分から探しに行ってるの?」


 私は先ほど貰ったペットボトルを手で溶かそうと握りつつ尋ねてみた。


「そうですね。大体この時間くらいに歩いて探しています。敵が出現してピピィに教えてもらったら、すぐに迎えるように。使える時間は有限ですから。」


 レナちゃんが私の歩くペースに合わせながらそう答えた。

 なんてやる気のある魔法少女なんだ。なぜこんなにやる気のある子がいるのに向こう9年間私の出撃回数は減らないどころか増えているのか。


「へー。急に出現した時も対応して、夜にはこうやって自分で探しにも行って。大変だね。」


 私がそういうとレナちゃんは少し不思議そうな顔をして「…急に出現した時?」と言った。


「行くでしょ?沸いたら倒しに。」


「う〜ん。でも本当にたまにですよね。半年に一回あるかないかくらい。」


「は?」


 思わず立ち止まってしまった。偶にどころか日に3〜4回は普通にあるんだけど。レナちゃんはの様子を見て困った表情で「コトミさん…?」と顔を覗き込んできた。


「コトミは『プリズマ・ガール』だから急な出撃が多いんだミィ。」


 急にミミィが会話に割って入ってきた。そのまま続けて話し始める。


「魔法少女の倒す『セカイの敵』というのは強さごとにランク分けされてるんだミィ。基本的にミミィ達妖精は、魔法少女のランクにあった敵の討伐をお願いするように決まってるの。コトミは最強だからどんな敵でも討伐に向かうことになるミィ!まぁ天才の責務だミィ〜。」


 私はミミィの説明をぽかんとしながら聞いていた。


 ミミィが今まで頑なに仲間を作るのを反対していた理由が分かった。魔法少女の労働格差がバレることを懸念していたのだ。

 なんだ天才の責務って。望んで私は天才になったわけではないんだぞ。


「ちなみに日中に出る『セカイの敵』は特に強さランクが高い傾向にあるミィ。ミコトの日中の討伐回数が多いのもそのせいだミィ。」


 そこまで喋ったあたりでミミィは私の耳元によってきてぽそりこう言った。


「あと3年前から『プリズマタウン』の方針が変わって、余程の事がない限り、18歳未満の22時から翌朝の5時までの討伐が禁止されたミィ。ちなみ18歳を超えた魔法少女はミコトだけだミィ。」


 急に仲間を作るをプッシュし始めたのかも分かった。

 かつてない強さの『セカイの敵』が出るのと合わせて、魔法少女の労働格差を他の魔法少女に言えない状況が作られたからだ。

 私が焦って年齢詐称していた時のミミィはきっと内心ほくそ笑んでいたのだろう。そして私の性格上それを取り消さないのも分かっていた。なんて恐ろしい悪魔だ。


 それにしても最悪だ。なんでもっと早くプリズマタウンはそう決めてくれなかったのか。私が18歳未満の時からそう決めてよ。


 明かされた衝撃の事実に体の震えが止まらない。


「ミミィ、帰ってから話したいことがある。」


 私は震える声で声をかけた。

 ミミィは一ミリも変わらない表情で「ミィ〜」と返事だかなんだか分からない鳴き声をあげた。泣きたいのは私の方なんだが。

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