第21話 なんなら結構行ってみたい。
「あ、ミコトさーん。お疲れ様です。」
出勤時間まで後3分。タイムカードを切るために事務所で時間を潰していたら学生バイトの久留米ちゃんが入ってきた。
「お疲れ。今から休憩?」
「はい〜。今日はまぁまぁ忙しいっす〜。」
「まぁ土曜日だからね〜。」
と軽く会話をする。
「あ、ミコトさん。」と久留米ちゃんがふと思い出したように私を呼んでから「あれ」と業務の共有事項が書いてある掲示板を指差しながら言った。
「飲み会あるらしいですよ。来月。行きません?」
掲示板に「懇親会のお知らせ」と書いたプリントとスタッフの名簿が貼ってある。
名簿に参加、不参加を記入するようだ。
「あ〜。行かないねぇ。」
私はそう言いながら自分の欄に罰をつけた。
「ミコトさんて本当に飲み会嫌いですよね。」
「いや、好きとか嫌いとかないよ。そもそも飲み会という催しに行ったことないし。」
「え〜。一回くらい来てみたらどうですか?私ミコトさんと飲みたい。」
「う〜ん。この日はなんか予定入るかもしれないから。」
「ミコトさんいつもそれじゃーん。」
久留米ちゃんはケラケラと笑いながら言った。
「まぁ参加費自腹だし、無理してくるようなとこじゃ無いですけど〜。まぁ急に気が向いたら来てくださいよ。しばらく猶予あるっぽいし。」
「気が向いたらね〜。」
私がそう返したタイミングで、出勤時間になった。打刻機にタイムカードを差し込むとがちゃんと音がして、出勤時間が印字される。アナログ式だ。
「私時間だから行くね。」
「はーい。行ってらっしゃい。」
久留米ちゃんにそう声をかてから調理場の方に顔を出す。今日はすぐに配達できる商品があるようなので配達に行く準備を始めた。
頭の片隅で先ほどの久留米ちゃんとした会話の内容を思い出す。
飲み会、本当に行きたくないわけではないんだけどな。
私が飲み会に行かないのは魔法少女としての活動が原因だ。
絶対飲み会の途中に、セカイの敵討伐に行けと鞄の中でミミィ騒がれる未来が見える。
私は魔法少女になってから人と出かけたことがない。人と出かけた時にミミィが討伐に行けと言えば相手を置き去りにして討伐に行かなくてはいけない。
時間を置いて戻ってきたとしても苦しい言い訳しかできないし、普通に人間関係も破綻する。
それが分かっていて出かける馬鹿はいないだろう。
バイト先でも時々遊びに誘われるが、それが原因で全て断っている。
そのせいで「笹島さんは仕事とプライベートはすっぱり分けるドライな人。」といいうイメージが定着してしまった。
いや本当に。行きたくない訳じゃないんだけどな。
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