第23話 妖精の出張

「ミコト。来月の20日。8月20日の朝から次の日の朝までちょっと出かけてくるミィ。」


 バイトを終えて帰宅後。夕食を終えて食後のタバコをふかしているところにミミィがやってきてにそう言った。


「あ…。わかった…。」


「そんなわけで、よろしくミィ。」


 そう言うなりミミィは定位置である棚の上に飛んで行き、いつも通りの置物に戻った。


 来月の二十日…。何かあった気がする。8月20日…。

 ハッとする。飲み会だ。バイトの飲み会。行こう!今回こそ飲み会に行ってみたい!ついでに美容室とか行って髪を切っちゃおう!バッサリ切ってしまおう。その日しかない!全てやってしまおう。


 ミミィがこのように数日いなくなることは今までも稀にあったのだが事前告知があるのは初めてのことだった。いつもいなくなる当日の朝に言うのだ。


 だから人と出かける約束を取り付けるのも難しく、美容院の予約も取れない。ただ『セカイの敵』討伐に引っ張り出されないだけの日となってしまう。


 いや夜叩き起こされる心配がないのはとても嬉しいことだし、滅多にないことだけどね。



 私は少し浮き足だった気持ちを表に出さないようにして美容院を調べはじめた。

 こういうのはミミィにバレない方が良い気がする。なんとなく。


 せっかくの機会だから、美容室のレビューを見ながら予約ができてポイントも貯まるアプリを入れよう。まぁ今回終わったら次いつ使えるか分からないようなアプリだけれど。

 ポイントも普通に失効しちゃうんだろうなと思った瞬間我に帰った。ポイント失効って数年後とかだよな。当たり前のように数年後も魔法少女をやっている気でいたのか?私は。


 2、3年後って23、4歳…?そんな歳になってもこんなやばい生活続けるの?と思い始めたあたりでメッセージアプリの通知が鳴った。


 勧誘した紫の魔法少女、レナちゃんからだ。

 メッセージアプリを開くと「一度今後についての話し合いとかしてみませんか?セカイの敵を探しながらとかいかがでしょう?」とメッセージが来ていた。


 私は真面目な子なんだなと思いつつ、「もちろん」と返事をした。

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