第6話 ビームは撃たない。大変なお仕事。
公園で麻倉さんと話をしてからというもの私は緊張感を持って魔法少女の仕事をするようになった。なんてったってコレでうっかり死んでしまう可能性があるのだ。そんなの死んでも死にきれない。
今日もいつものようにバイトの帰り道に出くわした『セカイの敵』をビームでしっかり灰にした後、帰路に戻ろうとしていた時だった。
「きゃー!!!」
女の子の悲鳴が聞こえた後ドカンと爆発音がした。
「え…?何事??」
私が驚いているとミミィがトートバックから頭を出して「別の魔法少女が『セカイの敵』と戦っているみたいミィ。」と言ってきた。
私は「ふーん…。」と返事をしながらこれ苦戦してるってこと…?これで負けたらその子も死ぬってこと?とぐるぐる考えが頭のを巡っていた。
「ミコト…。そんなに悩むのなら助けに行ってあげればいいミィ…。」
「…。超面倒くさいけど死んでたら目覚め悪いし行くか…。」
私はいつも面倒事と分かっていながら切り捨てることができない。
魔法少女に変身してミミィの指示する場所に飛んでいくとそこは小さな廃工場だった。そっと中の様子を伺うと2人の魔法少女が『セカイの敵』と戦っている。
一人は緑の衣装で日本刀を、もう一人は水色の衣装で銃を使って応戦していた。魔法少女にビームをぶっ放す以外の戦い方があったのか。初めて知った。一方敵は2メートルくらいの体躯があり、頭から触手の生えた灰色の芋虫だ。非常に気持ち悪い見た目をしている。
しばらく様子を影から眺めていると『セカイの敵』が口から液体を吐き出し緑の魔法少女の体半分にかかった。液体がかかった部分がどんどん爛れていく。緑の魔法少女は悲鳴を上げながらその場に蹲った。
「そこどいて!」
私はそう言いながら反射で飛び出していた。すぐさまステッキを回しビームを撃つ。『セカイの敵』は一撃で灰になりサラサラと消えていった。敵が完全に消えたのを確認し、戦っていた2人に駆け寄った。
水色の方の子が何やら魔法をかけている。回復魔法だろうか。傷が少しずつ良くなっていくのが見えた。魔法少女って治療とかできたんだ・・・。魔法少女をしていて今まで怪我などしたことがなかったため初めて知った。
「治りそう…?」
「わからない…。ごめん。回復少し手伝ってもらっていい?私のプリズマエナジーほとんど残っていなくて。」
水色の子が真剣な顔で申し訳なさそうに言ってきた。え?回復ってどうやんの?この感じで頼んでくるってことはみんなできるもんなの?
「ごめん、回復魔法使ったことなくて…。」
彼女はあから様に困惑した表情で「え…?」と言った。
あ、この反応は魔法少女の一般常識的に使えるやつだ。
「じゃあ『プリズマエナジー』でいいから頂戴。」と言いながら私の手を強く握った。すると水色の魔法少女のかけていた魔法の光が急に強くなり視界がホワイトアウトした。
視界が徐々に回復してくる。
回復を受けていた緑の魔法少女の傷は綺麗に治っていた。回復魔法ってこんなに強力なのか。万能じゃん。
しばらく緑の子の容体を伺っていると「うぅ…。」と呻き声を小さく漏らし目を覚ました。
「あ、あれ…?私…。」
と少し混乱した様子で緑の魔法少女が体を起こす。すると水色の魔法少女が「よかった!」と泣きながら抱きついた。緑の子もぎゅっと抱きしめ返す。
よかった。無事で。私は魔法少女の『セカイの敵』討伐ってしっかり危険なんだな。いくら回復魔法があるとはいえプリズマエナジーが無かった使えないしと思いながら2人を見ていた。
「あの、助けてくれてありがとう。それにしてもすごいプリズマエナジーね。」
水色の子が深々と頭を下げながらお礼を言ってきた。一方緑の子は私の方を驚いた顔でじっと見て。
「えっ!!!!先輩が助けてくれたんですか!!!!」
聞き覚えのある声に私を“先輩”と呼ぶ魔法少女…。そんなの1人しかいない。
この緑の子麻倉さんだ。
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