第15話 あなたは伝説!
状況をうまく飲み込めない3人に簡単に経緯を説明して(もちろん上空から様子を伺ってビームを撃ったことは伏せた。)少し落ち着いてもらった。
なんとなくの事情を察せたようで、紫の魔法少女が深々と頭を下げて「命を助けてくださりありがとうございました。」とお礼を言うと、それに続いて黄色の子と赤の子もお礼を言って同じ角度で頭を下げた。
助けたのは事実であるが、しばらく上空から眺めていたので少し申し訳ない気持ちになる。
「…どういたしまして。」
「あの。一つ伺いたいのですが…。今回の敵は『音の聞こえる範囲にいる対象を、叫び声で精神汚染させる。』と言うのが能力のようだったのですが、どのように戦って討伐できたのでしょう。」
紫の子がおずおずと聞いてきた。
「視界に入るのもダメだったから空からビームを撃ったよ。」
「空…?からビーム?」と少し困惑したように返された。
そうするとミミィがずいと乗り出してこう言った。
「彼女は『プリズマガール・コトミ』だミィ!普通の魔法少女よりも生成できるプリズマエナジーの量がずっと多いから空も飛べるし、単純なエネルギー放出のビームでもかなりの威力のものが打てるミィ!」
すると彼女は口を両手で多い数歩後ろによろめいた。と思ったらずいと私に顔を寄せ、ぎゅっと両手を握り、キラキラとした笑顔でこう言った。
「伝説の『プリズマガール・コトミ』にお会いできるなんて光栄です!」
私の業界認知度が高すぎる。「あぁ。はぁ。」という生返事しかできない。
後ろの2人も「え…!あのプリズマガール!」と話しており少しテンションが上がっているのが分かる。
自分の知らないところ、かつ自分があまり誇っていない業界で勝手に有名になるのは居心地が悪いと言うことを知った。
「あの、なんで私のこと知ってるの?」
これは流石に知りたい。コミュニケーションを取れるセカイの敵も、たまたま会った妖精もみんな『プリズマガール・コトミ』のことを知っていた。
なぜ当たり前のように皆知っているのか。
紫の魔法少女は少しポカンとした表情を浮かべてからすぐに笑ってこう言った。
「魔法少女をやっていて『プリズマガール』を冠する魔法少女について知らないわけがないじゃないですか。」
だからその『プリズマガール』とはなんなのだ。
コトミと言われている理由はわかる。
過去に魔法少女として人を助けた際に名前を聞かれたが、私は名乗らずに退散しようとした。そしたらミミィが「ミコ…」まで言いかけたので私がと被せるようにして咄嗟に「コトミ!コトミ!」と言ったのが始まりである。
それ以来ミミィは私が魔法少女の姿をしている時だけ『コトミ』と呼ぶようになったのだ。
「コトミ。ミミィは『プリズマガール』の意味はちゃんと説明したミィ。」
ミミィが私の肩に止まりながら言ってきた。
「『プリズマガール』というのは『プリズマタウン』が最強と認めた魔法少女に与える称号ミィ。コトミは魔法少女になったその日から『プリズマガール』の称号を得た天才。伝説の魔法少女。だから敵や魔法少女から知られていのも当然ミィ。」
聞いたような聞いてないような。この手の話っていつも忘れちゃうんだよな。
そして紫の子がミミィの話に乗っかるように話し始めた。
「それに加えて『プリズマガール・コトミ』は9年間も『プリズマガール』を冠していて、歴代最長。長くとも4年くらいで引退が通常なのに!」
自分が思っている以上に私の情報が知れ渡っていてゾッとする。魔法少女9年やってることもバレてんのかよ。
「本当にすごいです!今17、18歳くらいですか??高校生ですよね!ということは1桁歳の時から魔法少女をやっているってことですよね!」と尊敬の眼差しで紫の魔法少女が無邪義に質問してくる。
私に「は?21歳の成人女性。通ってた専門は親に黙って中退したフリーターだが?」とでも言う勇気があればよかった。
「うん。大体そんな感じ。」
私は小さく、適当に乗っかった返事をした。
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