第10話 ミミィはほとんど喋らない。

 ミミィは基本的に用がある時しか喋らない。


 どこへいくにも連れて行け。連れて行かないとネットにばら撒くぞ。と言うので鞄の中や洋服の大きめのポケットに入れて一緒に行動している。

 通勤中はトートバックに。バイトの配達中は小さい肩掛けカバンに入れて常に持ち歩いているのだ。


 昔、「一日中狭い場所に閉じ込められているのは、流石に辛くない?」と聞いたことがあるのだが「問題ないミィ。壊さない程度に扱ってくれれば。」と言う回答をもらったので、遠慮なくカバンやポケットに入れたままにしている。


 ミミィは家の中でもさして喋らず、部屋の隅にある棚の上に座って大人しく過ごしている。時々用がある時だけ飛んで近くに来て、用が済んだら元の定位置に戻る。話していない時は少しも動かず座っているのだ。

 もしかしたら寝ているのかもしれないが、ぱっと見ただのぬいぐるみで瞼もないため寝ているのか起きているのかもわからない。

 妖精ではなく、ロボットなのでは?と生き物らしからぬ雰囲気を感じることも度々ある。妖精を生き物と捉えるかは難しいラインではあるが。


 ミミィはとにかく魔法少女関連のことでしか話しかけてこず、『セカイの敵』が出現したからすぐ迎えか、飲酒やタバコといった少女らしくないことをしている時だけ小言を言いにくる。

(プリズマエナジーは少女しか生成できない物質のため、少女らしくない行動で私のプリズマエナジーの量が減ったら困るかららしい。20歳すぎて魔法少女をやっていた前例がないため、あくまで可能性があるだけらしいが…。)


 逆を言えば他ごとには一切何も言わない。

 私が学校を辞めざる得なくなった時も、バイト先にとんでもないクレーマーが来てしっかり堪えて一人で泣いた時も何も話しかけてこなかった。


 決して慰めてほしいだとか話し相手になってほしいだとか思っているわけでは無い。ただただ、本当に心がないのだな。というのが私の感想だ。


 過去に気まぐれで「私のお付きになる前は何をしていたの?」と聞いてみたこともあるがはぐらかされて何も答えてはくれなかった。


 稀に妖精同士の集まりがあるといって数日居なくなったりする時もあるがそれ以外はずっと鞄の中か棚の上で大人しくしている。


 ミミィとの付き合いもかれこれ9年ほどになるが、私はミミィが魔法少女として『セカイの敵』を討伐してほしい以外のことは何を考えているのか何も知らない。

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